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これからのスタートアップ企業、中小企業の生き残りの条件 |
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グローバル化、規制緩和、市場の成熟化等により激化する競争の中でスタートアップ企業が生き残っているためには、商品やサービスが市場のウォンツに適合し、他社と差別化できる“New one”がないと生き残れません。支援人材はこの点を理解した上で、ネットワーク化を進めることが必要です。つまり、支援する企業の商品・サービスが市場のウォンツに適合し、他社と差別化可能なものか、どのような企業や機関と連携すると、それが可能なのかを判断できることが、企業間コーディネートの第一歩です。 |
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事業を作り上げるプロセスを理解 |
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企業をコーディネートすることは、事業づくりそのものと言っても良く、支援人材には、事業をつくるプロセスを理解していることが求められます。例えば、埋もれてしまった技術がある場合、適確な応用先を示唆できるだけの洞察力、センスが求められます。他方、このような事業づくりについての理解がないと、単に企業をお見合いさせるだけに終わり、新事業を作り出すまでに至らないことが多くなります。 |
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踏み込んだ支援 |
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公的支援人材の一部には、補助金などのカネで全てを済ませようという姿勢がある人が時として見かけられます。これでは、コーディネートによる新規事業開拓は軌道には乗りません。支援人材としては、事業の姿があらわれるまで支援することが必要で、人の派遣を含め、より踏み込んだ支援が必要です。さらに言えば、支援人材は、支援する会社の社長になったつもりで、全身全霊を傾け、支援の結果について責任を持つつもりで支援することが求められます。
私自身、中小企業経営者に「困った」と言われれば、会社に乗り込んで、「私も御社のもう一人の社長」として一緒に考え、製品開発などの技術的な課題を抽出し、異分野の技術の活用、他社との共同開発などの解決策を探り、その知恵をその会社に授けています。また、「何をやったらよいか分からない」経営者には、まず顧客のウォンツからその会社の技術の可能性を検討し、研究開発のテーマを選定し、他社との共同開発や特許取得などの具体的な事業展開まで、踏み込んで支援をしています。 |
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ネットワークに参加する企業、経営者を厳選 |
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異業種ネットワークに参加する企業や経営者の意識、資質はさまざまです。企業ネットワーク組織の求心力を持たせるためには、参加者を厳選すべきです。志の高い経営者、情熱のある経営者、ベクトルのあう経営者、自身の情報をオープンに開示してくれる経営者の集団でなくてはなりません。そうでないと、同志的なつながり、オープンな情報交換が出来ず、会員相互の信頼感やネットワーク組織の求心力は生まれません。また、自社の経営や技術などの情報を包み隠さずオープンにしてくれる会社でないと、支援人材としても責任を持って支援することが出来ません。私が支援している全国組織のアース研究会では約100社、同じく関西地方を中心としたKANSAI仕事づくりの会では約70社ほど参加希望企業がありましたが、上記の理由からそれぞれ50社、30社に絞っています。 |
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支援人材の強いコミットメント |
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ネットワークの求心力を高めるためには、支援人材が参加企業の最大の欠点を指摘し、情熱を持って議論することも必要です。そして、解決策を編み出し、実践し、開発して事業化することを見せることが効果があります。そして、支援人材がコミットした成功事例、良いモデルを作ることが求められます。成功事例、良いモデル事例を作ることにより、企業間ネットワークの求心力を高めることが可能となってきます。 |
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知的財産権の重視 |
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21世紀の中小企業経営では、ヒト、モノ、カネ、情報、時間に加え、知的財産権の重要性が高まっていきます。21世紀には世界はますます狭くなり、「地球村」とでも言うべき環境になっていきます。このような状況下では、中小企業であっても、自ら開発した技術を特許登録せず、他社が登録していた場合、思わぬ損失をこうむる可能性があります。一方、海外で作れないものを開発し、日本で生産していくためにも、特許という防御手段は不可避です。
企業のマッチングによる事業づくりは、複数の企業の融合によるイノベーションの結果であり、知的財産権で保護すべき技術、ビジネスモデルなどが多くあります。支援人材としては、知的財産権をどのように保護し、戦略的な活用をすべきかも念頭において支援しなくてはなりません。 |
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創業者・経営者の尊重 |
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支援人材の中には、今だに、創業者や中小企業経営者に対して、上からものを言う人がいます。大学のTLOや大学研究者にも、「知りたければ教えてあげる」的な姿勢の人が時々います。中小企業側も大学の研究内容や大企業の技術を理解できるだけの努力が必要ですが、大学や大企業の研究者と中小企業経営者とは本来、プロ同士なのですから、お互いプロとして尊重しあい、イーブンな目線で話をすべきです。
創業者や中小企業経営者と同じ目線で話をすることは、支援人材本人が気をつけるだけでなく、支援人材がマッチングしようとしている大学研究者、大企業にも求めていくことが必要です。 |
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ビジネスを創造するマッチングが出来ているか? |
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市場のウォンツに合致し、New Oneを生み出せる企業との連携を図っているか? |
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事業をつくるプロセスを理解し、そのための支援をしているか? |
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支援企業の社長のつもりで、踏み込んだ支援をしているか? |
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支援人材自身が自ら率先して議論、解決策を一緒に考え、実践して、参加者に見せているか? |
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成功事例、参考になるモデル事例を作り出しているか? |
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知的財産権による保護、活用戦略を十分に施しているか |
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創業者や中小企業と同じ目線で話しているか?大学、大企業にもそのような姿勢を持ってもらっているか? |
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新事業創出支援事業特別会計 |
TAMA産業活性化協会(以下、「TAMA」)は、3都県にまたがる国道16号線を中心とする地域において、優秀な製品開発力やコア技術を持つ中堅・中小企業と理工系大学、地方自治体、商工会議所等を会員とする会員組織です。産官学のネットワークを活用し、地域産業活性化を推進していて、これまでのマッチングの支援事例は23を数えます。
TAMAの成功理由を一言で言えば、“集中”にあります。主たるターゲットを、1. 大企業からのスピンアウトベンチャー、2. 旧来のモノ作りのなかで技術を蓄えてきた企業に定め、彼らのよこ連携、大学との連携を仲介することで、より一段高いステージの研究開発、商品開発を進めています。
この路線上で現在進める重点プロジェクトに、「ビジネスプランHSJプロジェクト」(図参照)があります。モノ作りベンチャーにありがちな研究開発(補助金)と商品販売(売上)のギャップを埋めるべく、ビジネスプランのブラッシュアップを経て直接金融(VC・商社等の投資)まで繋ぐプロジェクトです。昨年度から開始して現在投資交渉中まで進んできています。 |
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中西幹育(なかにしもとやす)【鈴木総業(株)取締役副社長】 |
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昭和13年生まれ。明治大学工学部卒業。在学中ローマ五輪重量挙げ候補に選ばれるも故障で引退。自らの発明を事業化するため、51年鈴木総業(株)に入社。『曲面印刷』、『αGEL』など世界的評価を受ける技術を開発し、事業化。常務を経て、取締役副社長として鈴木総業グループの研究開発をリード。更に、「アース研究会」、「KANSAI仕事づくりの会」などの企業ネットワーク組織をリードし、交流から仕事づくりを実践している。 |
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