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地域中小企業ヒアリング調査

平成15年1月
中小企業庁

(調査概要)
 本年1月中旬から下旬にかけて、中小企業庁幹部が26道府県に出張し、地域の中小企業金融情勢について、中小企業者、地銀や信金等の地域金融機関から聞き取り調査を実施したところ。その概要は以下の通り。
1. 景況・資金繰り・貸出動向

(1)中小企業の感じる景況感・資金繰り

  • 地方では、景気の底入れ感は感じられない、又は、底入れは極めて緩慢な動きでしかないと回答する金融機関が多い。既に、近畿、北海道では、昨年末までの足踏み状態から、年末、年始に掛けて弱含みの見通しと感じている。
  • 繊維製品をはじめ、いわゆる地場産業は、安価な輸入品やデフレによる売上減を受け、極めて厳しい状況。ただ、同じ繊維業界でも靴下やメリヤス等の地場産品的なものは低迷しているのに対し、自動車用シートのような特徴あるものを作っている企業は好調。同一業種内においても、業況の二極化が更に進展している。
  • 公共投資の減少、民間の設備投資需要の減退を受け、建設業は全国的に厳しく過当競争状況、競争激化で更なる単価の低下を招いている。
  • 地域によっては、ニッチ(隙間)産業(例えば発電施設向け脱硫装置、医療介護関連施設)や不動産業(賃貸マンション)で比較的景況感の良いセクターも見られる。同時多発テロの影響で海外旅行が減少したこと、アジア地域からの観光客の増加等により、ホテル・旅館等で客の入りが若干持ち直した地域(北海道、東北の温泉地等)も見られるが、単価は減少しており、収益増までは困難な状態。
  • 倒産件数も高水準だが、その中でも最近は事業の先行きが見えないことによる自主廃業が目立つとの指摘があった。

(2) 貸出動向

(中小企業の資金需要)

  • 全国的に新たな設備投資のための資金需要は非常に低調になっており、あっても小口化傾向。運転資金需要も縮小傾向であり、売上の減少や売掛金回収の長期化等による後ろ向きの運転資金需要がほとんど。
  • 健全で預金や遊休資産のある企業を中心に、資金を既往債務の返済に極力回すようにしている。多くの企業が新規借入より、まず既往債務の返済に大変苦労しているのが実情。金融機関も預貸率の低下(40%台、50%台に落ち込んでいる地域金融機関も少なくない)を背景に、これまでのように預金を担保として貸し出すのではなく、預金を自己資金として利用するよう薦めるとの指摘があった。
  • ほとんどの地域金融機関は、大幅な預貸率の低下に悩んでおり、貸出を延ばしたくとも、地価の下落による担保不足、信用リスクの上昇により、金融機関としても、貸出に踏み切りにくいとの指摘。
  • マンション、賃貸住宅の建設等、不動産向けや高齢者施設、病院等の医療関係施設向けへの貸出が一部伸びているとの指摘あり。

    (金融機関の金利引き上げの動き)

  • 地銀のみならず、信金や信組といった地域金融機関においても、リスク対応金利体系導入の動きは広がっている。ただ、大手銀行では、現行の金利と比べてかなり高い金利の引き上げを提示することもあるが、信金や信組では、取引先との信頼関係、他の金融機関との競争関係もあって、金利引上げ等の対応は困難。実態としては0.5%の金利の引き上げも難しい状況。単に金利引き上げをもちだすのではなく、例えば、経営改善指導とのパッケージで持ち出す地域金融機関が見られる。
  • 一方で自行の優良先に対して都銀が金利引下げ等による攻勢をかけているとの指摘も見られた。このような状況で、優良先についてはむしろ金利引き下げ競争があり、また、経営支援が必要な企業は金利を上げると立ち行かなくなるため金利を引き上げられない。結果として金利負担に耐えうる中位の企業の金利が上がることになる。
  • ただ、都銀が幅広い顧客に対して金利引き上げのオファーを行っていることは事実だが、金利引き上げに実際つながっているのかは疑問との声もある。

2. 中小企業金融施策への新たな取組みへの評価

(1) セーフティネット保証の拡充(7,8号)

  • 金融機関の再編統合やリストラによる信用枠の減少を訴える声、RCCへの譲渡による資金供給が困難化等につき指摘する金融機関や中小企業者から、評価する声が多い。
  • ただ、一部の金融機関からは、経営合理化による金融機関の指定(7号)については、「貸し渋り銀行」との風評を心配するものもあった。

    (注)
    7号;金融機関の合併・再編、支店や人員の削減のあおりを受けて貸出減少に直面する中小企業者に対するセーフティネット保証
    8号;RCCに貸付債権が譲渡された中小企業者のうち、再生可能性ある者に対するセーフティネット保証

    (2) 資金繰り円滑化借換保証制度

  • 多くの中小企業が、新規与信より既往債務の返済に苦慮する中、極めてニーズが高いとして、多くの金融機関、中小企業者から高い評価。

    (3) 売掛債権担保融資保証制度

  • 三度に渡る手続き改善(エビデンス資料の弾力化、契約段階からの保証を可能とする措置等)により、取扱いも非常にし易くなっており、地域によっては利用がだいぶ広まってきている。従来から比較的業績の良い金融機関が積極的に取り扱ってきており、こうした金融機関では、相当のノウハウの蓄積が見られる(消極的な金融機関との差が拡大している)。
  • ただ、地方では未だ風評被害の恐れや市町村の譲渡禁止特約の存在により、制度を使いにくいと答える金融機関があり、更なる制度の浸透が望まれる。


    3. 金融検査マニュアル別冊「中小企業融資編」

  • 金融機関からは中小企業融資編の内容に対しては高い評価が見られる。多くの金融機関が内部管理マニュアル等の改訂、研修等による趣旨の徹底を行い、マニュアル別冊の導入に対応している。
  • 特に、信用保証付き債権については、原則として貸出条件緩和債権にならないとの取扱手引きが入った点については、書き方も非常に明快で評価する金融機関が多い。
  • 導入の前後に検査を受けたいくつかの金融機関から、検査官の対応が変化してきたとの指摘もあった。ただ、地域や検査官によっては、具体的な活用は行わない等、その対応に温度差があり、今後の別冊の趣旨の浸透を見守りたいとの意見、「貸出条件緩和」の範囲などにつき更なる明確化が必要との意見もあった。

    4. 地域における中小企業再生への取組み

  • 一昨年から、地銀のみならず、信金や信組においても、再生担当部局の設置、審査部門における再生担当者の専任化(例えば審査部の半数を再生担当に任じた例もある)、再生候補案件のリストアップ(要管理先を中心に50社等)、外部コンサルタントとの連携等によって、取引先の経営改善計画の策定支援、事業再生支援に乗り出している金融機関が見られる。
  • こうした各機関毎の取組と今般当庁が実施する「中小企業地域再生支援協議会」との連携により、他行との調整の円滑化等を期待する向きが多い。
  • ただ、本協議会を実効性のある取り組みにするための専門家(経験を有する中小企業診断士、銀行OB等)の確保は、地方では難しいのではないかと懸念する声も聞かれた。

    5. その他

    ○ペイオフ延期について

  • 延期されたことで、金融機関間の預金移動はほぼ完全に沈静化した模様。多くの地域金融機関からは適切な措置との評価。


担当課:中小企業庁金融課
連絡先:03−3501−1511 (内線:5271)