第5節 働き方とワーク・ライフ・バランス 

2. 女性の活用

 内閣府「仕事と生活の調和推進のための行動指針」(2007年12月)によると、「『仕事と生活の調和が実現した社会』に必要とされる諸条件」の1つとして「子育て中の親、働く意欲のある女性や高齢者などが、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様で柔軟な働き方が可能となる制度があり、実際に利用できること」が挙げられている。本項では、まず、中小企業における女性の就労について規模別比較を中心とした分析を行う。

(1)女性活用の実態
 総務省「就業構造基本調査」を用いて我が国における女性の活用状況を見ると、1997年から2007年にかけて、女性の就業率は全体的に向上しており、特に、25〜29歳、30〜34歳における改善幅は著しいが、男性と比較すると依然として低い傾向にある(第3-5-8図)。次に、規模別・雇用形態別に女性比率の推移を見てみると、25年間における正社員に占める女性比率はあまり変化していないが、大企業正社員に占める女性正社員比率が約22〜27%で推移しているのに対して、中小企業正社員に占める女性正社員比率は約28〜32%で推移しており、中小企業の方がより高い割合で女性正社員を活用している(第3-5-9図)。

第3-5-8図 男女別年齢別就業率
〜25歳から34歳の女性の就業率は1997年から2007年にかけて上昇しているが、男性と比較すると依然として低い〜
第3-5-8図 男女別年齢別就業率
Excel形式のファイルはこちら

第3-5-9図 規模別雇用形態別女性比率の推移
〜中小企業の正社員においては、大企業の正社員よりも女性比率が高くなっている〜
第3-5-9図 規模別雇用形態別女性比率の推移
Excel形式のファイルはこちら

事例 3-5-2 女性の活用に取り組み始めた中小企業

 岡山県美作市の株式会社ショウエイ(従業員85名、資本金5,500万円)は、主に舶用エンジン部品を製造する中小企業である。高い技術力を有しており、舶用エンジン用のカム部品については、世界シェアの60%を誇っており、「2006年元気なモノ作り中小企業300社」に選定されている。
 従来、重厚長大産業に属する同社の製造現場では、従業員が男性中心であった。しかし、地域の過疎化が進み、人材確保が難しくなっていく中、人材の多様化を図る観点もあり、数年前より女性の積極的な活用を始めた。実際に女性が製造・開発に携わっていく中で、多様な視点や個性を活用できることがわかり、本格的に女性を活用してきている。また、最近完成した新工場においては、その設計に当たり、女性を含めて従業員が働きやすい工場を目指した。作業スペースだけでなく、食堂などの非作業スペースまでの細部にわたり、働きやすさに対する配慮を徹底した。
 以上のとおり、女性の活用を進めたことにより、今後、育児休業の取得希望者が増えることが見込まれることから、現在、社会保険労務士の協力を仰いで、育児休業制度の構築に努めている最中である。
 同社の辻井説三社長は、今後の目標は、「当社から日本、ひいては世界に通じる女性エンジニアを輩出することであり、その第一歩として、女性のマイスターを早期に誕生させたい。」としている。
事例 3-5-2


 次に、第3-5-10図〜第3-5-12図は、男女別・規模別に正社員の賃金、労働時間及び労働時間1時間当たり賃金の推移を見たものであるが、同図によると、〔1〕男性と女性の賃金差が大きいこと、〔2〕労働時間においては若干男性の方が長いものの、大きな傾向の違いは見られないこと、〔3〕賃金及び労働時間1時間当たり賃金において、男性では製造業と非製造業の差があまり見られないのに対し、女性においては製造業と非製造業での差が見られること等が特徴として挙げられる。

第3-5-10図 男女別正社員の給与額推移
〜男女間での給与差は大きい〜
第3-5-10図 男女別正社員の給与額推移
Excel形式のファイルはこちら

第3-5-11図 男女別正社員の労働時間数推移
〜男女間での労働時間数の傾向の違いはあまりない〜
第3-5-11図 男女別正社員の労働時間数推移
Excel形式のファイルはこちら

第3-5-12図 男女別正社員の労働時間1時間当たり給与額推移
〜男性では製造業、非製造業での差があまりないが、女性では製造業、非製造業での差が見られる〜
第3-5-12図 男女別正社員の労働時間1時間当たり給与額推移
Excel形式のファイルはこちら

(2)就労に関する女性の意識
 女性の就業率が過去10年間において、次第に向上してきた一方で、実際に女性が就業を続けることに対してどのように考えているかというと、男性、女性共に、「結婚するまでは職業をもつほうが良い」と考える人は減り、子どもができても女性が就業することに前向きに考える割合が高くなってきている(第3-5-13図)。実際、2002年10月以降に前職を育児のために退職した女性のうち、2007年10月時点で約80%の人が何らかの職についていないものの、そのうち約60%の人は再度就業の意欲を見せている(第3-5-14図)。
第3-5-13図 女性が職業を持つことについての考え
〜女性の就業に対する意識は変化してきている〜
第3-5-13図 女性が職業を持つことについての考え
Excel形式のファイルはこちら

第3-5-14図 育児のために退職した女性の就業希望度
〜育児退職後働いている女性の割合は高くはないが、就業を希望している女性は少なくない〜
第3-5-14図 育児のために退職した女性の就業希望度
Excel形式のファイルはこちら

 また、出産・育児期にどのような形で働くことが望ましいかということについては、大企業の正社員、中小企業の正社員共に、「育児期はいったん仕事をやめ、後に正社員として復職する」ことが望ましいと考えている割合が最も高くなっており、「フルタイム正社員のまま育児をしながら働き続ける」と併せると、半数以上の従業員が正社員として働くことが望ましいと考えている(第3-5-15図)。ただ、正社員として働き、育児を理由に退職した後に復職した女性のうち、正社員として復職できているのは約15%にすぎず(第3-5-16図)、女性の就業に関する希望と実態のギャップは大きいと考えられる。しかし、その中において、女性の正社員の再就職先として中小企業が占める割合は大きく、中小企業が女性の活用の場として期待される。これは、実際に、「職場環境アンケート」で従業員に出産・育児により退職した女性正社員が再度正社員として復職可能かどうかを聞いたところ、大企業の女性正社員より中小企業の女性正社員の方が、復職できる可能性があると考えている割合が高いことからも類推される(第3-5-17図)。

第3-5-15図 出産・育児期の望ましい働き方(規模別)
〜大企業、中小企業の従業員とも「いったん仕事をやめ、後に正社員として復職する」ことが望ましいと考えている割合が高い〜
第3-5-15図 出産・育児期の望ましい働き方(規模別)
Excel形式のファイルはこちら

第3-5-16図 育児のため退職した女性正社員の現在の就業先
〜育児のため退職した女性正社員の復帰先において、大企業よりも中小企業の方が復帰先としての割合が高い〜
第3-5-16図 育児のため退職した女性正社員の現在の就業先
Excel形式のファイルはこちら

第3-5-17図 出産・育児により退職した女性正社員の正社員としての復職可能性(規模別)
〜中小企業の従業員の方が、復職の可能性は高いと考えられている〜
第3-5-17図 出産・育児により退職した女性正社員の正社員としての復職可能性(規模別)
Excel形式のファイルはこちら

(3)中小企業による女性の活用
 では、企業側は、女性従業員が子どもを育てながら仕事を行う上で、どのような取組を行っているのであろうか。第3-5-18図は、女性が子どもを育てながら正社員として働くための取組の実施の有無と活用状況を見たものであるが、同図によると、多くの制度において、中小企業では大企業と比較して制度は整っていない傾向にあるが、「育児休業・休暇制度」については比較的多くの中小企業が制度を定めている39 。また、制度を定めていない場合でも、柔軟に対応することにより、大企業に近い水準で対応している取組も多く、特に、「在宅勤務、サテライトオフィスの導入」や「子どもを勤務先に連れてくることの許可」といった取組については大企業よりも活用が進んでいること等が見て取れる。また、これらの取組が過去3年程度でどれだけ活用が進んだかを見てみると、大企業、中小企業共に、「育児休業・休暇制度」、「勤務時間の短縮」が進んでいる一方で、大企業と比較した場合、中小企業では、「子どもの送迎等のための早退・遅刻の許可」がより進んでいる(第3-5-19図)。

39 なお、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児・介護休業法)において、労働者は申し出ることにより、子が1歳(一定の場合、1歳6ヶ月)に達するまでの間、育児休業をすることができる。また、事業主は、育児休業の申出をしたこと又は取得したことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

第3-5-18図 女性が子どもを育てながら働くための取組の実施状況(規模別)
〜制度が未整備であっても柔軟に対応している中小企業は多い。また、「在宅勤務」等では大企業よりも柔軟に対応している〜
第3-5-18図 女性が子どもを育てながら働くための取組の実施状況(規模別)
Excel形式のファイルはこちら

第3-5-19図 過去3年程度と比べて活用が進んだ女性活用のための取組
〜中小企業では「育児休業・休暇制度」や「子どもの送迎等のための早退・遅刻の許可」、「勤務時間の短縮」等の活用が進んでいる〜
第3-5-19図 過去3年程度と比べて活用が進んだ女性活用のための取組
Excel形式のファイルはこちら

事例 3-5-3 在宅勤務制度などを通じて女性の活用を行っている中小企業

 福岡県北九州市の株式会社オーネスト(従業員49名、資本金3,500万円)は、工場の生産設備の制御等を行う産業用情報システムの構築を専門とする情報システム会社である。大手企業で技術者及び技術管理者として勤務した経験を有する現社長が、技術者時代に感じていたニーズを満たす、情報システム構築サービスの新しい提供手法を自ら実現するために、1999年に創業した。
 産業用の情報システム業界においては、大手のハードウェアメーカーがハードウェア、ソフトウェア、エンジニアリングという3分野にまたがって、各メーカー独自の製品・サービスを提供してきた。こうした中、同社は、異なるメーカーが提供する、産業用の情報システムに関連するハードウェアやソフトウェアなどの製品を、顧客の要望に応じて組み合わせること(産業用コンピュータシステムインテグレーション)により、顧客にとって最適なシステムを低コストで構築している。
 このような複数のシステムを取り扱うためには、開発スキルの高さが重要であることから、同社では人材育成に力を入れており、とりわけ女性の優秀な能力の活用に努めている。まず、賃金については、成果主義を導入し、男性・女性の区別なく、従業員が取り扱うことができるシステムの種類等が増えるほど、当該従業員の給与が増える仕組みとしている。その上で、能力向上のための自己啓発については会社が負担することにより、従業員のモチベーションを向上させている。
 同社の女性正社員比率は、約40%と比較的高いこともあって、育児支援にも力を入れており、従業員の必要に応じて在宅勤務にも対応している。同社の在宅勤務制度は、従業員が事前に在宅勤務の希望日(1回につき最大3日間、回数制限なし)と在宅勤務における作業内容を提示し、業務遂行上効率的であると認められれば在宅勤務が許可される、というものである。さらに、在宅勤務で必要となるパソコンが自宅にない場合は、購入費用の一部を同社が負担するなどといった支援にも力を入れており、従業員が仕事と生活の調和を達成できる環境整備に努めている。

写真

  次に、小学生以下の子どものいる女性正社員にこれらの制度のうち、「利用したい制度」と「実際に自分が利用することができる、あるいは、利用したことのある制度」(以下「利用可能な制度」という)を聞いて、「利用したい制度」と「利用可能な制度」のギャップを見ると、「フレックスタイムや勤務時間の柔軟化」や「出産を機に辞めた人の再雇用」といった取組において、ギャップが大きくなっている(第3-5-20図)。同様に、第3-5-21図は大企業、中小企業において、企業と従業員の間で有効だと考えるギャップが大きかった取組を示したものであるが、中小企業と中小企業の従業員の間では、「育児休業・休暇制度」や「フレックスタイムや勤務時間の柔軟化」といった取組に対して、従業員が考えているほど企業側が有効であるとは考えていない傾向にある40 。特に、「育児休業・休暇制度」については、実際に取り組んでいる企業は少なくないことから、企業側は取組んではいるものの、有効な取組であると考えていない可能性がうかがわれる。

40 その他の項目については付注3-5-1を参照。

第3-5-20図 女性が子どもを育てながら働き続けるための取組に関するギャップ
〜小学生以下の子どもをもつ中小企業の女性は「フレックスタイムや勤務時間の柔軟化」や「出産を機に辞めた人の再雇用」を重視する割合が高い〜
第3-5-20図 女性が子どもを育てながら働き続けるための取組に関するギャップ
Excel形式のファイルはこちら

第3-5-21図 女性が子どもを育てながら正社員として働き続けるために有効な取組についての企業と従業員のギャップ(上位5項目)
〜中小企業では「育児休業・休暇制度」や「フレックスタイムや勤務時間の柔軟化」についてのギャップが大きい〜
第3-5-21図 女性が子どもを育てながら正社員として働き続けるために有効な取組についての企業と従業員のギャップ(上位5項目)
Excel形式のファイルはこちら

  また、女性が子供を育てながら正社員として働くことに対して、企業側は大企業、中小企業を問わず「子どもの看護等で急に休んだり遅刻したりするリスクが増える」ことを懸念材料として挙げている割合が高くなっている(第3-5-22図)。一方、従業員側から見てみると、現在、小学生以下の子どもがいる女性非正社員のうち、「将来正社員になりたくない」と考えている割合は大企業、中小企業を問わず約25%となっている。その理由としては、「家庭の事情と両立しやすい」ことや「自分の都合の良い時間に働きたい」こと、「勤務時間や労働日数が短い働き方をしたい」ことといった、労働時間に関係する理由が高くなっている(第3-5-23図、第3-5-24図)。

第3-5-22図 女性が子どもを育てながら正社員として働く上で懸念されること
〜大企業、中小企業を問わず、企業側は「急に休んだり遅刻したりする」ことを懸念している割合が高い〜
第3-5-22図 女性が子どもを育てながら正社員として働く上で懸念されること
Excel形式のファイルはこちら

第3-5-23図 女性非正社員における正社員に対する希望度合い
〜企業規模・子どもの有無を問わず、約25%前後の女性非正社員は「正社員としては働きたくない」と考えている〜
第3-5-23図 女性非正社員における正社員に対する希望度合い
Excel形式のファイルはこちら

第3-5-24図 正社員として働きたくない理由
〜小学生以下の子どもがいる従業員においては、「家庭の事情と両立しやすい」と考えている割合が高い〜
第3-5-24図 正社員として働きたくない理由
Excel形式のファイルはこちら

  ここまで、従業員と企業の観点から、女性が子どもを育てていきながら働くための取組に関して、少しずつ活用が進んでいる一方で、依然として企業と従業員の間で温度差がある可能性が見て取れる。実際に子育て支援に取り組んでいる企業にその効果を聞いてみると、「有能な人材の確保・維持」や「従業員の就業意欲の向上」、「正規従業員の定着率の向上」といった効果があると考えている(第3-5-25図)。また、何らかの取組を行っている企業と特に取り組んでいない企業の収益を見てみると、取り組んでいる企業の方が収益を確保できている傾向が見て取れる(第3-5-26図)。活用が十分に進んでいない企業においても、女性活用という社会的要請の観点だけでなく、優秀な人材の確保、従業員の就業意欲の向上といった効果から自社の収益向上に繋がる可能性について考慮した上で、積極的な活用を検討していくことが望ましいと考えられる。

第3-5-25図 女性が子どもを育てながら働くための取組を行うことによる効果
〜大企業、中小企業を問わず「有能な人材の確保・維持」を挙げる割合が高い〜
第3-5-25図 女性が子どもを育てながら働くための取組を行うことによる効果
Excel形式のファイルはこちら

第3-5-26図 中小企業における女性が子どもを育てながら働くための取組の有無と収益の関係
〜女性が子どもを育てながら働くための取組を行っている中小企業の方が、黒字傾向が強い〜
第3-5-26図 中小企業における女性が子どもを育てながら働くための取組の有無と収益の関係
Excel形式のファイルはこちら

(4)男性従業員の育児休業
 一方、男性従業員に目を向けてみると、第3-5-27図は、厚生労働省「平成19年度雇用均等基本調査」の結果を示したものであるが、男性の育児休業比率は依然として低い状況にある。しかし、低い中でも中小企業の取得率は大企業に比べて高くなっており、中小企業の方が、男性正社員の育児参加に対して機会を提供できている可能性が示唆されている。また、男性従業員が育児に参加することにより、女性従業員による育児の負担が減少し、企業による女性活用に繋がることも期待される。そこで、以下では、男性従業員による育児参加について分析を行う。

第3-5-27図 従業員規模別育児休業取得率
〜男性においては、事業所規模が小さい方が育児休業の取得率が高い〜
第3-5-27図 従業員規模別育児休業取得率
Excel形式のファイルはこちら

  まず、第3-5-28図は、企業が提供する育児支援制度のうち、男性正社員が「利用したい制度」と、「利用可能な制度」を比較した図であるが、これによると、中小企業の男性正社員において「育児休業・休暇制度」や「子どもの送迎等のための早退・遅刻の許可」を利用したいと考える割合が高くなっている。一方で、「利用可能な制度」に目を向けると、「育児休業・休暇制度」は利用可能と考えている一方、その他の制度については、利用したいが利用できないというギャップが生じていることが見て取れる41 。また、第3-5-29図は、男性が育児休業を取得する上で、重要だと考える取組を企業側、従業員側の両方から見たものであるが、企業側は大企業、中小企業を問わず、「経営トップによる奨励・強い支持」、「経営・管理職層の意識改革」、「従業員の意識改革」といった取組が同程度重要であると考えている。一方、中小企業の従業員は、「従業員の意識改革」が重要であると考えている割合は低くはないが、それよりも「経営トップによる奨励・強い支持」や「経営・管理職層の意識改革」といった経営の上層部による契機が重要であると考えている割合が高い。また、中小企業においては、「制度の周知」について従業員と企業の間でのギャップが大きくなっていることも特徴的であり、男性の育児休業取得を推進するためには、このような取組が重要であると考えられる。

41 一方で、第3-5-27図で見たとおり、大企業、中小企業を問わず、実際の男性の育児休業取得率は低いことから、育児休業取得をすることは可能であると考えており、利用したいとも考えている一方で、取得していない、あるいは取得できていないという実態が生じていることが想定される。

第3-5-28図 男性正社員が利用したいと考える育児支援制度、利用可能、あるいは、利用したことがある育児支援制度
〜中小企業において、育児支援制度を利用したい、と考えている男性正社員は多いが、利用できると考えている制度は少ない〜
第3-5-28図 男性正社員が利用したいと考える育児支援制度、利用可能、あるいは、利用したことがある育児支援制度
Excel形式のファイルはこちら

第3-5-29図 男性の育児休業を実現するために重要なこと
〜中小企業の従業員は「経営トップによる奨励・強い支持」や「経営・管理職層の意識改革」が重要であると考えている〜
第3-5-29図 男性の育児休業を実現するために重要なこと
Excel形式のファイルはこちら
事例 3-5-4 男性正社員の育児休業取得実績がある中小企業

 福井県大野市の株式会社吉村甘露堂(従業員80名、資本金4,300万円)は、主に福井県内を中心に「よしむらおかき」のブランドを展開し、あられ・おかき等の製造・販売を行っている中小企業であり、大手メーカーのOEM(相手先ブランドでの製品の製造)も行っている。同社は、新ブランドの開発に余念がなく、「健康志向」の新ブランド「KANRODO(かんろどう)」を2008年11月より立ち上げている。特に、「KANRODO」ブランドの1つであり、原料を福井米100%に限定した「発芽玄米おかきギャバプラス」シリーズの展開については、経済産業省「中小企業地域資源活用プログラム」に基づく認定を受けている。
 同社は、従業員が仕事と生活の調和を達成するための支援に積極的に取り組んでおり、2008年には男性正社員2名が、同社の男性従業員としては初めてとなる育児休業の取得を行った。以前の同社は、繁忙期に残業や休日出勤を必要とする場合が少なからず存在し、そのことが従業員のモチベーション低下に繋がっていた。従業員の家族の不満も大きかったことから、仕事の能率改善のためには家庭が円満であることが重要であると考え、従業員の賛同のもと、従業員が仕事と生活の調和を達成するための取組を行うことに決めた。具体的には、OEM部門の縮小による業務時間の削減、定年再雇用制度、正社員とパートタイマーの雇用均等に向けた取組等を行い、その一環として、男女を問わない育児休業の取得の支援に取り組んだ。
 上述した男性正社員による育児休業取得期間は10日〜20日程度であるが、その間は、育児休業取得者が所属している部署とは別の部署から応援要員を回して業務負担をシェアすることにより、対応した。育児休業を取得した男性正社員からは、「育児の大変さ、子どもの大切さを改めて実感できた。」と好評であり、休業終了後に感想等を他の従業員の前で発表するという形でフィードバックしてもらうことにより、一層の浸透を図っている。
 また、既に子育てを終え、育児休業を取得する機会が少ないと考えられる従業員に不公平感を持たせないよう、「メモリアル休暇」制度を設けている。同制度は、従業員やその家族の誕生日や結婚記念日など、個人のメモリアルな日を事前に申告することにより、休暇の取得が可能となるものである。
 このような取組を通じて、同社は、従業員が仕事と生活の調和を達成することができる職場環境の充実を図っている。

写真

事例 3-5-5 人材確保の一環としてワーク・ライフ・バランスの達成支援に取り組む中小企業

 岐阜県飛騨市の株式会社東洋(従業員85名、資本金3,000万円)は、ドア枠やサッシ枠などの住宅用木質内装建材の製造・販売を行う中小企業である。顧客からの多品種・少量・短納期といったニーズが強くなってきたため、工場の改善活動に取り組んでおり、工場のレイアウト変更や工程の見直しによる多能工化などに取り組んでいる。人材育成に力をいれており、「雇用創出企業1,400社」(コラム3-1-1参照)にも選定されている。同社では、2007年に、同社で初めてとなる男性正社員の育児休業取得者が誕生した。
 同社においては、女性正社員による育児休業取得実績は以前からあったが、2007年に初めて、男性正社員が延べ10日間の育児休業を取得した。実際に、男性の取得者が出るまでは、育児休業は女性が半年や1年といった形でまとまって取得するものであると考えていたが、男性正社員が育児休業を取得する際に、まとまった期間の育児休業だけでなく、数日単位という短期間での育児休業という選択肢もあることを知り、育児休業の実現に至った。男性正社員の育児休業取得実績ができたことにより、男性正社員の間でも意識が変わり、育児休業制度の活用ができると考えるようになってきている。また、育児中の女性が、育児を行いながら働き続けることができる環境を充実させるため、育児短時間勤務制度を子どもが小学校に就学するまで延長し、安心して長く勤めることができるよう取り組んでいる。
 同社は、育児休業制度の活用といった、「仕事」と「家庭」の両立を達成するための取組を行うことは、人材確保の観点からも重要と考えている。同社では、人材確保の一環として、10年程度前から全国採用を行っており、Iターン採用(出身地外からの採用)にも取り組んでいるが、採用活動に際して、「仕事」と「家庭」の両立を達成するための取組の有無に対する関心が非常に高いと感じている。経営資源が限られている中小企業において、「仕事」と「家庭」の両立を達成するための取組を行うことは、金銭面での負担も小さくはないが、同社としては、地域の中小企業が全国から優秀な人材を獲得するため、今後ともそうした取組を充実させていきたいとしている。

 第3章 中小企業の雇用動向と人材の確保・育成

前の項目に戻る     次の項目に進む