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第5回中小企業憲章に関する研究会 議事概要

【日時】 平成22年4月13日(火)17:30~19:30
【場所】 経済産業省 本館17階 西3 国際会議室
【出席委員】 松島委員(東京理科大学専門職大学院教授)、三井委員(横浜国立大学大学院環境情報研究院教授)、安田委員(東洋大学経済学部教授) (※五十音順)
【出席中小企業経営者】 松原忠義大田区長、落合寛司西武信用金庫専務理事、浜野慶一株式会社浜野製作所代表取締役社長 (※発言順)
【議題】 中小企業憲章制定に向けての地方自治体・経営者等の方々との意見交換
【議事概要】

〈地方自治体・経営者等の方々からの意見表明〉

  • 憲章は法律ではないが、中小企業にとって拠り所となるようなものにしたい。
  • 国際競争の中で生き残るためには、製造業が日本に残るための仕組みづくりと、産業集積を守る仕組みづくりが必要。
  • 欧米と同じレベルに法人税を引き下げてほしい。また、中小企業に対する軽減税率の上限所得を800万円から2,000万円くらいまで引き上げてほしい。
  • 産業集積支援として、工場用地の引継ぎや工場アパートに関する支援が必要。
  • 憲章は中小企業のバイブル。どんな状況でも憲章を見ると頑張れるというものとしたい。できるだけ早くまとめたい。関係省庁にも協力してほしい。
  • 大企業も中小企業も利益を出して納税できるような対策を講じたい。
  • 自己資金が少なく、借入の多い日本の中小企業は資産査定の導入等の影響により、キャッシュフロー不足となり資金調達難に陥ったケースが多い。そのため、今後は管理会計等経営管理の強化が求められる。したがって、今後は、中小企業診断士等経営に対する専門知識者の役割が重要であることから活用しやすい診断士制度の整備が必要。
  • 時価会計制度の導入が予想される。このことは、経済環境等の変化が直接的に中小企業の財務に影響してくる。過少資本体質の日本の中小企業は自己資本の強化が必要。対応策として、金融機関が中小企業の資本政策に対する支援をする場合、議決権株式の10%しか取得できない規制の緩和や直接金融のできる体制の整備が必要。
  • 少子高齢化により内需が減少、そのため外需獲得が中小企業においても、更に必要となると思われる。中小企業者の海外戦略支援が重要な課題。
  • 経営者の高齢化により、事業承継の戦略が必要。日本におけるM&Aに対するイメージを向上すべき。また産業構造や経済構造の変化に対応するために、事業転換・業種転換等が必要となり、M&Aの必要性が高まる。M&A仲介者を国家資格とする等の、信頼でき本来のM&Aが実施されるための体制整備が必要。
  • 中小企業は経営資源に乏しいが、中小企業が弱い存在であることを前提に憲章策定の議論をしてはならない。
  • 憲章は具体策がなければ画餅で終わるが、逆に依頼心を大きく煽るようなものでもいけない。憲章では、理念やビジョン・明確な方向性を打ち出すべき。
  • 確かに親企業からの理不尽な要求などもあるが、下請企業の側の落ち度がある場合もあり、親企業からの要求にのみ文句を言っても何も変わらない。
  • 下請取引については、コストダウンが急速に進んだ結果、利益が激減しているが、市場は需要と供給のシステムが働いており、実質的には対応は難しいであろう。
  • 社会保険事務所の評価は、地域の加入率ではなく、地域で加入している企業からの徴収率と聞いた。再度調査をしてほしい。
  • 中小企業はモノを作るのは得意だが営業は苦手。
  • 基盤技術の製造技術は強いが、組み立ては弱い中小企業に対し、海外への輸出のためにも、製品化支援を行いたい。
  • 5年前から経営サポートの観点で専門家派遣を実施。金融機関は現状の数字だけを見ず、製品のライフサイクルなど広い視野で審査すべき。
  • 需要が飽和している現在では、中小企業も事業計画を策定するなど、管理するという意識が必要。
  • 国際化の観点で、海外で成功した人々を呼んでのセミナーを実施している。
  • 制度や法律は国にしか作れない。中小企業の声を行政に伝えることが重要。
  • 町工場にいるような経営者たちは計画書や決算書などは作らない。これらの作成のための中小企業診断士等の専門家受け入れに係る費用助成などがあればありがたい。
  • 若手経営者が持つ「国に頼らない」という考え方には、自戒の意味も包含。国に期待していないわけではない。
  • 国と違って地方自治体には横串が入っている。率先してやってほしい。
  • 最近の総理や大臣による原子力発電の海外へのトップセールスの例のように、行政をうまく活用してほしい。
  • 基礎自治体として中小企業に対して、金融支援、技術支援、経営革新支援、人材育成など様々な支援を実施している。また、産業だけではなく、医療・福祉・環境等のあらゆる分野と連携し、横串を入れる形で取り組んでいく。
  • 今まで金融機関は間接金融だけやればよい制度だったが、直接金融もやらなければならない。制度としてどちらを目指すかということ。
  • 中小企業という一言で片付けられない仕事の広さ・深さもあるため、憲章をまとめるのは容易ではない。理念を訴えるだけでは誰も同調してくれないし、具体的なものを並べるだけでも、憲章としての意味に欠ける。
  • 理想的な日本を創るため、中小企業と国がお互いに力を合わせることが必要。中小企業の有する幅広い力が必要。若い力を鼓舞することが重要なことの一つ。
  • 憲章は、ポケットに入れておき、辛い時に取り出して頑張れるようなものとしたい。関係省庁や委員の皆様に叡智を出してもらい、良いものを作りたい。

〈関係省庁からのコメント〉

  • 独占禁止法に基づき、大企業による中小企業に対しての「不当なしわ寄せ行為」について規制。会社名の公表も伴う形で、厳正に法的措置を講じてきている。
  • 下請取引適正化のために問題の把握と法律違反の排除に努めており、法的措置件数も年々増加している。
  • 上記の取組を一層強化すべく一定のプログラムの下、コンプライアンスの一層の推進の観点から、独占禁止法及び下請法について普及啓発に努めるとともに、違反行為に対する執行体制を強化してきている。
  • 金融円滑化法施行後、条件変更のための体制整備を金融機関に進めてもらっている。また、新しい検査マニュアルでは、金融機関がコンサルティング機能を発揮することを重視。
  • 資金繰り面では引き続き厳しいとのアンケート結果が出ているが、金融機関の融資態度を原因と見る見方は減少。むしろ、営業不振が原因との回答が増加。
  • 指摘のあった中小企業の「資本の充実」は重要な宿題。しっかり取り組みたい。
  • 平成20年7月に策定した「教育振興基本計画」では、一人一人の社会的自立を実現するとともに、我が国社会の活力の維持・向上の観点から、教育と、職業や産業社会との相互の関わりを一層強化し、人材育成に関する社会の要請を踏まえた教育を推進することとしている。
  • 人材育成について、義務教育から高等学校までを通じ、勤労観・職業観を育成するため、キャリア教育の充実・改善が必要。
  • インターンシップ受け入れ等の中小企業との連携、地域と学校との連携、研究開発における中小企業と大学との連携なども重要。
  • 人材確保の面で中小企業支援を実施。
  • 憲章には、中小企業を支援しながら最低賃金を引き上げるという観点も盛り込んでほしい。
  • 社会保険事務所の評価基準については、確認した上で事務局を通じて後日回答する。
  • 労働基準法の改正等については、労働政策審議会で審議される。公労使の代表が委員になっており、現場の声を吸い上げるようにしている。
  • 我が国食品産業は食料の安定供給や地域経済の活性化等に重要な役割を果たしている。3月にまとめた食料・農業・農村基本計画において、食品産業の持続的な発展と新たな展開を図ること等が盛り込まれている。
  • 少子高齢化等により、食品の国内市場が縮小する中で、食品産業事業者と農林水産業者等との更なる連携を促進することなどにより、新たな価値を創出することが重要。食品産業の事業基盤の強化を図るためには、経済成長の著しい東アジア地域での投資や事業展開を進めることが必要。
  • 建設業界は下請取引関係が重層構造。元請下請関係の適正化は重要な課題であり、入札契約制度の改善を行うこととしている。
  • 建設業者は、緊急保証、セーフティネット貸付等の中小企業金融を多く活用。
  • 人材の確保や育成については、文部科学省とも協力しながら、高齢化の中で問題となっている技能承継への支援などに取り組んでいる。
  • 異業種への転業は時間がかかる。転業支援のための助成等行っているが、各省と協力した取組が必要。
  • 環境マネジメントシステムであるエコアクション21は、ISOよりも簡単で、中小事業者等でも取り組みやすい。エコプロダクツ大賞等によって、優れた環境ビジネスに取り組む企業を表彰している。環境金融の促進にも取り組んでいる。
  • 起業家には、独創性など様々な能力が必要。すでに起業家教育の取組が行われている大学もあると承知しており、今後はさらに、キャリア教育のひとつとして行われていくことにもなると理解。