日時:平成30年1月29日(月)10:00~12:00
場所:経済産業省本館17階国際会議室
出席者
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研究会委員(五十音順)
今野 浩一郎 学習院大学名誉教授【研究会座長、中核人材WG座長】
小城 武彦 株式会社日本人材機構 代表取締役社長
垣見 俊之 伊藤忠商事株式会社 人事・総務部長
諏訪 康雄 法政大学 名誉教授【人材像WG座長】
西村 創一朗 株式会社HARES 代表取締役
水谷 智之 一般社団法人地域・教育魅力化プラットフォーム 代表理事
宮島 忠文 株式会社社会人材コミュニケーションズ 代表取締役社長
米田 瑛紀 エッセンス株式会社 代表取締役 -
ゲストスピーカー
森 健志郎 スクー株式会社 代表取締役
船田 学 株式会社日本総合研究所 インフラ・地方創生グループシニアマネジャー
概要
開会
プレゼンテーション
- 弊社では、「インターネット学習で人類を変革する」をビジョンに、オンラインの動画学習サービスを提供。
- インターネットを通じて働きながら学ぶことができるようなコンテンツを提供し、新しい社会システムを構築したい。
- 日本人の傾向として、思考力は高いが、新しいことを学ぶ力が弱い。そもそも社会人が学ばない(30歳以上の成人の通学率はOECD中最低)。それは、日本は終身雇用が基本で研修は企業に丸投げであり、新しいことを学ぶこと(学ぼうとする意識を醸成すること)が難しい環境である。
- 良い教材があったとしても、一人で孤独に学んでいては、継続的・主体的に学ぶことが難しい。弊社のサービスでは、撮り溜めたコンテンツを配信するのではなく、渋谷のスタジオからLiveで配信し、オンライン上で、いつでも受講者が講師に質問したり、受講者同士がコミュニケーションを取れるようにしたり、学びのコミュニティの形成がポイントになる。リアルとオンラインの組み合わせが重要。
- 将来的には、(企業において企業研修の履歴は管理されているが)「個人」が個人として学んだ履歴などを、企業等と共有しながら、評価されていく仕組みも整備していけるとよい。
- 講座は、「創造性・イノベーション」、「スタートアップ」、「健康」、「キャリア・生き方」などが人気。AI・ロボットが普及する中で、ヒトがどのように付加価値を出していけるのかなど、最近のトレンドが反映されている。プログラミングについては、最近は様々な講座が出てきており供給過多で、むしろ課題は、受講者側がスキルを得て何に使いたいのか意識できていないこと。
- 5年位前までは、中小企業支援というと、「モノ」の販路開拓がメインだったが、ここ2~3年は、「ヒト」と「カネ」をどう確保するかがメインになってきている。
- 地方の中小企業では優秀な人材を確保することが難しい。そこで、UIJターン人材を採用し、経営人材や中核人材として中小企業へと派遣する仲介役となる事業承継カンパニーを作ってはどうか。事業承継カンパニーでは、人材を採用後、その所属のまま、中小企業に経営者として人材を派遣するため、企業とそりが合わない場合は引き上げることができる。
- 人材を取りにいかないと、確保できないということが分かってきた。そこを仕組みとして作っていければよいと思っている。
- この事業承継カンパニーを設立するためには、実現可能性調査をすることが重要。自治体や商工会議所を、前例のないプロジェクトに巻き込むには、こういった実現可能性調査が重要となってくる。
- 地方の企業でも、優秀な人材の確保のため、最近はヘッドハンティング会社を使うようになってきた。地域の中小企業は年収が低いイメージがあるが、年収1000万もらえるような企業もある。
- 大学1~2年生にも、インターンシップを行っている。夏休みに時間を持て余している学生に地域のインターンシップに行ってもらう。
- 人材募集イベントも大規模な会場でやるのではなく、地元のショッピングモールで、帰省者が多い年末にやることも効果的。
事務局より資料4(「働き方改革」と「人づくり革命」の最近の動向)について説明
- 昨年9月に官邸において人生100年時代構想会議が発足し、リンダ・グラットン教授が言うような、「働く」と「学ぶ」の一体化が提唱される中、これからの様々な社会課題が政府でも検討されている。
- 昨年12月8日には、新しい経済政策パッケージが閣議決定された。人づくり革命と生産性革命の2本柱ではあるが、いずれも「人材」が中心のテーマとなっている。
- 人づくり革命においては、無償化がクローズアップされているが、高等教育無償化についても、産業界のニーズを踏まえ社会で活躍できる人材を育成するということが、要件となることが記載されている。
- また、「リカレント教育」についても検討課題として記載され、本研究会がまさにその課題について研究することを期待されている。
- この研究会でも議論されてきた、副業やフリーランスなど、柔軟な働き方についても記載されている。
- 安倍総理施政方針演説においても、柔軟な働き方や教育の無償化、リカレント教育など、人への投資が大きなテーマとなっている。
事務局より資料5(報告書骨子案)について説明
意見交換の概要(各委員の発言のポイントは以下の通り)
- 企業ごとに温度差がある。IT系の企業は早くからリモートワークに慣れており、集まっての集合研修なんて野暮だと思っており、インターネットを通した教育は受け入れられやすい。逆にそうでない企業に関しては浸透するまでに時間がかかる。最近はフリーランスの方や、オープンイノベーションを志向する企業の方の利用がかなり増えてきている。
- 最適な生き方、学び方を提案するのが最終的なゴール。「個をエンパワメントする」ことをメインに考えており、そういう意味では企業内での学びでも個の学びも変わらないと思っている。究極的にはみんながフリーランスになって自分自身の力を付けていくのが理想。
- サービスを利用した方は、学んだ後、インターネット関連の職種に行く人が多い。しかし、高校生が宇宙の授業を受け、東大の宇宙関係の学部にマインドチェンジした例も。
- 社会人の学び直しの普及のためには、「好事例」(モデル)を積み重ねていくことが重要ではないか。焦らず、強引に変えていく必要はないと思う。
- 報告書においては、方向性を提案するだけでなく、実際の成功事例を積み重ねていくことが重要。また、企業の中での意識改革、風土改革が重要。副業をはじめとして業務外において学ぶということが、会社の成長戦略にも直結する、ということを示すことが重要ではないか。こういった事例を積みあげて、訴求していくべき。
- キャリアの出口戦略が重要。退職後も、週1~2で、勤めていた企業に来てもらう。退職後もこういったゆるやかな関係を持つ形で活躍するケースが増えてきており、このような事例を示していくことが必要。
- 現在インターネットでの研修を増やしている。研修に関しては、個人が自らの意思で受けるものと、企業が受けさせるものと、2パターン存在。企業が受けさせる研修については、個人がどのようなことを学んでいるかのデータが企業側にあり、評価や配属などの参考情報として活用できる。個人で受けている研修については、企業側は情報を持っていない。これらの情報を共有できるプラットフォームができれば、学んだことをキャリアに結び付けていく事ができ、非常に有益ではないか。
- 「企業の成長」と「個人の成長」のベクトルを合わせることについて、記載されているが、企業が行う研修内容の充実や学ぶ機会の提供は、必ずしも転職してもらうためのものではなく、企業内でしっかりと活躍してもらうためのものであり、個人の視点からの記載が多い。個人の多様な学びについて検討することは重要だが、企業の成長戦略とも一緒に考えるべきではないか。
- 兼業・副業と言うと、ハードルが高く感じる企業が多く、二の足を踏んでいる印象。もっと軽くやってみるくらいのスタンスで、トライアルな経験を進めていけるようにしたほうが良い。
- 「人材戦略=経営戦略」。よくぞ言ったと思う。これを経産省としてどんどん打ち出して宣伝してみてはどうか。熱心な企業を「見える化」したり、褒めたりと、バックアップしてはどうか。
- 報告書をまとめて、終わりではない。政府もイノベーティブな取り組みが必要。市場を創るためには、政府も勇気を持って市場に介入していくことが必要。ただし、ずっと介入し続けるのではなく、程よいタイミングで手を引くことが重要。
- 経産省は、これまで様々な課題に関して、外部不経済を内部経済化することでその解決を図ってきた。今回の件も同様で、「企業がこれをすると儲かる。」という仕組みをしっかりと作っていく必要性がある。
- 大企業人材の「プロボノ」は必要。プロボノ活動の中で、一つの会社以外で能力を発揮していく経験を積んでいくことが重要。一種の社会運動として、「社会に能力を還元する」というのは義務という意識を植え付けていただきたい。
- 「キャリアオーナーシップ」なしでは学ぶことができない。これが一番大事。
- 学びに関して、企業と個人の双方に責任がある。機会を提供する責任と、機会を得て自分で育つ責任。この関係性が重要ではないか。
- 学びと雇用の情報をセットで提供できるとよい(たとえば、この講座を受講すればこの職業につける、といったような)。
- 中核人材の買い手(中小企業)や仲介役については議論を重ね、方向性が見えてきたと思っている。あとは供給側(働き手)について議論を重ね、全体をもっと体系化していきたい。
- 個人がキャリアオーナーシップを強めれば強めるほど、企業との交渉(対話)が増加する。質の良い対話を増やしていくことが必要。
- 学びに関しては2つの軸があると思っている。学びの期間に関する「短期的か長期的か」、学びの対象に関する「浅い知識か深い知識か」、この両側面で考えなければならない。そうすると、少なくとも4つの組合せが生まれ、組合せごとの特性を念頭において対応を考えずに一つの方策だけで済まそうとすると、すべての人にあうワンサイズの洋服はないように、効果が上がらない。
- 放っておいても、一人で学ぶ人はわずか。それだけに、刺激を受けながら学び続けることのできる社会環境をつくることが重要。「学ぶこと」に対して、背中を押してあげる環境ができていないまま、貴重な人的資源を放置して、劣化させてしまっている懸念がある。
- もちろん、学んだ後に転職しなくてはならない、というメッセージではない。企業内で継続的に活躍していく選択肢も存在。
- 国に学べと言われて学ぶ人はいない。個人と企業が、それぞれ学ぶメリットをどう感じるかが重要。個人の場合は評価、報酬体系、採用がある。企業の場合には、どういう施策が成果につながっているか、「見える化」することや、資本市場からどう評価されるか、メルクマークとなるような仕組みが必要。
- 本研究会はもともとガバメントリーチではないところが大きい。他方で、リカレント教育が政府全体での検討課題となっており、学びの担い手をどう考えていくかは、大学改革や職業訓練の文脈で政府の施策が十分に関係してくるところだと思っている。
以上
<お問い合わせ先>
経済産業政策局産業人材政策室 電話:03-3501-1511(内線2671~4) 03-3501-2259(直通) FAX:03-3501-0382 中小企業庁経営支援部経営支援課 電話:03-3501-1511(内線5331~5) 03-3501-1763(直通) FAX:03-3501-7099 |