第2部 中小企業の生産性の向上に向けて 

第4節 ITの有効活用に向けた課題

1 ITの有効活用のボトルネック
 前節まででは、ITを有効活用している企業が業績を伸ばしている一方で、総じて言えば、中小企業によるITの活用状況は大企業に比べて低調であることを見てきた。IT活用によるメリットはあるものの、中小企業がITの活用を十分にできていない原因は何であろうか。
 第2-3-31図は、大企業・中小企業がIT投資やITの活用における課題として考えていることを示したものであるが、これによると、「自社に適したIT人材が不足している」ことや、「IT関係の設備投資にあてる初期投資コストの負担」といった点が課題として挙げられている。これらは大企業か中小企業かを問わず共通の課題として認識されている。また、大企業よりも中小企業の方が多くの項目で課題と認識している企業の割合が低いが、これは、大企業と比べると中小企業のIT活用への問題意識が弱いことを反映している可能性がある。
 
第2-3-31図 IT投資やITの活用における課題
〜人材の確保とコスト負担が課題〜
第2-3-31図 IT投資やITの活用における課題
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 第2-3-32図は、ITの活用レベルの異なる中小企業における課題の相違を示したものである。これによると、IT資本の蓄積が不足している中小企業とIT資本が充足している中小企業が挙げている課題を比較すると、「自社に適したIT人材が不足している」ことが最大の課題であることは共通であるが、IT資本の蓄積が不足している中小企業の2番目に多い課題が「社員のIT活用能力、ITリテラシーが不足している」であることに対し、IT資本が充足している中小企業の2番目に多い課題は「IT関係の設備投資にあてる初期投資コストの負担」となっている。さらに、IT資本の蓄積が不足している中小企業の課題の5番目には「経営者のIT活用能力、ITリテラシーが不足している」という人材(経営者)に関する課題が入っている。
 
第2-3-32図 IT投資やITの活用における課題の比較
〜IT資本の蓄積状況等により、課題として挙げられている項目の順位が違う〜
第2-3-32図 IT投資やITの活用における課題の比較

 こうした結果から、コスト面以上にITを活用できる人材の不足が中小企業のIT資本の蓄積を妨げている可能性があると考えられる。同様に、IT投資の効果が得られていない企業や、同業者や周囲の事業者に比べてITを活用し始めた時期が遅れた企業においても、社員や経営者を含めてIT活用における人材の課題を挙げている割合が相対的に高い。こうしたIT活用における人材面の課題については、第3項で更に詳しく分析することとし、先にIT活用における課題として多く挙がっていたIT投資のコスト面の課題について次項で見ていく。

2 ITの活用のためのコスト
 ITを活用する上でのコスト負担としては、情報システム等の初期導入の費用に加えて、セキュリティ対策等の追加的な費用負担もある。第2節で見た第2-3-7図において示されているとおり、情報処理関連支出の内訳では、運用・保守委託料や教育・訓練等費用といったサービス関連支出額が、ハードウェアやソフトウェア関連への支出額に比べて小さくない水準となっており、ITの活用は、その導入時だけではなく継続的なコスト負担を必要とすることが分かる。第2-3-31図でも見たとおり、IT投資の初期コストやランニングコストの負担は中小企業にとってIT活用の上での大きな課題となっている17

17 なお、「情報処理実態調査」によれば、2005年4月から2006年3月の1年間において、全企業の3割以上で情報セキュリティ上のトラブルが発生しており、発生したトラブルとしては「ウィルスやワームの感染」が多く挙げられている(付注2-3-2)。しかし、情報セキュリティの対策状況を見てみると、中小企業による対策はすべての項目において大企業と比べて遅れている(付注2-3-3)。


 こうした状況を踏まえると、第1節で見たSaaS・ASPは、情報処理サービスを専用線やインターネット網を通じて提供するものであるため、情報システム構築の初期投資コストが小さく、IT活用のコスト面の課題の軽減に資する可能性がある。実際、SaaS・ASPの利用メリットとして「初期導入の費用負担が少ない」ことや「社内に人材・ノウハウが無くても利用できる」ことが多くの中小企業において挙げられている(第2-3-33図)。しかしながら、SaaS・ASPの利用状況を企業の従業員規模別に見てみると、規模の小さな企業ほどSaaS・ASPの利用状況は低調であり、従業員20人以下の企業の5割弱がSaaS・ASPについて「わからない・知らない」としている(第2-3-34図)。今後、中小企業がIT活用に積極的に取り組んでいくためには、初期投資コストやIT人材の不足といった課題に対応していくことが必要であるが、こうした取組のうちの一つとして、中小企業におけるSaaS・ASPの有効な活用が期待される18

18 一方、SaaS・ASPを利用するうえでの課題や問題点としては、「カスタマイズの自由度が低い」こと等が挙げられている。もっとも、「特に課題・問題点はない」との回答も多い(付注2-3-4)。

 
第2-3-33図 SaaS・ASPを利用することのメリット
〜SaaS・ASPを利用するメリットは広範囲にわたっている〜
第2-3-33図 SaaS・ASPを利用することのメリット
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第2-3-34図 SaaS・ASPの利用状況
〜比較的小規模な企業には、SaaSやASPは知られていない〜
第2-3-34図 SaaS・ASPの利用状況
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3 IT人材の確保・育成における課題
 第1項では、IT活用の課題としてIT人材の不足が挙げられていることを見たが、ここでは、IT人材の確保や育成における課題についてより詳しく見ていく。
 第2-3-35図はITを活用している企業におけるIT人材の充足度を示したものであるが、これによると、IT人材が「十分に確保されている」企業は、従業員規模にかかわらず1割に満たず、「やや不足している」、「とても不足している」企業が多くなっている。また、「外注を活用すること等から、自社にIT人材は必要ない」としている企業が、従業員20名以下の企業では16%、従業員100名以下の企業では1割程度存在している(事例2-3-7)。IT人材の充足度とIT活用の効果の関係を見ると、IT人材が確保されている企業の方が、IT活用による効果が得られている傾向が見られることから、IT人材の確保がITの有効活用にとって必要であると言えよう(第2-3-36図)。
 
第2-3-35図 IT人材の充足度
〜IT人材の充足度は低い〜
第2-3-35図 IT人材の充足度
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第2-3-36図 IT人材の充足度と、IT活用の効果
〜IT人材の充足度が高い企業ほど、IT活用の効果を実感している〜
第2-3-36図 IT人材の充足度と、IT活用の効果
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事例2-3-7 ITコーディネータとの連携によりIT化を進めている企業

 川崎市川崎区の株式会社仙崎鐵工所(従業員19名)は、大手企業からの製缶の受注を取りまとめ、協力企業とともに加工をした上で納品している。同社では、川崎市から紹介を受けたITコーディネータと連携して、生産システムを再構築して協力企業との情報の共有化を行い、リードタイムの短縮化につなげている。
 これまで同社では、オーダーメイドによる生産管理システムを導入していたが、システムの構築を行った情報システム会社との意思疎通が不十分であったため、自社が想定していたようなシステムとならず、導入したシステムが十分に活用されていなかった。その背景としては、情報システム会社には製缶業務に対する理解が乏しい一方で、企業側にはITに係る専門知識が十分に備わっていなかったことがある。
 大手販売先がEDI(Electronic Data Interchange、企業間の受発注、決済等の商取引に関する情報を電子的に交換する仕組み)を導入したことを契機に、生産システムの再構築を決断したものの、その後2年程度は適切な情報システム会社が見つからない状態であった。その折に、川崎市よりITコーディネータを紹介してもらい、情報システム会社の選定やシステムの構築の際にITコーディネータと連携することで、同社の意向に沿ったシステムの構築に成功した。当該ITコーディネータは大手製造会社において開発業務やIT業務に従事した経歴を持っており、製造業における業務とITの両面に通じていたことが強みとなった。
 中小企業ではITに関する専門知識が乏しく、情報システム会社との意思疎通が難しいうえ、情報システムは無形財産であることから中小企業が情報システム会社を評価・選別することは困難である。中小企業では事業規模が小さいものの、標準的な業務フローにおける例外的な業務が発生する場合も多いため、システム化自体が難しい側面もある。こうした中小企業において効果的なITシステム投資を行うためには、中小企業と情報システム会社の間を取り持って、両者のベクトルをあわせるITコーディネータという人材の活用が一助となる。
 
協力企業とともに加工していく筐体
協力企業とともに加工していく筐体

 しかし、情報処理技術者の有効求人倍率は3倍を超え、全体の有効求人倍率を大幅に上回っており、その不足感は近年拡大している(第2-3-37図)。IT人材に対する企業側の需要は強いが、ITの専門知識を有している人材の供給が不足している状況にあることがうかがえる。
 
第2-3-37図 情報処理技術者の有効求人倍率
〜情報処理技術者の不足感は大きい〜
第2-3-37図 情報処理技術者の有効求人倍率
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 それでは、企業はIT人材の確保のためにどのような取組をしているのであろうか。第2-3-38図は大企業・中小企業がIT人材の確保のために取り組んでいることを示したものであるが、中小企業では「特に行っていない」企業が多いことに加え、「自社の業務に精通した社員の配置」や「ITに精通した社員の配置」といった、既存人材の再配置による対応がなされている。「ITの素養がある学生等の新卒採用」にはほとんど取り組んでおらず、「中途採用等の外部からの採用」も、大企業と比べると取り組んでいる企業の割合が低い。中小企業では、事業規模が小さいため、IT業務専門の社員を抱えることの費用対効果が小さいことに加え、景気回復局面において大企業の労働需要が高まり、中小企業の採用環境は厳しくなったため、IT人材を外部から確保しにくい状況にあると考えられる。
 
第2-3-38図 IT人材確保のための取組
〜中小企業では、IT人材確保のための取組は、あまり行われていない〜
第2-3-38図 IT人材確保のための取組
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 中小企業におけるITの有効活用のためには、IT人材を外部から確保することのほか、自社の従業員のITの活用能力を向上させることが必要である。第2-3-39図は、大企業と中小企業が従業員のIT能力の向上のために取り組んでいることを確認したものであるが、これについても中小企業では「特に行っていない」割合が高くなっている。「社外のIT研修等への派遣」、「社内でのIT研修や講習会の実施」も大企業に比べて低い割合にとどまっており、人材のIT教育を行う余裕に乏しい実態がうかがえる。しかし、IT人材の確保のための取組及び従業員のIT能力向上のための取組と、IT活用の効果との関係を見ると、いずれも「特に行っていない」企業では効果が得られにくい傾向が見られており、IT人材の確保や従業員のIT教育に対する取組が望まれる(第2-3-40図)。
 
第2-3-39図 従業員のIT能力向上のための取組
〜中小企業では、従業員のIT能力向上のための取組は、あまり行われていない〜
第2-3-39図 従業員のIT能力向上のための取組
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第2-3-40図 IT人材確保・IT能力向上のための取組と、IT活用の効果
〜特に取組を行っていない企業では、IT活用による効果が得られていない〜
第2-3-40図 IT人材確保・IT能力向上のための取組と、IT活用の効果
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 次に、企業内でITの活用を統括している責任者はどのようになっているのであろうか。中小企業においては、ITの活用を統括している実質的な責任者は「代表取締役」であるケースが多いが、「実質的な責任者はいない」ケースも見受けられる(第2-3-41図)。実質的な責任者が不在の場合はIT活用の効果を得られにくい傾向が見られることから、社内において責任のある人物がIT活用を推進する体制を構築することが期待される19(第2-3-42図)。

19 平成19年版経済財政白書第2章第3節ではCIO(情報システム担当統括役員・部長)の役割が指摘されているが、中小企業ではCIOはあまり存在していない(付注2-3-5)。

 
第2-3-41図 ITの活用を統括している実質的な責任者
〜小規模な企業では代表取締役が責任者である割合が高いが、一方で責任者が不在である割合も高い〜
第2-3-41図 ITの活用を統括している実質的な責任者
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第2-3-42図 ITの活用を統括している実質的な責任者と、IT活用の効果
〜実質的な責任者が不在の企業では、IT活用の効果が得られにくい〜
第2-3-42図 ITの活用を統括している実質的な責任者と、IT活用の効果
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4 情報システム会社の地方での不足
 中小企業ではIT人材を十分確保できておらず、また、大企業と比べて事業規模が小さいため、専任のIT人材を抱える負担が大きいと考えられる。そこで、中小企業がIT投資を行う上で情報サービス業者への外注を有効に活用することが期待される。
 情報サービス業20の従業者数及び年間売上高の推移を見てみると、ITの広まりに伴い、年間売上高が増加傾向にある(第2-3-43図)。一方で、情報サービス業の事業所数、従業者数、年間売上高を地域別に見ると、東京都に立地している情報サービス事業者の事業所が非常に多いことが分かる(第2-3-44図)。第2-3-45図は、中小企業に対して、各地域における情報システム会社の充足度を確認したものであるが、東京都に所在する企業では、他の地域の企業と比べて情報システム会社に対する充足感が強い。情報システム会社が東京にやや偏在し、地方圏では情報サービスの提供が不足していることが懸念される。

20 ここでの情報サービス業とは、日本標準産業分類による小分類391「ソフトウェア業」及び小分類392「情報処理・提供サービス業」に属する業務を営む事業所を指す。

 
第2-3-43図 情報サービス業の従業者数及び年間売上高の推移
〜年間売上高は増加傾向にある〜
第2-3-43図 情報サービス業の従業者数及び年間売上高の推移
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第2-3-44図 情報サービス業の地域別事業所数・従業者数・年間売上高
〜情報サービス業は東京に多い〜
第2-3-44図 情報サービス業の地域別事業所数・従業者数・年間売上高
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第2-3-45図 地域における情報システム会社の充足度
〜東京では、他の地域に比べて充足度が高い〜
第2-3-45図 地域における情報システム会社の充足度
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 情報システム会社に対する企業の満足度を見ると、情報システム会社を活用している企業の半数以上は、情報システム会社に対して満足しており、その理由として「保守・運用における対応」を挙げている(第2-3-46図、第2-3-47図)。一方、情報システム会社に満足していない理由としては「企画・提案力」が挙げられている。情報システム会社の充足度と満足度との関係を見ると、地域における情報システム会社が十分に存在していると考えている企業では、情報システム会社に対する満足度が高くなっている(第2-3-48図)。情報システム会社が多い地域においては、自社に適したシステム会社を選ぶことができるが、情報システム会社そのものが不足している地域では、自社に適したシステム会社を見つけることが難しいことが考えられる。また、先の事例2-3-7のとおり、企業が情報システム会社を評価することが難しい一面もある。情報システム会社に満足している中小企業ではIT活用の効果を得ている傾向が見られており、情報システム会社が中小企業におけるITの有効活用に向けて果たす役割は非常に重要であると言えよう(第2-3-49図、事例2-3-8)。
 
第2-3-46図 情報システム会社に対する満足度
〜情報システム会社を活用している企業の半数以上は、情報システム会社に満足している〜
第2-3-46図 情報システム会社に対する満足度
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第2-3-47図 情報システム会社に満足している理由、満足していない理由
〜企画・提案力や業務分析力には、あまり満足していない〜
第2-3-47図 情報システム会社に満足している理由、満足していない理由
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第2-3-48図 地域における情報システム会社の充足度と、満足度
〜情報システム会社が十分に存在していると考えている企業では、情報システム会社に対する満足度も高い〜
第2-3-48図 地域における情報システム会社の充足度と、満足度
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第2-3-49図 情報システム会社に対する満足度と、IT活用の効果
〜情報システム会社に対する満足度が高い企業ほど、期待した効果が得られている〜
第2-3-49図 情報システム会社に対する満足度と、IT活用の効果
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事例2-3-8 社員のコンサルティング能力の向上に取り組む情報システム会社

 山形県山形市のサンシステム開発株式会社(従業員7名)は、会計システムの構築を得意とする情報システム会社である。同社では、社員のコンサルティング能力の向上に力を注いでいる。
 情報システム会社と顧客である中小企業は、お互いの業務内容をよく理解していないために意思の疎通を十分に図ることができず、結果として顧客が満足できる情報システムの構築ができないケースがある。中小企業では、情報システム会社が自社の業務をよく知らないことに不満を持っている場合も少なくない。同社では、社員のコンサルティング能力を高めて、顧客である中小企業の事業内容や業界動向の理解に努め、提案力を高めている。前社長の時代には、社員が前社長を顧客と見立てて提案を行うロールプレイングを毎日実施していた。前社長は会計事務所の出身者であったため、いろいろな業界に通じており、こうした取組を通じて社員のレベル向上を図っていた。前社長の退任により、現在はロールプレイングこそ実施していないものの、これまでのロールプレイングの実施により鍛えられた現社長や社員が、新しい社員をOJTにより教育している。ロールプレイングの取組を20年間も続けていたので、顧客の業種について勉強することが同社の社風として根付いている。顧客への提案に際しては、こうした知識を背景に、システム構築の目標と達成される改善策を具体的に提示することとしている。また、システムエンジニアに対しては簿記3級の取得を義務付けていることに加え、入社当初は同社の過去の決算書を使った簿記の勉強もさせている。
 中小企業ではIT人材が十分に確保されていないが、情報サービス事業者においても十分な従業員を確保できておらず、従業員が不足していると感じている企業は全体の半数近くに達している21。こうした厳しい環境下、中小企業の経営に占めるIT活用の位置付けが高まっており、中小企業の経営と情報システムの両面に通じた人材が求められている。同社では、こうした時代の要請に応えるべく、今後とも高いコンサルティング能力を有する人材の育成に取り組んでいきたいとしている。

21 付注2-3-6参照。

5 IT活用の効果を高める組織のあり方
 第3節では、IT活用の効果を得るためには業務プロセスの見直しを行うことが重要であることを見たが、更にIT活用の効果を高めるためには、企業はどのような組織体制を整備することが望ましいのであろうか。
 第2-3-50図は、ITを活用している中小企業が社内の組織体制に関して実施した取組を示したものである。これによると、意思決定権限、意思決定に関与する人数、組織階層のいずれも「特に変更せず」とした企業が大半である。意思決定権限の集中化や組織階層のフラット化を進めている企業も存在するが、情報システムの導入に伴って組織体制まで見直している中小企業は多くないようである。
 
第2-3-50図 社内の組織体制に関して実施したこと
〜社内体制は、特に変更していない企業が多い〜
第2-3-50図 社内の組織体制に関して実施したこと
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 次に、IT活用の効果を高めるためには、自社の意思決定権限を経営陣等の上層部に集中化させた方がよいのであろうか。逆に意思決定権限を分散化させた方が良いのであろうか。第2-3-51図は、中小企業における意思決定権限の見直しとIT活用の効果の関係を見たものであるが、意思決定権限を集中化した場合のIT活用の効果と、意思決定権限を分散化した場合のIT活用の効果には大きな相違が見られなかった。さらに、第2-3-52図は、意思決定の迅速化をIT活用の効果として期待している中小企業に対して、組織の見直しと意思決定の迅速化に関する効果との関係を聞いたものである。一般的には意思決定に関与する人数を削減したり、組織階層をフラット化することが企業の意思決定を迅速化させると思われるが、同図によると、ITの導入に伴って意思決定に関与する人数を増やしたり、組織を多層化した場合でも、特に組織体制を変更しなかった場合と比べて、意思決定の迅速化に係る効果が得られていることが分かる。
 
第2-3-51図 意思決定権限の見直しと、IT活用の効果
〜意思決定権限の集中化、分散化では、IT活用の効果に大きな相違はない〜
第2-3-51図 意思決定権限の見直しと、IT活用の効果
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第2-3-52図 意思決定に関与する人数及び組織階層の変更と、意思決定の迅速化に関するIT活用の効果
〜意思決定に関与する人数を増加させている企業でも、特に変更を行わなかった企業に比べて、意思決定の迅速化に関する効果を得ている〜
第2-3-52図 意思決定に関与する人数及び組織階層の変更と、意思決定の迅速化に関するIT活用の効果
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 組織における意思決定は、意思決定に必要な情報を収集・分析し、こうした情報を総合的に勘案して判断を行うものであることから、情報が集まる箇所にて意思決定することが望ましく、経営陣のレベルで意思決定すべきなのか、現場レベルで意思決定すべきなのか、一概に言えないということであろう。ただし、IT導入に伴って自社の組織体制を多層化するにせよ、フラット化するにせよ、IT活用の効果を高めるためには組織体制やそれに連動する業務プロセスの見直しを検討することが重要であることには変わりがないと言えよう。

 第3章 中小企業によるITの活用

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