「下請代金支払遅延等防止法」は、下請取引の適正化・下請事業者の利益保護を図るものです。公正取引委員会及び中小企業庁は、親事業者がこの法律を遵守しているかどうか調査を行い、違反事業者に対しては、同法を遵守するよう求めています。なお、建設工事の請負は、別途「建設業法」が適用されます。
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出版物
平成22年度版 中小企業施策総覧
第2部 個別中小企業施策/第1編 経営サポート
第9章 取引・官公需支援、事業分野の調整/第1節 取引の適正化
第9章 取引・官公需支援、事業分野の調整 |
「下請代金支払遅延等防止法」は、下請取引の適正化・下請事業者の利益保護を図るものです。公正取引委員会及び中小企業庁は、親事業者がこの法律を遵守しているかどうか調査を行い、違反事業者に対しては、同法を遵守するよう求めています。なお、建設工事の請負は、別途「建設業法」が適用されます。
独占禁止法は、公正かつ自由な競争を維持・促進するため、私的独占、不当な取引制限(カルテル)、不公正な取引方法等を禁止し、事業者が各自の創意と工夫に基づいて自由な事業活動を営むことができる環境等の整備を図ることを目的としています。中小企業施策の観点からみた場合には、独占禁止法は、大企業による不当な拘束・圧迫から中小企業を守り、中小企業が、その特色を十分に発揮した自主的な経済活動を営めるようにする役割を果たしており、このような施策によって維持・促進される公正かつ自由な競争によって良質・低廉な商品やサービスの提供が可能となることが期待されています。
我が国経済において中小企業の果たす役割は大きく、その適正な事業活動の機会と自主性が阻害されないようにすることは、技術革新を促し、活力ある経済社会を構築するために極めて重要であり、そのために独占禁止法を今後とも厳正に運用していく必要があります。
独占禁止法で規制される行為のうち主なものに、私的独占、不当な取引制限及び不公正な取引方法があります。
私的独占とは、事業者が他の事業者の事業活動を排除・支配することにより、一定の取引分野における競争を実質的に制限することであり、また、不当な取引制限とは、事業者が他の事業者と共同して価格・数量等を決定することにより、一定の取引分野における競争を実質的に制限することです。事業者が、このような行為により市場支配力を形成し、価格の引上げや生産数量の制限を自由に行うようになると、市場メカニズムが損なわれるため、私的独占や不当な取引制限に対しては、厳しい規制が行われていますが、こうした規制は、関連する中小企業が、大きな不利益を被ることを防ぐことにもなります。
不公正な取引方法とは、自由な競争を減殺する行為や、競争の基盤を侵害するような行為であり、法律で定められているものと、公正取引委員会の指定で定められているものがあります。具体的には、取引拒絶、差別的取扱い、不当廉売、再販売価格の拘束等のほか、優越的地位の濫用(取引上優越した地位にある事業者が、その優越的地位を利用して取引の相手方に対し、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えること)等があります。
不公正な取引方法のうち、下請事業者に対する下請代金の支払遅延、買いたたき等の優越的地位の濫用行為については、その迅速かつ効率的な排除の観点から、特に独占禁止法の補完法である下請代金支払遅延等防止法(以下「下請代金法」という)で規制されます。
なお、下請代金法は、従来物品の製造と修理についての下請取引についてのみ適用されてきましたが、平成15年の改正により、平成16年4月からはサービス分野に係る下請取引も同法により規制されています。
このような規制は、大企業と中小企業とが同じ基盤の上に立って、公正な競争を行うため、重要な役割を果たしています。
≪問い合わせ先≫ 公正取引委員会事務総局官房総務課広報係 TEL 03-3581-5471

下請事業者は、親事業者から規格やデザインなどの指定を伴う製造、加工又は修理の委託を受けて事業活動を行っており、しかも親事業者に対する取引依存度が高いことから、しばしば親事業者から不利な取引条件を強いられることがあります。下請代金の支払遅延、下請代金の減額、買いたたき、返品等がその例です。そこで国は、下請取引の適正化を図るため、昭和31年に下請代金法を制定施行し、親事業者の不公正な取引行為を規制してきています。下請代金法は、制定以来、物品の製造委託と修理委託を対象とする法体系を採ってきましたが、経済のソフト化・サービス化の流れを受けて、平成15年に法改正が行われました。これにより、平成16年4月1日以降は、ソフトウェアやテレビ番組等の情報成果物の作成委託及び運送やビルメンテナンス等の役務の提供委託も、新たに下請代金法の対象となりました。また、本法の運用に当たっては、公正取引委員会及び中小企業庁が、親事業者、下請事業者に対する書面調査及び下請事業者からの申告などに基づいて、下請取引の実態について立入検査等を行う等調査した上で、その結果、違反事実の確認された親事業者に対しては、事態の是正を行うよう指導するほか、下請事業者が受ける不利益が重大であると認められる事案については、公正取引委員会が勧告の措置を採ることとなります。
親事業者は、発注に際して次の具体的記載事項をすべて記載している書面(3条書面)を直ちに下請事業者に交付しなければなりません。。
親事業者は、下請事業者との合意の下に、親事業者が下請事業者の給付の内容について検査するかどうかを問わず、下請代金の支払期日を物品等を受領した日(役務提供委託の場合は、下請事業者が役務の提供をした日)から起算して60日以内でできる限り短い期間内で定めなければなりません。 なお、支払期日を定めなかった場合は、製品等を受領した日が、支払期日と定められたものとみなされます。また、60日を超える日を支払期日と定めた場合であっても、60日目が支払期日と定められたものとみなされます。
親事業者は、下請事業者に対し製造委託、修理委託、情報成果物作成委託又は役務提供委託をした場合は給付の内容、下請代金の額等について記載した書類(5条書類)を作成し2年間保存しなければなりません。
親事業者には、次の11項目の禁止行為が課せられています。



この法律の実効を確保するため、次のような措置が講じられることになっています。
公正取引委員会及び中小企業庁長官は、親事業者又は下請事業者に対して、必要に応じ下請取引の報告を求め又は検査を行うことができます。
公正取引委員会は、親事業者が禁止事項に違反している場合は、すみやかに違反行為の是正について勧告するとともに、勧告した場合は原則として公表することとしています。
公正取引委員会は、親事業者が遵守事項に違反している場合又は遅延利息の支払義務を履行しない場合は、すみやかに違反行為の是正について勧告するとともに、必要に応じ公表することとしています。
親事業者の書面交付義務の違反、書類作成保存の義務の違反、虚偽の報告及び検査の拒否に対しては、罰則の適用があります。
≪相談窓口≫ 公正取引委員会事務総局、公正取引委員会事務総局各地方事務所等、
中小企業庁、各経済産業局及び沖縄総合事務局
| 項目年度 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | ||
| 調査事業者数(書面) | 201,869 |
192,023 |
198,376 |
194,411 |
237,347 |
||
| 措 置 件 数 |
勧告 | 10 |
11 |
13 |
15 |
15 |
|
| 指導 | 4,015 |
2,927 |
2,740 |
2,949 |
3,590 |
||
| 計 | 4,025 |
2,938 |
2,753 |
2,964 |
3,605 |
||
| 調査事業所数(書面) | 143,935 |
123,386 |
130,877 |
202,153 |
229,388 |
||
| 検査数 | 1,598 |
1,038 |
979 |
1,117 |
1,052 |
||
| 措 置 件 数 |
公取への措置請求 | 0 |
1 |
1 |
4 |
2 |
|
| 改善指導 | 1,174 |
918 |
903 |
1,004 |
977 |
||
| 計 | 1,174 |
919 |
904 |
1,008 |
979 |
||
(注)「公正取引委員会が行ったもの」の数値は、すべて企業ベース。
| 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | |||
| 違 法 行 為 等 態 様 別 件 数 |
実 体 規 定 関 係 |
受領拒否 | 42 |
12 |
13 |
15 |
13 |
| 支 払 遅 延 | 250 |
374 |
364 |
405 |
404 |
||
| 請代金の減額 | 275 |
236 |
272 |
279 |
282 |
||
| 返 品 | 54 |
22 |
15 |
18 |
18 |
||
| 買 い た た き | 15 |
18 |
33 |
43 |
48 |
||
| 購入・利用強制 | 1 |
1 |
1 |
0 |
6 |
||
| 報 復 措 置 | 0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
||
| 有償材の早期相殺 | 48 |
18 |
26 |
23 |
21 |
||
| 長期手形交付 | 56 |
35 |
31 |
39 |
41 |
||
| 利 益 要 請 | 1 |
2 |
2 |
5 |
14 |
||
| や り 直 し | 2 |
7 |
0 |
4 |
12 |
||
| 書面不備・未交付 | 984 |
828 |
521 |
999 |
856 |
||
| 書 類 未 保 存 | 474 |
532 |
609 |
642 |
767 |
||
建設工事の下請契約は、注文生産という建設工事の特性からして、元請負人に有利な規定が置かれる傾向がみられます。このため、この片務性を是正し、下請負人の保護を図る必要があります。そこで国は、建設業法の改正(昭和47年4月1日施行)により元請・下請間の不公正な取引行為を規制することとしました。
また、本法の運用に当たっては、国土交通省、都道府県及び中小企業庁において、同法第42条及び第42条の2に基づき、下請負人の保護に関する規定の違反事実が確認された元請負人については、公正取引委員会に対し、独占禁止法の規定に従い、適当な措置をとるべきことを求めることができることとしています。
(ア) 「下請契約」とは、建設工事(注1)を他の者から請け負った建設業(注2)を営む者と他の建設業を営む者との間で、当該建設工事の全部又は一部について締結される請負契約をいいます。(建設業法第2条第4項)
(イ) 「元請負人」とは、下請契約における注文者で建設業者(注3)であるものをいいます。「下請負人」とは、下請契約における請負人をいいます。
(注1)「建設工事」とは、土木建築に関する工事で建設業法第2条別表第1の上欄に掲げるものをいいます。
(注2)「建設業」とは、元請、下請その他いかなる名義をもってするかを問わず、建設工事の完成を請け負う営業をいいます。
(注3)「建設業者」とは、建設業法第3条第1項の許可を受けて建設業を営む者をいいます。
元請負人と下請負人との間の取引について、元請負人に課されている義務は、次のとおりです。
注文者は、自己の取引上の地位を不当に利用して、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金の額とする下請契約を締結してはなりません。
注注文者は、請負契約の締結後、自己の取引上の地位を不当に利用して、その注文した建設工事に使用する資材若しくは機械器具又はこれらの購入先を指定し、これらを請負人に購入させて、その利益を害してはなりません。
元請負人は、請負代金の出来形部分に対する支払い又は工事完成後における支払を受けたときは、当該支払いの対象となった建設工事を施工した下請負人に対し、当該元請人が支払を受けた金額の出来形に対する割合及び当該下請負人が施工した出来形部分に相応する下請代金を、当該支払を受けた日から1ヶ月以内で、かつ、出来る限り短い期間内に支払わなければなりません。
元請負人は、下請負人から建設工事が完成した旨の通知を受けた日から20日以内で、かつ、出来る限り短い期間内に、その完成を確認するための検査を完了しなければなりません。また、検査により完成を確認した後、下請負人から工事目的物の引渡しの申出があった場合には、下請契約において定められた工事完成の時期から20日を経過した日以前の一定の日に引渡しを受ける旨の特約がされている場合を除き、直ちに引渡しを受けなければなりません。
特定建設業者(注)が元請負人となった場合の下請代金は、下請負人から工事目的物の引渡申出のあった日(ただし、下請契約において定められた工事完成の時期から20日を経過した日以前の一定の日に引渡しを受ける旨の特約がなされている場合においては、その一定の日)から起算して50日を経過する日以前において、かつ、できる限り短い期間内においてに支払わなければなりません。また、特定建設業者が元請負人となった場合の下請代金の支払において、支払期日までに一般の金融機関による割引困難と認められる手形を交付してはなりません。
(注)特定建設業者発注者から直接請け負う1件の建設工事につき、下請代金の合計額が3,000万円以上となる下請契約(建築一式工事については、4,500万円以上)を締結して施工しようとする者は特定建設業の許可を受けなければならないことになっています。
この法律の実効を確保するため、次のような措置が講じられることになっています。
国土交通大臣は建設業を営む全ての者に対して、また都道府県知事は当該都道府県の区域内で建設業を営む者に対して、特に必要と認めるとき、報告聴取又は立入検査をすることができます。
中小企業庁長官は、中小企業者である下請負人の利益を保護するため特に必要と認めるとき、元請負人若しくは下請負人に対して、報告聴取又は立入検査をすることができます。
国土交通大臣又は都道府県知事は、建設業を営む者又は建設業者団体に対し、建設工事の適正な施工を確保し、又は建設業の健全な発達を図るために必要な指導、助言及び勧告を行うことができます。
国土交通大臣又は都道府県知事は、その許可を受けた建設業者が建設業法第19条の3などの下請保護規定に違反している事実があり、その事実が独占禁止法第19条の規定に違反していると認めるときは、公正取引委員会に対し、同法の規定に従い適当な措置を採るべきことを求めることができます。また、中小企業庁長官は、第42条の2第1項の規定に基づき報告聴取又は立入検査を行った結果、建設業法第19条の3などの下請保護規定に違反している事実があり、その事実が独占禁止法第19条の規定に違反していると認めるときは、公正取引委員会に対し、同法の規定に従い適当な措置を採るべきことを求めることができます。
虚偽の報告及び検査の拒否に対しては、罰則の適用があります。
≪相談窓口≫ 国土交通省総合政策局建設業課 TEL 03-5253-8111
下請取引の適正化を推進するため、機会あるごとに下請代金支払遅延等防止法、下請中小企業振興法に基づく振興基準等の趣旨の徹底を図っています。特に年末の金融の繁忙期には毎年親事業者、親事業者団体等に対し経済産業大臣及び公正取引委員会委員長の連名で通達を発し、その徹底を図っています。
下請代金支払遅延等防止法に基づく親事業者の遵守事項及び下請中小企業振興法に基づく振興基準のより一層の周知徹底を図るため、昭和54年度から毎年11月を「下請取引適正化推進月間」と定め、公正取引委員会と共同で、親事業者等に対し意識向上を図っています。
受発注企業が適正な下請取引を行うためには、その外注担当者等が、下請代金支払遅延等防止法、下請中小企業振興法等について十分理解していることが必要です。
このため、受発注企業の外注担当管理者等を対象に、下請代金支払遅延等防止法、下請中小企業振興法等の周知徹底を図るための「下請取引改善講習会」を実施しています。
大企業の生産性向上による収益性向上を中小企業へも波及させることを目指し、各業界の特性に応じたベストプラクティス事例(理想的な良い取引関係)や、下請法等で問題となりうる行為、望ましくない取引慣行を記載したガイドラインです。素形材、自動車、産業機械・航空機等、繊維、情報通信機器、情報サービス・ソフトウェア、広告、建設業、トラック運送業、建材・住宅設備産業、放送コンテンツ製作分野の11業種と併せて本年度新規で鉄鋼、化学、紙・紙加工品、印刷の計15業種について策定されています。また、先に策定された広告、情報通信機器、建材・住宅設備についても、改訂を行っています。
≪問い合わせ先≫ 中小企業庁取引課 TEL 03-3501-1669