トップページ 年頭所感

中小企業庁長官 平成28年 年頭所感

中小企業庁長官 平成28年の新春を迎え、謹んでお慶びを申し上げます。

 日本経済は、長く続いたデフレ経済からの脱却を図るための対策がとられてきており、その成果も着実に現れております。有効求人倍率は高い水準になっており、企業収益も過去最高となり、経済の好循環が生まれつつあると言えます。一方で中小企業・小規模事業者においては、景況は改善してきているものの、業種や地域によってアベノミクスの恩恵がまだ十分行き渡っておらず、厳しい状況にあるところが少なくありません。
こうした中で、昨年9月には、「GDP600兆円」、「希望出生率1.8」、そして「介護離職ゼロ」といった安倍政権の新たな三本の矢が示され、これまでの地方創生とともに、新たに一億総活躍社会の実現が打ち出されたところです。また、最近の目覚ましいインバウンド(訪日観光者)の動向に加え、10月にはTPP(環太平洋パートナーシップ協定)が大筋合意に至り、中小企業・小規模事業者にとって、国内外で外需も取り込みつつ大きくはばたくチャンスが訪れています。中小企業・小規模事業者は、地域の経済や雇用を支え、一億総活躍の主役として力強く日本経済を支えていく重要な存在です。中小企業庁としては、中小企業・小規模事業者の皆様に景気回復の実感をお届けするとともに、持続的な更なる発展に向けて、中小企業・小規模事業者の事業機会の拡大やそのための「稼ぐ力」の強化の支援に精一杯の努力を行うこととしております。こうした観点から、以下の分野に重点を置きつつ効果的な取組みを行ってまいります。

 まず第一に、引き続き東日本大震災の復興を加速するため、被災地の中小企業・小規模事業者の事業再開・継続を後押ししてまいります。これまでも、グループ補助金による施設・設備の復旧支援、仮設店舗・事務所の整備や産業復興相談センターにおける事業再生支援などに取り組んでまいりました。グループ補助金では、累計で638グループ、10,793事業者に対して支援を実施してきております。また582箇所の仮設施設を整備し、2,563事業者の方々にご活用頂いております。引き続き、必要な事業費を確保しながら、被災地の復興を支援しております。

 第二に、中小企業・小規模事業者の生産性向上に取り組みます。具体的には、イノベーションの創出を図るため、ものづくり・商業・サービス新展開支援補助事業や中小企業投資促進税制などにより、新たな商品・サービスの開発や生産性の向上に資するIT投資、設備投資の支援を行います。また、サービス業を含めて業種単位で生産性向上に取り組む中小企業・小規模事業者を支援する新たな法的枠組みの構築を検討してまいります。
こうした生産性向上の取組により中小企業・小規模事業者の収益力が向上することを期待いたします。一方で、中小企業・小規模事業者の収益性を高め、それによって賃上げや必要な設備投資を実現するためには、取引条件の改善など下請取引対策も重要であり、これまで以上に万全を期してまいりたいと考えております。具体的には、仕入れ価格等のコスト増加に見合う価格転嫁がなされるよう、産業界に求めていくとともに、下請けガイドラインに示された下請取引の改善が進んでいるのかについてフォローアップを徹底いたします。また、事業者の価格交渉力を強化するため、全国48箇所の下請かけこみ寺における支援を強化します。

 第三に、TPPの大筋合意を踏まえ、海外展開や農商工連携やインバウンドの取込を促進してまいります。昨年7月には地域資源法を改正し「ふるさと名物」の開発・販路開拓に取り組む企業の支援体制を強化しました。今後はTPPを追い風にして海外でも通用する新商品の開発や海外での販路獲得を通じて、中小企業・小規模事業者の海外展開をより強力に推進したいと考えております。
TPPに関しましては、制度の理解を深めるための説明会を実施し、全国各地の経済産業局、ジェトロ及び中小企業基盤整備機構に相談窓口を設置していますが、今後は商工会・商工会議所等の協力も得てTPPを活用したビジネス展開の経営相談に応じられる体制の充実を図ってまいります。こうした観点から、「はばたく中小企業・小規模事業者300社」の選定を通じて海外展開で活躍する企業の発掘・紹介にも力を入れてまいります。
昨年11月には、林幹雄経済産業大臣のもとに「経済産業省TPP対策推進本部」及び「農商工連携によるグローバル市場開拓チーム」が設置されました。今後も農林水産省など他省庁との連携を強化し、高付加価値の商品開発・海外販路開拓プロジェクトを促進してまいります。

 第四に、一昨年の小規模基本法の制定や小規模事業者支援法の改正を踏まえ、全国の中小企業の約9割を占め、地域経済の担い手である小規模事業者に焦点を当てた支援体制の強化に引き続き取り組んでまいります。具体的には、小規模事業者持続化補助金の活用や商工会・商工会議所に対する経営発達支援計画の認定を通じて、販路開拓の支援や伴走型の経営サポートに全力を尽くします。また、ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金に新たな枠組みを設けることにより、小規模事業者の生産性向上に向けた取組みを支援していきます。

 第五に、中小企業・小規模事業者の企業数は最近の5年間で約40万者減少しておりますが、その減少傾向に歯止めをかけ、逆に増加を目指すためにも、創業や事業の承継を支援してまいります。
まず、地域における若者や女性等に対し、「創業スクール」の実施や創業補助事業により、欧米に比べて低いレベルにある創業を促進するとともに、第二創業補助事業により、経営者の代替わり等に際して新しい分野に進出する第二創業を支援してまいります。
実は、中小企業・小規模事業者の経営者の高齢化が進み、今では経営者数で見ると60代が最も多く、70歳以上の経営者が過去最高の75万人となっております。円滑なバトンタッチを促すため、昨年においては、「承継円滑化法」を改正し、親族外の後継者が親族である場合より不利にならないように措置いたしました。また、後継者不在の中小企業の後継者探しを支援するため、「事業引継ぎ支援センター」の全都道府県での設置・体制拡充に取り組んでまいります。また、相続税増税等や株価上昇の中で、円滑な事業承継に支障を来すことのないよう、事業承継税制の施行状況を検証し、同税制については更なる拡充を検討してまいります。
さらに、人材不足が深刻な課題となっていることから、全国各地で既に人材マッチング事業を昨年4月から昨年末までに1,800回以上行っており、今年もさらに回数を重ねていきます。

 第六に、中小企業の成長を地域の経済活性化につなげていくため、経営支援体制の強化に取り組んでまいります。中小企業・小規模事業者からの幅広い経営相談にワンストップで対応するため、各都道府県に「よろず支援拠点」を設置し、これまで約25万件の相談に対応してまいりました。今後も、「よろず支援拠点」の体制強化や他の支援機関を含めたネットワーク構築を通じて、中小企業・小規模事業者の課題に向き合い、それを解消する活動を広げていきます。
地域の活力源ともいうべき商店街の活性化を推進するため、商店街のコミュニティ機能の強化など、商店街による積極的な取組に対し、支援を行ってまいります。また、急増する訪日外国人観光客の消費取り込みを進めるなど果敢に地域活性化に取り組む商店街に対しては、WiFi設置やカード読み取り装置、免税手続カウンターの設置など、買物環境を改善・強化する取組に対し、支援を行ってまいります。

 現在、中小企業・小規模事業者の発展に資する持続可能な制度となるよう、信用補完制度の見直しを進めております。今回の見直しは、保証協会と金融機関が適切なリスクシェアの下で支援の目線を合わせ、事業者と金融機関がともに経営改善に取り組み続けるためのインセンティブを持たせる仕組みとする観点から、検討を行っています。今後とも中小企業・小規模事業者の皆様が安心して事業展開できるよう、関係者の御意見を丁寧に伺いながら、事業者の資金繰りなどに万全を期すよう留意しつつ、取り組んでいきます。
また、平成29年4月に予定されている消費税の引上げとそれと同時に行われる軽減税率の導入にあたり、中小企業・小規模事業者が円滑にかつ確実に対応できるよう、中小企業庁としても全力を尽くしてまいりたいと考えております。

 最後に、本年が中小企業・小規模事業者の皆様にとって安定に事業を継続できる年に、また大きな飛躍となる年となりますよう心より祈念しまして、私の新年の御挨拶とさせていただきます。

平成28年元旦
中小企業庁長官
豊永 厚志