新しい中小企業金融研究会(第3回)議事概要
- 日時:平成18年5月19日(金曜)10時~12時30分
- 場所:経済産業省第1特別会議室
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出席者:
【委員】
村本座長、池尾委員、江口委員、奥委員、北村委員、佐藤委員、清水委員、瀬尾委員、広瀬代理(鶴谷委員代理)、戸田委員、中村委員、橋本委員、平木委員、星野委員、丸山委員、吉野委員、綿貫委員
【中小企業庁】
小川事業環境部長、寺澤金融課長、梁嶋金融課企画官、小林金融課課長補佐、大貫金融課課長補佐、垣水経営支援課小規模参事官 -
配付次第:
(1)開会
(2)担い手の多様化
(3)新しい中小企業金融の手法
(4)地域活性化への貢献
(5)中小企業金融の環境整備
(6)閉会 -
議事概要:
(1)担い手の多様化- 銀行とファイナンス会社は、提供できる資金の質等の面で機能・役割が異なる。これらのエンティティに向けた規制は、役割や活動領域によって考えるべきである。
- 内部統制に係る規制が強化されるなか、大企業であり続けることのコストが上昇しており、自身の規模を大きくするよりも、中小企業と連携・補完しあうことが重要になってきている。大企業の中には、中小規模の製造業を投資対象とするファンドの保有を通じて、これらの先との連携を強化している事例もみられる。
- 平成14年度末に廃止された機械類信用保険制度(不払リース料補填制度)が補填率5割で赤字だったことは、新たな担い手への信用補完制度適用を考えるうえで参考になる。
- 新たな担い手の選別方法としては、米国SBAのプリファードレンダー制度を参考とすることも一案。
- ファイナンス会社は売掛金の入金状況等企業のキャッシュフローをダイナミックにモニタリングする手法に乏しいことから、こうした枠組みが整備されることが望ましい。
- 企業が銀行以外の金融業者を利用することに関する偏見がなくなれば、ファイナンス会社の利用は更に伸長するのではないか。
- 米国には公的金融機関がなく、SBAが信用保険・保証で対応する等、日本とは状況が異なる。免許制・登録制といった制度の違いも含めて、諸外国との単純な比較は難しい。
- 信用補完制度の対象先拡大については、従前より補完制度が有してきた意義を整理したうえで議論すべき。
- ミドルリスクの先にどうやって信用補完をつけるのかが課題。
- ファイナンス会社に対しては、審査能力に係る不安、厳しい取立て等のネガティブなイメージが強い。仮に回収は保証協会が担うこととしてもファイナンス会社に債権が残る場合にはこうした不安が払拭されない。
- ファイナンス会社は、メザニンファイナンス、セーフティネット、BCP(緊急時事業継続計画)の供給主体として位置付け、これに公的支援をつけたらどうか。
【コミットメントライン】- 東商や大商からコミットメントライン利用可能先に係る拡大要求があがっているほか、足利銀行破綻時には地元中小企業から借主要件の緩和等の要望があった。
- 貸し手と借り手の間の力関係の問題等があるため、金融機関側のコンプライアンス確保が必要。また、ガイドラインの設定、契約に係る規制、金融機関への監督体制等も課題。
- 当座貸越には貸主側に拒否権があるが、コミットメントラインにはないところが相違点。
- 企業にとっては、コミットメントラインは流動性調達手段として喉から手が出るほど欲しい商品。中小企業者を保護することは重要だが、特定融資枠法等であまり厳しい制限をしていると、企業にとって本当に必要な商品を潰すことにもなりかねない。
- 北海道の風力発電ファンドは、1機2億円の風車に対して1口50万円で市民から一般出資を募るスキームを採用している。当該出資に対して4年で18万円の分配を行う程の実績を収めている。
- 金融商品の幅を広げ、中小企業向け貸出債権の証券化を活性化することができれば、アジア域内の資金の流れにプラスの影響を与えることも可能となるのではないか。
- NPO法人は社会福祉等の公共サービス分野の担い手となっているが、会計の透明性について課題を抱えている。
- 地域を活性化するためには、行政の支援や地元金融機関の積極的な取組みに加え域内の経営者同士の良好な関係構築が重要。
【情報開示に対する環境整備・インセンティブ】- 「中小企業の会計に関する指針」や会計参与制度は、データの正確性を確保するうえで有効。中小企業に近い立場で多くの情報を持つ会計士等をまきこんで、普及に向けた対策を講じるべき。
- 中小企業では故意に粉飾しているところは少なく、数字を拾って管理する体制自体が整っていないことによる場合が多い。経理処理に関する啓蒙活動や人材育成が必要。
- 消費者信用分野では、クレジットヒストリーの活用により、過去半年から1年程度の短期間の与信判断モデルのデフォルト判別力が非常に高くなっている。支払遅延がそれほど頻繁に起きる訳ではない中小企業分野にそのまま使うことは難しいが、個人資金と法人資金とが渾然一体としている零細事業者向けには有効かもしれない。
- 良好な返済実績を積み上げれば将来特典を与えると約束し、約定返済に係るインセンティブを付与するため、長期返済履歴を活用することも一案。
- データベースの共同利用等は、各データベースの使用目的、対象顧客が異なること、商品等が金融機関によって多様であること、延滞履歴の共有には勘定系システムの再構築が必要となること等から、多大なコストが必要。
- 保証協会の回収においては、CRDの活用、サービサーの設置等の効率化を推進しているが、依然としてコスト面での改善が課題。信用保険によるインセンティブ付与も一案。
- 効率性改善のためには求償権放棄も視野に入れるべきだが、債務者のモラルハザード防止が重要な課題となる。
- 地震等の災害で中小企業が被害を受けた場合、逸失利益をカバーする制度がない。こうした部分についてもカバーされる制度が出来ることが望ましい。
以上
【問い合わせ先】
中小企業庁事業環境部金融課 電話:03-3501-1511(代表) 内線:5271 |