日時:平成22年9月17日(金)14:00~16:00
場所:経済産業省 別館10F 1028会議室
議事概要
企業会計基準委員会(オブザーバー)が非上場会社の会計基準に関する懇談会の検討結果(配布資料3、4)ついて説明し、事務局が中小企業の会計に関する研究会中間報告書案(配付資料5)について説明を行った。
また、上記説明に関して自由討議が行われた。自由討議の概要は以下のとおり。なお、報告書案については、概ね賛同を得られたため、この後の取りまとめは座長に一任された。
- 報告書案のP36の「すなわち、これに適切に準拠している場合にあっては、その会計処理は会社法上適法であるとの推定が及ぶものとすべきである。」という表現があるが、法令以外の文章が法律上の推定を及ぼすように読めるため、表現を改めてはどうか。
- 報告書案は中小企業の実態を踏まえ、会計を中小企業の中にしっかりと位置付けようとするものである。今回示された方針のもとで中小企業関係者が集まって合意をし、策定にきちんと関与していくことが我々の責任であると考えている。この中間報告書案自体は書かれて終わりなのではなく、最終的に中小企業の会計の基準として結実して、初めてこの場での議論が意味あるものになると考えている。
- 報告書案のP11の「確定決算主義が採用され、その具体的な手続きとして損金経理要件等が課されている16。」の脚注16について、法人税法上の損金経理項目である減価償却費、繰延資産の償却費、資産の評価損、資産に係る控除対象外消費税など具体的な項目を入れると分かりやすくなるのではないか。
- 資料6のP11のドイツの箇所について、「また、『逆基準性』の原則が廃止されたことにより、会計と税法の会計処理の一致を示す『統一貸借対照表』は存在しなくなり」とあるが、このように言い切るのは危険ではないか。確かに、ドイツ会計基準現代化法草案では、統一貸借対照表が無くなる旨示されていたものの、2009年3月26日に公表された同法に係るドイツ連邦法務省のプレスリリースでは、中小企業が統一貸借対照表を作成することが可能であるとされている。また、ドイツの会計専門家によると、実務においても依然として作成されているとのことであり、統一貸借対照表の定義にもよるが、表現を緩やかにしてはどうか。
- 報告書案のP37~P38の脚注59について、「そのため、民間主体のASBJが会計基準の設定主体であるという建前が採られている現在でも、究極的な会計基準の設定権限は、政府(金融庁)に留保されている」とあるが、「会計基準」の前に「民間の会計基準設定主体であるASBJが開発する」を追記することで、当該部分を削除できるのではないか。同様に、P14の脚注28について、「ASBJが開発・公表した企業会計の基準がそのまま金融商品取引法上の一般に公正妥当と認められる企業会計の基準として位置づけられるわけではない」という部分も表現の修正を検討してほしい。
- 「中小企業憲章 3.行動指針 六.中小企業向けの金融を円滑化する」において、「中小企業の実態に則した会計制度を整え、経営状況の明確化、経営者自身による事業の説明能力の向上、資金調達力の強化を促す。」とあり、これとの関係性を明記することにより、これからの検討の方向性がより明確に政府の意思として確認されることになるので、この文言を報告書案に入れてほしい。
- 報告書案は我が国の会計制度を考える上では非常に大きな意義がある。中小企業の立場に立った、ボトムアップという見方で中小企業のあり方を考えた点が一番評価すべき点であり重要である。
- 諸外国の状況をみても、公開企業の会計基準の簡素化には限界があり、中小企業の実態を見て、中小企業に固有の会計基準を考えていく方が現実的で実行可能性が高い。IFRS導入によって、各国の風土、文化性が削がれていっているが、我が国のこれまでの伝統である確定決算主義を維持するとしたことで日本の会計の独自性を主張できた点に意味がある。
- 今後、新たに中小企業の会計処理のあり方を示すもの(以下「新たな中小会計」と言う。)を作っていく際に、減価償却や引当金など中小企業の実態をつぶさに捉えることが重要である。また、非上場会社の会計基準に関する懇談会においても、「新たな中小会計」を作ることが合意されていることは重要である。
- 資料3のP4の表の「上記以外の株式会社」の単体のところで中小指針と「新たな中小指針」の適用対象とを分けているが、分ける必要はないのではないか。問題なのはミニマムレベルの中小企業の会計がどうあるべきかであり、これがこの研究会を立ち上げた当初の目的であったように思う。
- 中小指針について、使い勝手が悪いという意見もよく分かるが、もう少し詳しく報告させてもらえれば、理解も進んだのではないかということが残念である。
- 公認会計士と税理士が協力して中小企業の会計を奨めていきたい。
- 中小指針と新たな中小会計とがどういう関係になるのかを、利用する者にとって分かるようにしてほしい。そのために、報告書案のP36にあるように、中小企業が成長に伴って、どんどん発展していけるよう、それに応じて中小指針や会計基準へスムーズに移行できるようにしてほしい。また、会計を監査する者としては、報告書案のP31の分配可能額について、同じ会社法であるので配当額の差異がないものを作ってほしい。
- 報告書案のP26において、中小指針が認知されていないことや個別勘定項目が難しいことについて具体的に書かれていない。例えば、その他有価証券の評価差額の処理について、中小指針では、全部資産直入法、部分資産直入法という方法を使うことになっているが、このような手法自体が周知されていないし、またその明確な解説が指針に記載されていないなど、中小指針の難しさが分かるように脚注に入れてはどうか。
- これから新たな中小会計を作るときに、中小企業の実態を踏まえながら経理処理の段階毎に対象者を意識したメリハリを付けた記述にして進めてほしい。ほとんど経理を知らない人たちが記帳レベルの実務をやっていることなどイメージを置きながら進めてほしい。また、実際に経理作業を行うのは税理士等の会計専門家であるからといって難しいものにならないよう、税理士等のプロから見て最低限というものにしてはどうか。さらに、最終段階では経営者の方々が簡易に使えることを反映していただけると助かる。
- 報告書案のP35の「取りまとめるにあたっての基本方針」において、「 中小企業の成長に資するべきものとするという視点を議論の出発点とすべき」 との画期的な位置づけがなされた。しかし、会計が成長に役立つとの認識は、中小企業においては実践的に理解されていないのが実態だ。従って、新たな中小会計が会社の成長にどのように関係するのかといったことについて、ユーザである中小企業自身が自ずと理解し実践する仕組みを、新たな中小会計に折り込むことが有益ではないだろうか。新たな中小会計をどういう風に使うのかということを触発するような文言等を織り込んでみてはどうか。
- ベンチャー企業や小規模企業に会計参与が就任している場合、当該企業の実態に即し取締役等の責任において、中小指針または新たな中小会計の何れかを選択する余地があるのではなかろうか?私見では選択の余地が有るものと考えているが、報告書案では、会計参与設置会社は中小会計指針を利用と整理されているように読まれる恐れがある。上述のような場合、企業の実態に即して一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行を採用できるとの(会社法上の)解釈を明確化する必要があるのではないか。
- 極小規模の企業に会計参与が存在する場合も想定できないではないものの、例外的であり、また、当該企業の会計基準として中小指針が適当かどうかは、その企業の実態に即して、最終的には裁判所が決めることとなるため、このような会社法の解釈問題は、中小企業庁に要求すべき性格のものではない。
- 報告書案の結論は良いと思うが、新たな中小会計を作るに当たって懸念することがある。中小指針との関係をどうするのか。報告書案のP36で記載されている移行することについてどう考えるのか。新たな中小会計に「中小企業」という言葉を使うかどうか。これからが本質論になってくる。また、設定主体を具体的どうするのかを考えると、報告書案では難しいのではないか。中小企業団体が要望していたように、中小企業庁が作るとした方がすっきりするが、報告書案の書きぶりでも止むを得ない。
以上