トップページ 審議会・研究会 研究会 兼業・副業を通じた創業・新事業創出に関する研究会(第1回) 議事要旨

兼業・副業を通じた創業・新事業創出に関する研究会(第1回) 議事要旨

日時:平成28年11月14日(月)13:00~15:00
場所:経済産業省別館11階1107会議室

出席者(敬称略)

(五十音順)
青野 慶久 サイボウズ株式会社 代表取締役社長
大内 伸哉 神戸大学大学院法学研究科 教授
正能 茉優 株式会社ハピキラFACTORY 代表取締役社長
柳川 範之 東京大学大学院経済学研究科 教授

本研究会の進め方について

「開業率=当該年度の雇用保険新規適用事業所数÷前年度の適用事業所数」と定義されており、雇用保険適用事業所を分子としているため、労働者を雇用していないインディペンデント・コントラクター(以下「IC」という。)は含まれないが、ICも含めて「起業」を議論している。開業率の定義に含まれないのは、統計上の理由(雇用保険適用事業所は毎月把握できるが、ICのような個人事業主を把握するには経済センサスに基づくため5年毎となること)である。ICのような個人事業主を含めれば、開業率は上がる可能性がある。
兼業・副業には「小遣い稼ぎ」から「起業」まで様々なパターンがあるが、本研究会において対象は、特に限定しない。その中で兼業・副業を通じて社会課題解決や自分づくりに取り組む人についても取り上げられればと考えている。本研究会は最後のレール(施策)を決め打ちしていない。委員には、是非アイデア提案をお願いしたい。
本研究会として、どのような兼業・副業を増やしたいかについては、2段構えで考えてはどうか。まずは、兼業・副業を幅広く捉え、兼業・副業を阻害している課題をリストアップする。その後、全てを解決することは困難なので、兼業・副業のイメージを絞った上で推進策を提言する。

健康負担

健康保険について、A企業で3割、B企業で2割勤務している場合、企業負担は「3:2」ではなく「1:0」(勤務時間が多い企業が100%負担)となるのは問題ではないか。
恐らく、一社だけ全額負担とはならず、給与を合算した上で各社按分しているはずである。ただし、いずれかの会社で週30時間以上となれば、企業負担は按分され、報酬額2も合算されるものの、各社で週15時間ずつ勤務している場合に、保険に加入できないことは問題ではないか。

労働者の真意性

労働者の「真意性」が、どのように担保されているか確認する方法としては、2つありうる。一つは、合意内容の適正さを確認する方法であり、例えば、一般的に労働者が不利益な変更が行われる場合には、一定の交換条件を企業が提示するはずであるという考え方に基づき合意内容を審査する。ただし、これは司法の判断に左右されるという問題がある。もう一つは、企業と労働者の交渉手続き(プロセス)で確認する方法である。

労働の定義と労働時間

「労働」はどのように定義されるのかについて、法的には、指揮命令があるものが「労働」である。本人としては「好きでやっていること」でも指揮命令があれば、「労働」になる。
兼業・副業により働く時間数は必ず増える。それが全て「労働」となると兼業・副業を推進することは難しいのではないか。
この点は、重要な論点であり、自分自身で自分の労働時間をコントロールできる働き方としてホワイトカラーエグゼンプションの議論が出てくる。しかし、「企業がホワイトカラーエグゼンプションを悪用するのではないか」という企業不信があるのも事実。実際、労働契約には立場の強い企業側が悪用するリスクがあるため慎重に対応すべきという議論になる。今後、時間的・場所的制約がない働き方が普及すれば変わりうる。
兼業・副業の大きな課題として「労働時間規制」と「本業への支障」がある。本業への支障については、どんな兼業・副業でも「支障がある」と言えなくもないため、本業への支障がある/ないという線引きが果たして可能か。結局、企業側が従業員の兼業・副業を積極的に推進することが難しいと割り切るのか、あるいは別のルールを策定するかが論点となる。

誠実労働義務の確認

経営者は、労働者がどのように働いているか確認できないという前提に立つ必要がある。労働者には「誠実労働義務」があるが、成果報酬型契約を除き、経営者がその義務を確認することは不可能である。確認できない「誠実労働義務」を課すための手段が、就業規則において兼業・副業禁止とされた背景ではなかったかと思う。それが過剰ではないか、というのが今の議論である。一方、個人的な印象であるが、兼業・副業を禁止している企業でも、実際に懲戒処分にまでしている事例は少なく、無許可で兼業・副業していても、この程度ならば許すといった柔軟な運用を行っているのではないか。
兼業・副業については、公的統計と実態が乖離している可能性がある。労働者の兼業・3副業を企業はある意味で「見逃してきた」現状があるとすれば、兼業・副業に光を当てることで、これまでであれば見逃していたことができなくなる(兼業・副業が厳密な運用となる)状況に陥らないよう注意しなければならない。

労働者の健康管理

「モデル就業規則」において、例えば、兼業・副業を禁止しない場合、禁止する場合、両方を明記する等、兼業・副業に関する記述は是非見直したいと考えている。その一方で、最後は労働時間管理、健康管理が問題となる。現在、規制強化の方向に動いており、企業側・労働者側とも兼業・副業に慎重な姿勢を示している。労働者の健康管理は別の方法、例えば、ウェララブル端末で管理できる等の提案とセットで、兼業・副業を推進していく必要がある。
企業側が、労働者に強制的に兼業・副業を求める場合に限り、労働時間の通算を求めるのはまだ理解できるが、それ以外は異なる事業主間で労働時間を通算することに実効性はない。兼業・副業による健康確保は労働者が自己管理すべきという方向性しかないのでは。

労働者の権利・企業のメリット

労働時間が通算できないから兼業・副業禁止で企業に縛り付けるという議論はおかしい。兼業・副業について、企業側が慎重になるのは理解できるが、兼業・副業は労働者の権利であり、労働者側が慎重になるのは矛盾している。兼業・副業の推進は労働者のため、労働者の権利である、という大枠を打ち出す必要がある。
一方で、企業側にも労働者の兼業・副業の促進はメリットがある、ということを今後打ち出したい。企業側にメリットがあった具体的な事例を目に見える形で示したい。企業が「他社の労働者を使いたい」と思うようになれば、兼業・副業推進のメリットについて気がつくはずである。オープン・イノベーションに共通する発想だと考えられる。


<お問い合わせ>
中小企業庁経営支援部創業・新事業促進課
電話:03-3501-1767