第3部 地域経済と中小企業の活性化 

第2節 我が国における開業・廃業の動向

 本節では、総務省「事業所・企業統計調査」を始めとする各種統計資料を基に、我が国における開業・廃業の動向を確認するとともに、業種や地域ごとの開業率・廃業率の分析を行う。

1 最近の開業率・廃業率の推移
 我が国における開業率・廃業率を算出するためのデータには様々なものがあり、ここでは、〔1〕総務省「事業所・企業統計調査」、〔2〕法務省「民事・訟務・人権統計年報」・国税庁「国税庁統計年報書」、〔3〕厚生労働省「雇用保険事業年報」、〔4〕「タウンページデータベース」5の4種類の方法により開業率・廃業率の算出を行う6

5 東日本電信電話(株)(NTT東日本)及び西日本電信電話(株)(NTT西日本)が管理するタウンページの職業分類別・市区町村等別の掲載件数の情報。その著作権はNTT東日本及びNTT西日本が所有。掲載件数は約1,000万件。
6 各手法の特徴については、付注3-1-2参照。


(1)総務省「事業所・企業統計調査」
 総務省が5年おきに実施している同調査7の最新結果(2006年調査)によると、事業所ベースでの開業率は6.4%、廃業率は6.5%となっており、前回の2004年調査時の開業率4.2%、廃業率6.5%と比べて開業率が大きく改善し、廃業率は横這いとなっている8。また、第1部で見たとおり、企業ベースでは開業率が5.1%、廃業率が6.2%となっているが、これを個人企業と会社企業に分解すると、個人企業の開業率よりも会社企業の開業率の方が高く、廃業率が低くなっており、会社企業での開業が活発化しているように思われる(第3-1-8図)。

7 中間年には民営事業所を対象とした簡易な内容の調査を実施。今次調査(2006年調査)は簡易調査である2004年調査に続く大規模な調査である。
8 ただし、総務省「平成18年 事業所・企業統計調査 結果の概要」によると、2004年調査で「国、地方公共団体等」として扱われていた事業所のうち独立行政法人、国立大学法人等は、今回の2006年調査で「独立行政法人等」へと経営組織の区分が変更され、新設の「民営事業所」として分類された。このため、日本郵政公社が属する「複合サービス事業」や、国立大学法人が属する「教育,学習支援業」など、「独立行政法人等」を含む分類では、これらの事業所も新設事業所数に含まれている。例えば総務省「日本標準産業分類」における小分類における「郵便局」も2006年調査で民営事業所に分類され、20,023事業所が新設事業所として扱われており、この値は民営事業所数5,702,781の0.35%に該当するものであり、その分に応じて開業率が統計上押し上げられていると考えられる。

 
第3-1-8図 事業所・企業統計調査から見た開廃業率(非一次産業)
〜前回調査と比べて開業率は上昇傾向にあるが、個人企業と会社においては、依然として開きが見られる〜
第3-1-8図 事業所・企業統計調査から見た開廃業率(非一次産業)
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(2)法務省「民事・訟務・人権統計年報」・国税庁 「国税庁統計年報書」
 国税庁「国税庁統計年報書」から会社数を導出し、法務省「民事・訟務・人権統計年報」の法人設立の登記数を開業とみなすこと等により、法人の開業率・廃業率を算出すると、第3-1-9図のとおりである。設立登記件数が前年を大きく上回ったことにより、開業率は前年の3.7%から4.1%にまで伸びる形となった。結果として、開業率が廃業率を上回り、法人の数は僅かながら増加している。
 
第3-1-9図 会社の設立登記数及び会社開廃業率の推移
〜設立登記件数及び法人企業数は引き続き増加傾向にある〜
第3-1-9図 会社の設立登記数及び会社開廃業率の推移
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(3)厚生労働省「雇用保険事業年報」
 この統計における雇用保険に係る労働保険の新規成立を開業、その消滅を廃業とみなすことにより開業率・廃業率を求めると、第3-1-10図のとおりである。2001年度以来、廃業率が開業率を上回っていたが、2006年度は開業率が前年の4.4%から4.8%へ上昇し、これに伴い、5年振りに開業率が廃業率を上回る形となった。
 
第3-1-10図 有雇用事業所数による開廃業率の推移
〜2006年度は2001年度以来5年振りに開業率が廃業率を上回った〜
第3-1-10図 有雇用事業所数による開廃業率の推移
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(4)「タウンページデータベース」
 上記(1)〜(3)の調査では把握することが難しいとされる、小規模企業や個人事業者の把握や短期間における開業・廃業の動向を調査するために本データベースを利用して事業所の開業率・廃業率を算出すると、第3-1-11図のとおりである。2001年9月から常に廃業率が開業率を上回っており、事業所の減少傾向が続いている9。また、他の指標と異なり、依然として廃業率が開業率を大きく上回っている状況が続いている10。なお、本データベースによる事業所数(2006年9月時点)と総務省「事業所・企業統計調査」の事業所数(2006年10月時点)を比較すると、本データベースの事業所数が総務省「事業所・企業統計調査」の事業所数を上回っており、捕捉率は高いものと思われる11

9 事業所の集計方法・開業率・廃業率の算出については中小企業庁作成の定義に基づき、エヌ・ティ・ティ情報開発(株)が加工・集計。算出方法については付注3-1-3参照。
10 「タウンページデータベース」を用いて5年間の開業・廃業の業種構成(業種分類については付注3-1-4参照)と直近半年間の開業・廃業の業種構成を比較した場合、例えば、「金融・教育・医療・福祉」の開業において、相対的な比率は高いものの、直近半年間の業種構成比率が5年間での業種構成比率を下回っている(付注3-1-5)。これは、最近の傾向として、同業種の開業が相対的に沈静化していると解釈することも可能であると思われる。
11 付注3-1-4参照。

 
第3-1-11図 タウンページデータベースによる開廃業率と事業所数の推移
〜直近においても事業所数の減少傾向は続いている〜
第3-1-11図 タウンページデータベースによる開廃業率と事業所数の推移
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 以上、4種類の統計データを利用して分析を行ったところ、多くの統計において前回調査よりも開業の動向が改善されていることが示された。ただし、法務省「法務統計月報」12によると、2006年5月1日から会社法が施行されたことに伴い、会社法施行前に例年より多くの会社設立が行われており、開業率に関して上方への押し上げ効果があった可能性があることには留意が必要である(第3-1-12図)。また、同図によると最低資本金制度(株式会社1,000万円、有限会社300万円)が撤廃される会社法が施行された2006年5月調査以降、資本金300万円未満の株式会社の設立が増加していることが顕著に表れていると言えよう。

12 各月のデータは各月末時点での速報値である。

 
第3-1-12図 月別株式会社及び有限会社設立登記数の推移
〜会社法施行に伴い、資本金300万円未満の株式会社の設立が大幅に増加している〜
第3-1-12図 月別株式会社及び有限会社設立登記数の推移
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2 業種・地域からみた開業・廃業
 これまで、各種統計資料により最近の開業・廃業の動向を見てきたが、この開業率が上昇している傾向はどのような要因によるものであろうか、以下では、総務省「事業所・企業統計調査」を中心に、業種別・地域別の観点から分析を行う。

(1)業種別にみた開業・廃業
 総務省「事業所・企業統計調査」により最近の事業所の開業率・廃業率を業種別に見ると、全ての業種で開業率が2004年調査から2006年調査にかけて上昇している。特に、情報通信業や医療,福祉、教育,学習支援業等の開業率は廃業率を上回っており、動きが活発である13(第3-1-13図)。これは、IT化、経済のサービス化や高齢者人口の増加などに伴って新たな需要が生まれ、活発な開業が起きているためと考えられる14

13 この傾向は「日本標準産業分類」における中分類で見た場合、さらに顕著に表れていると思われる(付注3-1-6参照)。
14 一方、全体の開業数・廃業数における業種構成を見ると、小売業、サービス業(他に分類されないもの)(以下「サービス業」という)、飲食店,宿泊業の割合が高くなっている(付注3-1-7)。また、製造業や小売業は廃業の構成比率の方が高く、サービス業は開業の構成比率の方が高くなっており、この点からも事業所のサービス化が進んでいると言えよう。

 
第3-1-13図 業種別開廃業率(非一次産業・民営事業所)
〜全業種で開業率が上昇しており、特に「情報通信業」、「医療,福祉」といった業種の開業率の伸びが大きい〜
第3-1-13図 業種別開廃業率(非一次産業・民営事業所)
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(2)地域からみた開業・廃業
 次に都道府県別に開業・廃業の動向を確認する。第3-1-14図によると、北海道、東京、大阪、福岡など、人口100万人を超える都市を有するような県は引き続き比較的開業率が高い傾向にあり、かつ、廃業率も高くなっている。ただし、前回調査(2004年調査)では開業率が廃業率を上回っている県が存在していなかった15のに対し、今次調査(2006年調査)では関東、関西、九州を中心に、開業率が廃業率を上回っている県が存在しており、これらの地域では開業が活発的に行われていると言えよう。また、県ごとの開業率と廃業率の相関関係を見てみると、高い相関関係を持っていることが見て取れる(第3-1-15図)。

15 中小企業白書(2006年版)第1-2-8図参照。

 
第3-1-14図 都道府県別開廃業率(非一次産業・民営事業所・2004年〜2006年)
〜前回調査と同様、大都市圏で高い開廃業率となっている。また、一部の県においては、開業率が廃業率を上回っている〜
第3-1-14図 都道府県別開廃業率(非一次産業・民営事業所・2004年〜2006年)
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第3-1-15図 都道府県別開業率と廃業率の相関関係(非一次産業・民営事業所・2004年〜2006年)
〜開業率と廃業率は高い相関関係を有する〜
第3-1-15図 都道府県別開業率と廃業率の相関関係(非一次産業・民営事業所・2004年〜2006年)

 それでは、これら開業率が廃業率を上回っている県についてはどのような特徴があるだろうか。開業率が廃業率を上回っている県と下回っている県の二種類に分類し、各々のグループで業種別の開業率・廃業率の平均値を見ると16、開業率が廃業率を上回っているグループにおいては、そうでないグループと比して全体的に開業率が高い傾向にあり、とりわけ情報通信業の開業率が相対的に高くなっている(第3-1-16図)。情報通信業の中でも開業率が上位にあったインターネット附随サービス業や情報サービス業については事業所向けサービスが中心であることから17、開業が活発である地域に対して、情報通信事業者が参入するという効果が生じている可能性も考えられる。

16 都道府県別業種別開廃業率については付注3-1-8参照。
17 付注2-2-2参照。

 
第3-1-16図 開廃業率の高低による業種別の特徴(非一次産業・民営事業所・2004年〜2006年)
〜開業率が廃業率を上回っているグループほど全体的に開業率が高く、特に、情報通信業での差が大きい〜
第3-1-16図 開廃業率の高低による業種別の特徴(非一次産業・民営事業所・2004年〜2006年)
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 今までは、各県における開業・廃業の推移を見てきたが、次に、同一県内において開業率・廃業率に違いが生じているかを見る。そこで、県内の市町村の中でも規模が大きいと考えられる、都道府県庁の所在市(以下「県庁所在市」という)18とその他の市町村で開業率を比較すると、県庁所在市とその他の市町村では大きな差が生じていることが見てとれる(第3-1-17図)。特に、事業所の増減を見ると、事業所が減少していない県庁所在市が少なからず存在しているのに対し、その他の市町村では、多くの県において事業所が減少している(第3-1-18図)。このことから、人口規模の大きい地域では開業率が高く、事業活動が活発である傾向がある可能性がある。
 そこで、次項では、開業率・廃業率の水準に影響を与える要因を考えてみることとしたい。

18 東京都は特別区。以下同じ。

 
第3-1-17図 都道府県庁所在市とその他の市町村における開業率(非一次産業・民営事業所・2004年〜2006年)
〜都道府県庁所在市か否かでの開業率の差は大きい〜
第3-1-17図 都道府県庁所在市とその他の市町村における開業率(非一次産業・民営事業所・2004年〜2006年)
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第3-1-18図 都道府県庁所在市又はその他の市町村において事業所が減少した地域(非一次産業・民営事業所・2004年〜2006年)
〜都道府県庁所在市の方が事業所が減少している割合が低い〜
第3-1-18図 都道府県庁所在市又はその他の市町村において事業所が減少した地域(非一次産業・民営事業所・2004年〜2006年)

3 開業・廃業の構造的分析
 ここでは、時系列データや県別のデータ等の指標により、開業率・廃業率を定める要因の分析を行う。
 まず、開業率に影響を与えると考えられる指標を想定し、これらの指標と開業率が互いにどのような影響を与えているのかを分析する。
 分析対象として、「開業率」、「廃業率」19、「東証株価指数」20、「貸出金利」21、「賃金指数」22という5種類の指標を採用し、各々の長期時系列データを用いてVARモデル23を適用することで、各指標間の因果関係を統計的に検証した(Grangerの因果性テスト)。これによると、「(前期以前の)開業率」が「(当期の)廃業率」に影響を与えているという結果が得られた24。ただし、あくまで統計的な因果関係であり、実際の因果関係を示しているとは限らないということには留意が必要である。

19 第3-1-15図で示したように、開業率と廃業率は何らかの関連を持つと考えられる(仮説)。
20 景気指標の一つとして、開業を考える人間が目安とすることが考えられる(仮説)。
21 創業時及びその後の資金調達に影響を与えると考えられる(仮説)。
22 開業の意思決定の際に賃金水準が影響を及ぼすのではないかと考えられる(仮説)。
23 Vector Auto Regression(多変量自己回帰)モデル。自己回帰モデルであるARモデルを複数変数に拡張したもの。分析の詳細については付注3-1-9参照。
24 結果の概要については付注3-1-10参照。


 また、第1節(第3-1-7図)で述べたとおり、倒産と廃業の関係について各県における「企業数に対する倒産件数の比率」と「廃業率」の関係を見たところ、両者には正の相関関係25が見て取れる。同様に各都道府県における「人口増減率」と「事業所増減率」を見ると、こちらも両者の間に正の相関があるという結果となった(第3-1-19図)。
 このことから、人口が多く、マーケットが大きい地域は多くの事業所の開業を生み、競争が活発に行われるために事業所の廃業も多く発生しているという見方もあるが、大都市では人材の確保などがしやすく、開業しやすい環境であり、開業に伴い他の事業所の廃業も多くなるという可能性も考えられる。

25 先のVARモデルとは異なり、因果関係があるとは言えない。

 
第3-1-19図 最近5年間における都道府県別人口増減率と事業所増減率(非一次産業・民営事業所)の相関関係
〜人口の増減と事業所の増減は正の相関が見られる〜
第3-1-19図 最近5年間における都道府県別人口増減率と事業所増減率(非一次産業・民営事業所)の相関関係

4 中小企業の立地選択
 前項では、中小企業はマーケットを求めて、人口規模の大きい地域に立地している可能性と、人口の多い地域では人材や資金の供給源が多いため、開業をしやすい可能性を指摘した。ここでは、中小企業が立地選択をする際にこうしたマーケットの要因と経営資源の要素のどちらを重視しているのかを見ていく。具体的には、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)が実施したアンケート結果26を用いて、参入の際にどのような立地状況を考慮したのかを中心に分析する。
 まず、中小企業が参入する際に立地を検討する要因として、販売先や市場を考慮する「マーケティング要因」と原材料や人材の確保といった費用項目や経営者の個人的属性を考慮する「生産要素要因」に分類し、それぞれの要素を「プラス要因」と考えたのか、あるいは「マイナス要因」として考えたのかを聞いたところ、多くの企業は「マーケティング要因」と「生産要素要因」に関して、どちらか一方に固執することなく、バランスを考慮して参入していることが示された27。では、「マーケティング要因」と「生産要素要因」あるいはその他の要因について、それぞれ、どのような点を重視しているのであろうか。

 
26 「地域中小企業の立地と経営実態に関するアンケート調査」。調査数:20,000、回収率:15.2%
27 付注3-1-11〔1〕参照。


 まず、「マーケティング要因」について見ると、本社所在地の市町村人口規模(以下「人口規模」という)が小さい企業28ほど、「近くに多くの顧客が存在している」ことを重視しているのに対し、人口規模が大きい企業は「顧客のアクセスが容易である」ことを重視している傾向にある。また、「販路の開拓」の割合も高くなっており、市場規模の大きさだけでなく、その中で、いかに顧客を引き込むのか、という点を重視していると思われる(第3-1-20図)。これは、同図において、人口規模別に販売地域を見たところ、人口規模が大きくなるほど、販売地域が広い傾向にあることからも類推される。ただし、一方では、人口規模が小さくても、国内全域や海外展開を行っている企業も少なくないことも注目すべき点であろう。また、業種別で見た場合、販売において生産から出荷への流れをもつことが多い製造業については、「近くに多くの顧客が存在している」ことを重視している割合が非製造業と比較して高くなっている傾向にある29

28 有効回答中、「人口10万人以下」の割合が約40%、「人口10万人超50万人以下」の割合が約50%、「人口50万人超」の割合が約10%となっている。以下同じ。
29 付注3-1-11〔2〕参照。

 
第3-1-20図 販売先・市場の観点から見た立地要因とその販売地域(人口規模別)
〜都市の規模が小さい企業は近隣の顧客を意識している一方、広範な販売地域を有する企業も少なくない〜
第3-1-20図 販売先・市場の観点から見た立地要因とその販売地域(人口規模別)
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 次に、「生産要素要因」について見ると、原材料・費用項目の観点においては、人口規模が大きい企業ほど、「地価、賃料が安い」ことを重視する傾向にある(第3-1-21図〔1〕)。また、製造業は「従業員の確保」を、非製造業は「地場企業とのネットワークの構成」を相対的に重視する傾向にある30。一方で、経営者の個人的属性から見ると、人口規模が小さい企業では、「経営者の生まれ故郷」である割合が相対的に高く、人口規模が大きい企業では「経営者となる以前に勤務していた地域」である割合が相対的に高くなっている(第3-1-21図〔2〕)。

30 付注3-1-11〔3〕参照。

 
第3-1-21図 原材料・費用項目及び経営者の個人的属性から見た立地要因(人口規模別)
〜人口規模が大きいほど、地価・賃料を理由にする割合が高く、人口規模が小さい地域では、経営者の生まれ故郷である割合が高い〜
第3-1-21図 原材料・費用項目及び経営者の個人的属性から見た立地要因(人口規模別)
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 また、その他の要因については、人口規模・業種を問わず、「適当な不動産物件があった」ことを重視している割合が高い一方で、人口規模が小さい企業は「土地の知名度が高い」ことや製造業では「インフラが整備されていた」ことを重視している割合が相対的に高くなっているなどの特徴が表れている31
 最後に、これらの中小企業が「マーケティング側面」と「生産要素側面」の観点からどのような支援を求めているかを見たところ、「税制の優遇」や「事業資金の融資」など、資金関係の支援を望む声が強い一方で、「販路獲得のための相談窓口の設立」や「人材確保支援」などを望む声も多く、とりわけ製造業においては「新製品の開発支援」を求めている割合が非製造業と比してかなり多くなっている32

31 付注3-1-11〔4〕参照。
32 付注3-1-11〔5〕参照。


事例3-1-1 独創的な商品が好評を博し、国内外に販売先を有する小規模企業

 大分県国東市安岐町の有限会社アキ工作社(従業員5名、資本金800万円)は、1998年に現社長が創業し、アパレル関連商品・ディスプレイ商品を製造し、国内外に販売を行う小規模企業である。
 同社は、『d-torso(ディー・トルソ)』という自社ブランドで、ディスプレイ用のマネキン等の商品を製造・販売している。ダンボール等の板材を加工してパーツを作成し、それらを組み合わせてマネキン等の商品を作り出すという独自の製法を採っている。
 パーツの加工では、CADを用いたレーザー加工機を利用するため、〔1〕型枠を必要とせず、製造コストを抑えることができ、〔2〕作成スピードが早く、デザインの修正・拡大・縮小も容易であり、〔3〕ダンボールに限らず、レーザーで加工できるものであれば、どのような板材でも加工可能である、といった特長がある。
 同社のマネキンは、従来のマネキンとは異なるデザイン性を有しており、2001年には「グッドデザイン賞」を受賞した。そのデザイン性の高さから国内だけでなく、海外向けの販売も行っている。また、マネキンだけでなく、包装のための「パッケージタイプ」や組み立てキットとして販売する「ミニチュアタイプ」などの新商品も開発して販売しており、『d-torso』ブランドの展開を進めている。
 同社社長は、広い場所・良い環境の中で仕事をしたいとの思いもあって、同社の拠点を出身地である安岐町に置いた。安岐町には大分空港が立地していることから、同空港へのアクセスが容易であり、同空港から韓国の仁川国際空港を経由してヨーロッパや北米への海外出張をしやすいというメリットもある。他方で、地方を拠点としていることにより、人材の確保が課題となる。特に、デザインなどの専門分野については、大都市圏と異なり、精通した人材が少ないのが実情であり、同社では、即戦力の確保と人材の育成の両面から対策を考えている。
 
d-torso(マネキンタイプ)
d-torso(マネキンタイプ)

 第1章 地域を支える中小企業の事業再生と小規模企業の活性化

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