日時:平成30年3月2日(金)13:00~15:00
場所:経済産業省本館17階第2特別会議室
議題
中小企業の災害対応の強化に関する研究会中間報告書(案)
議事概要
- 中小企業の災害対応の強化に関する研究会中間報告書(案)について、中小企業庁から資料のとおり説明を行った。
討議
- 中間報告書にはこれまでの研究会で話した内容が全て盛り込まれていると思う。BCPと類似の取組への評価等は大事で、「BCP策定の意義」について、身近な相談相手となっている商工会、商工会議所等の経営指導員の巡回指導の場を活用して啓蒙したらよいのではないか。
- 東日本大震災発災当初、民間金融機関においては、取引先からの融資相談への対応について戸惑いも見られたようだ。日本政策金融公庫に初めて相談があった企業数社に相談に至った経緯をヒアリングしたところ、メインの取引金融機関から、まずは日本政策金融公庫に相談するよう促された、と回答した企業もあった。
- 地域の経営指導員の力は大きい。九州は各県の商工会連合会が協定を結び、何かあればそれぞれ応援に行く体制を取っている。日本政策金融公庫との協定もあり、被災があった際には公庫の支店と共同で相談対応や金融支援等に取り組む体制を取っている。今回の災害を受け、九州管内の各県との連絡会議をこの2月に初めて開催し、定例化する予定。
- 論点はほぼ網羅されている。ただし、各論点は独立の話ではないので、論点間の関係性が気になる。また、BCP、保険、補助金等の資金面の支援の関係性を整理したほうがよい。さらに、BCPの作り方は自由度を拡げつつ、能力はしっかりと計る仕組みをつくっておくと良い。
- サプライチェーンの実行性を担保するために自動車メーカーが100項目の質問項目に渡って行う評価について、負担が大きく、またそれが能力につながっているのか危惧されるため、それに代わる評価の方法を検討した。一つは訓練を評価する考え方で、被害の大きさのパターンに応じて訓練を行い、能力を評価するマトリックス形式で見る方法が現実的であり、すでに資源エネルギー庁における石油会社の能力評価で実施されている。
- 訓練については、災害直後の対応「インシデントレスポンス」と時間が経ってからの対応「事業継続」に分けて考えるべき。前者に関する訓練は標準化が進んでおり、一定のモデルが作れると思う。一方、後者に関する訓練は、企業の規模、拠点数、立地、業種業態により復旧の状態の考え方が異なるので、ノウハウが必要だと思う。ここで議論している中小企業支援の枠組みでは、インシデントレスポンスにフォーカスしたモデルを作るのが良い。
- 中小企業向けのため、人・モノ・金・情報で分けるのが簡単である。そこに配慮した中間報告書にしていただきたい。現在記載されている施策は主にモノと金についてであるが、中小企業の場合、被災時に人が不足して対応できる人がいないことが問題となる。本人とその家族の安全をいかに確保し、安全であることの情報確認をいかに早くするかが重要。
- 中間報告書で農業について言及するのであれば、あわせて水産業についても記載するのが良い。
- BCPとして中小企業に訓練を推奨するのであれば、中央官庁、都道府県、区市町村も同じタイミングで訓練を行って欲しい。役所の職員のパフォーマンスが上がる。また、職員が地域にあるリスクを認識するようになる。
- 訓練を難しくとらえるべきではない。現在、訓練は色々な所で実施されていて様々な手法が乱立している状態。かならずしも大袈裟な準備をする訓練が効果に結び付くかと言えばそうでもない。大がかりな訓練を中小企業にさせるよりは、テーマを与え、それについて皆で1時間話し合うワークショップや改善ミーティングの手法で十分有効な訓練が出来ることを普及すべき。
- 国、都道府県、市町村の役割分担に関するガイドライン、考え方があると、県としても国のベースとなるサポートをふまえ、それを上乗せするか、弱い部分をフォローするか等の形で議論できる。
- 農業、林業、商工業の国や県のサポートのアンバランスはいつも課題となる。農業は手厚い印象がある。
- 経営指導員は全国に配置されているが、それだけではカバーできないので、金融機関や保険会社の方々にも、中小企業に対するBCP支援の枠組に参画してほしい。
- アメリカでは市場経済で、中小企業が被災しても支援をそこまで手厚くしない。今の市場経済、グローバル経済の中で、日本国としてどう考えるか。海外と比較した場合、日本は公助が手厚いと思う。中小企業の政策として、産業振興を重視するか、自助に加えて公助を厚くしていくか、整理しておいた方が良い。
- リスクファイナンスの点で保険の活用について厚く記載されているが、中小企業は保険について説明を聞く時間、考える時間がないので、メガ損保から小規模の損保まで、色々な商品を全て含めて、皆で説明していく機会を増やすのが良い。また、リスクファイナンスの措置は保険だけではないので、キャッシュフロー、貯金、資産等も言及すべき。
- 市場の失敗を巡っては、少なくとも次の3つのことを考える必要がある。1.仮説段階のため、本当に市場の失敗が生じているかの検証、2.市場の失敗がある場合、現在取っている(取る予定である)施策が適切なのか、目指す効果が生じるか、3.行財政のコストがどの程度かかるか。そこで、「色々と検討しなければいけないことに目配りしながら行う事業である」のような一言を添えるだけでも印象が変わる。
- この先、保険でカバーできない部分が出てくるのではないか。近頃の災害をみていると、土砂崩れや断層地震により大きく形成が変わり、その場合は土地がなくなるため、保険でカバーできないものとなる。
- 保険だけでカバーできない部分があるからこそ、事業継続のソフトウェア面(例:体制、手順等)の導入をコンサルティング会社が支援しているところもある。企業活動は色々な部分で成り立っているため、施策の1つだけではなく、組合せのレジデンスで、組織やエリアの事業継続の能力の向上を図っていけると思う。
- 東日本大震災の際の地元の金融機関の対応については、阪神淡路大震災の際の他の金融機関の失敗経験を強烈に感じているから。産業としては衰退が進み、災害後9年間ぐらいは支払の返済猶予があったが、返済が始まってから倒産が発生。それを見て、返せそうな事業者にしか貸さなくなっていた。
- 災害に関係なく、日頃から地元の金融機関、信用金庫と借入、返済を続けて付き合っておくのが現実的な話であり、金融上の保険とも言える。
以上
<お問い合わせ先>
中小企業庁事業環境部経営安定対策室 電話:03-3501-0459 |