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  マーケティングの支援
目次
はじめに
創業における経営課題と支援施策
支援人材の基本姿勢
ビジネスプランの作成
創業前後の資金調達
創業後の継続的な支援
マーケティングの支援
コーディネートによる支援
国際化対応への支援
マーケティングの支援
 マーケティングは、顧客に商品・サービスを選んでもらい、収益をあげる事業の仕組みづくりの根幹となるものです。しかし、経営資源(特に人材)に制限のあるスタートアップ企業においては、戦略的なアプローチがとられていないことが多いのが現状です。ここでは、中小企業のマーケティングについて研究されるとともに、中小企業のマーケティング戦略の支援をされている九州産業大学山本久義教授に、戦略的なマーケティング支援について論じていただきます。
マーケティング戦略は事業づくりの根幹 マーケティング戦略のたて方・進め方
   皆さんはマーケティング支援というと、どのような支援を思い浮かべるでしょうか。店舗立地調査などの市場調査でしょうか、5Pで構成されるマーケティングミックスの開発支援でしょうか、それとも顧客紹介でしょうか。これらは、それぞれ重要であり、創業者やスタートアップ企業にとっては、必要不可欠なこともあるでしょう。しかし、このような支援だけだと、手法論に走ったり、支援人材自身が実施できる支援のみに限定され、マーケティング戦略本来の目的である、企業の競争力の強化や新たな成長の芽の開拓につながらない可能性も出てきます。
 マーケティング支援に当たっては、これから始める事業ドメイン(事業領域)を明らかにし、圧倒的な競争力を確立するためにはどのような方策が必要なのかを明らかにすることからスタートしなくてはなりません。創業者やスタートアップ企業の中には、「すぐに売上があがるよう、顧客を紹介して欲しい」などと即効的な支援を期待することもあるでしょう。しかし、支援人材としてまずすべきことは、事業ドメインと圧倒的な競争力を開発するためのポイントを明らかにした上で、そのためにどのようなマーケティングミックスを開発し、どの経営基盤を強化すべきかを指摘し、その実現に向けて精力的に支援することです。
マーケティング戦略のたて方・進め方
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事業ドメインと圧倒的競争力確立
   「いかなるターゲット市場に何を提供するか」を明確にした事業ドメインの確立が、マーケティング支援の第一歩です。そのためには、支援企業の企業力と市場環境の分析が必要です。まず、企業力について、マーケティングミックスに関する事項とそれを支える経営基盤に関する事項の2つに分け、それぞれ強み、弱み、平均並みに分解します。他方、市場環境については、ターゲット市場の顧客層、競合関係、政府の施策等の3つについて、機会、脅威、それ以外の特徴に分解します。そして、自社の企業力の強みが事業機会に対し、最も有効に作用すると判断できる領域を自社の事業ドメインとします。もし、その事業ドメインにおいて、他社並みや弱みの企業力しか持ちあわせてなく、事業機会を生かせない場合は、その中のどれを強化するかを検討します。
 事業ドメインを策定した後には、その事業ドメインの中で圧倒的な競争力を確立することが必要となります。そのためには、市場環境における事業機会、脅威に対応すべき企業力として核となるものは何かを抽出し、どのようなマーケティングミックスを開発すべきか、重点的に強化すべき経営基盤は何かについて明らかにする必要があります。更に、自社の企業力の中で、より一層強化すべき強みは何か、現在は弱みか平均並みである企業力は何かを明らかにし、それを強化する方策を確立することも必要です。
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ニッチ市場への集中、差別化
   スタートアップ企業が競争優位に立つためには、大手企業が進出しづらいニッチ市場から始めることが重要です。大きな池の小さな鯉より、小さな池の大きな鯉になった方が、収益性が高く、確実な成長が見込めるからです。そして、それぞれのニッチ市場の特性に最も適するよう、製品・サービス計画を中心に、マーケティング5Pをきめ細かく企画・実践することが求められます。
 例えば、ある中小旅行代理店では、事業ドメインを海外スキー客専門の旅行業に特化し、5Pの中の製品・サービスにおいて圧倒的な強みを築きました。南半球まで含めた多様な国のツアーを用意し、スキーに卓越した添乗員を用意するなど、きめ細やかなサービスを提供しているのです。また、プロモーションでは、オフシーズンに飲み会の企画や定期的な電話連絡を行い、顧客の頭から自社の名前が消えないように手を打っています。すなわち、海外でスキーを楽しみたいという顧客層にのみ的を絞り、質の高い添乗サービスによって商品の品質を向上し、アフターサービスにより顧客をつなぎとめ、圧倒的な競争力を構築しているのです。
更なる成長のために一歩先を支援
   製品やサービスにはライフサイクルがあり、限られた市場でのシェアアップのみでは、企業としての成長に限りがあります。企業が長期に存続し、成長していくためには、新商品・サービスの開発や新たな市場への展開、さらにはその組み合わせ、すなわち成長戦略を策定することが必要です。創業者は目先の売上の確保に走ったり、自身の商品・サービスを過信し、成長戦略の開拓がおろそかになりがちです。支援人材としてはこの点に気をつけ、製品のライフサイクルを見越した成長戦略策定の必要性をスタートアップ企業の経営者に気付かせることも必要です。
継続的な支援と経営基盤の充実・強化
   マーケティング戦略を展開していく上でもう1つ重要なポイントは、経営基盤の充実・強化です。スタートアップ企業では、経営基盤の中で最も重要な人材が、創業者や創業メンバー等に限られており、マーケティング戦略に関する知識や経験をもつ人材は不足がちです。それゆえに、外部経営資源の活用、すなわち、支援人材のサポートが必要となるのです。
  しかし、創業支援の究極的な目標は、スタートアップ企業の独り立ちです。このため、支援人材が持つ知識、ノウハウ、経験、人脈が、スタートアップ企業に移転し、マーケティング戦略の立案と実行を自らできる人材を育成すること(すなわち、経営基盤の強化)に留意すべきです。そのためにも、マーケティング戦略の企画→実行→チェック→修正のサイクルを、経営者と一緒になって進め、OJT的に知識、ノウハウさらには『知恵』の移転を図ることが求められます。

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CHECK POINT
  小手先でなく、戦略的なマーケティング支援となっているか?
1 スタートアップ企業の強み・弱み・並みと、市場環境における事業機会・脅威・特徴の分析を行い、事業機会に対して、強みを活かせる分野(事業ドメイン)を開発する
2 事業ドメインにおけるKFS(成功への鍵となる要素)を想定し、強みをより強化し、弱みや並みを強みに変え、圧倒的な競争力を構築するための方策を検討する
3 ニッチ市場に集中し、徹底的顧客志向のもとにきめ細かいマーケティングミックスを開発・実施する
4 更なる成長のための次の手を考えるように、仕向ける
5 支援する中でマーケティング戦略に関する知識・ノウハウ・知恵をスタートアップ企業に移転することに留意する

事例
 西条産業情報支援センターでは、エリアエージェントとして東京・大阪・広島それぞれに1名ずつマーケティングのプロを委嘱しています。エリアエージェントは、各地の市場調査、営業情報収集活動だけでなく、中央の市場から遠く離れた地元企業の代わりに初期営業をします。その効果は、地元企業ではアプローチできない企業を開拓できることです。
また、初めて営業をする際には、顧客の感触を甘く見がちですが、営業のプロに同席してもらうことにより、相手の反応を正確に判断することが可能になりました。
 西条支援センターでは、この仕組みを使って、顧客開拓支援だけでなく、地域の中小企業の営業ノウハウの習得・向上、地域を越えた市場開拓や顧客オリエンテッドな製品開発についての意識改革を目指しています。
西条産業情報支援センター

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筆者紹介 山本久義(やまもとひさよし)【九州産業大学商学部教授】
筆者、山本久義
1944年生まれ。カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校大学院経営学研究科修士課程終了(MBA)。中小企業、中堅企業のマーケティングの研究とともに、中小企業、中堅企業に対するマーケティング戦略の企画・実践、営業担当管理者の営業管理能力強化、専門店・生鮮品店・スーパー等の小売業活性化に関するコンサルティング、研修に従事。著書には、「中堅・中小企業のマーケティング戦略」同文館など多数。中小企業診断士。

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