第3部<テーマ分析[2]>少子高齢化・人口減少社会における中小企業 

第1節 中心市街地の人口と経済活力をめぐる現状

 我が国は、戦後一貫して人口増加が続き、郊外へのスプロール化が進展してきた。人口集中地区(DID2)の変化でその状況を見ると、1970〜2000年の30年間でDIDの面積は約2倍に拡大している(第3-4-1図)。地区別の人口動態を見ると、中心市街地の人口減少と郊外3の人口増加により、人口集中地区の面積が「薄く広く」拡大してきたことがうかがえる(第3-4-2図)。

2 人口密度4,000人/km2以上の地区が隣接し、その地区全体の人口が5,000人以上の地区をいう。ここで、地区とは国勢調査における「基本単位区」を指す。「基本単位区」は一般に、市区町村の町丁・字等を更に細分した街区となっている。
3 都市圏単位で見た「中心市街地」以外のエリアを指す。


 
第3-4-1図 人口集中地区の推移
〜人口集中地区の面積は30年間で約2倍に拡大〜

第3-4-1図 人口集中地区の推移
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第3-4-2図 中心市街地と郊外の人口増減
〜人口は中心市街地で減少、郊外で増加〜

第3-4-2図 中心市街地と郊外の人口増減
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 こうした郊外化の傾向は、「商業統計表」を用いて立地環境別4の商店数・商業販売額の変化を見ても裏付けられる。1997年〜2004年の間において、商店数では、都市圏・地方圏とも、中心市街地など商業集積地区を除き、すべての場所で500m2以上の店舗数が伸びている(第3-4-3図)。販売額で見ても同様の傾向が見られるが、特に大都市圏の「工業地区」「その他地区」、地方圏の「その他地区」における3000m2以上の大型店舗の増加率が顕著であった(第3-4-4図)。

4 付注3-4-1参照。


 
第3-4-3図 立地環境別・売場面積別の商店数の増加率(1997/2004年比)
〜商業地区を除き、500m2以上の規模の商店数が増加〜

第3-4-3図 立地環境別・売場面積別の商店数の増加率(1997/2004年比)
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第3-4-4図 立地環境別・売場面積別の商業販売額の増加率(1997/2004年比)
〜工業地区・その他地区における3,000m2以上の規模の大型店販売額の増加が顕著〜

第3-4-4図 立地環境別・売場面積別の商業販売額の増加率(1997/2004年比)
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 特に、「工業地区」「その他地区」において大型店舗が急増した要因としては、まとまった土地を確保するために製造業の海外進出・統合再編などによる工場跡地の活用、農地の転用等がなされたことなどが挙げられる。
 一方、中心市街地を含む商業集積地区では、「ロードサイド型」と「その他」以外のほとんどの場所において販売額が減少している。特に地方圏における販売額の減少が顕著であり、地方圏の中心市街地がとりわけ厳しい状況にあることがうかがえる。
 次に、店舗規模別の商店数・販売額を見てみると、大都市圏でも地方圏でも、店舗数では500〜1,500m2の増加が著しく、売上高では500〜1,500m2、1,500〜3,000m2の増加が著しいことが分かる。特に地方圏において、1,500〜3,000m2の店舗における販売額の増加が顕著であり、一般的にイメージする「ロードサイドビジネス」の好況ぶりがうかがえよう。一方、3,000m2以上の超大型店は一般に思われているほど伸びておらず、特に大都市圏では販売額が減少していることが分かる(第3-4-5図)。大都市圏の減少要因としては、駅前や市街地に多く立地していた百貨店や総合スーパー(GMS)等の大手流通資本の破綻や経営不振などの影響もあると考えられる5

5 付注3-4-2「百貨店、総合スーパーの販売額の推移」参照。

 
第3-4-5図 規模別商店数・商業販売額の推移
〜500〜3,000m2未満の店舗における伸びが著しい。3,000m2以上はそれほど伸びていない〜

第3-4-5図 規模別商店数・商業販売額の推移
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 こうした状況は前述の「中間報告」においても指摘されているが、商業者間の競合が、旧来の「大規模事業者と中小小売業者との競合の構図」から「中心市街地と郊外という立地場所による競合」へと変化してきていることを示している。

 ここで次に、中心市街地の商業集積としての活力という面にフォーカスを当ててみよう。
 先に述べたとおり、人口規模は中心市街地で減少し郊外で増加している傾向があるのだが、ここで、「人口規模から見て、商店の販売額がさらに落ち込んでいないかどうか」という観点からデータを見てみたい。
 第3-4-6図を見てみると、中心市街地では、単位人口当たりの販売額が増加している地域は155都市圏のうち8箇所しかなかったのに対し、郊外では36箇所もあったことが分かる。小売業の販売額は1997〜2002年の間に全国平均で1割以上(10.3%)も減少しているので6、中心市街地でも郊外でも、多くの都市において人口規模に比べ販売額がより減少しているが、第3-4-6図の分布状況を見れば、中心市街地が全般的に空洞化し、売上が郊外に流出している状況は明らかだろう。

6 中小企業白書(2005年版)第2-3-24図参照。


 
第3-4-6図 地域別の人口増減と販売額の増減
〜中心市街地の空洞化が進んでいる〜

第3-4-6図 地域別の人口増減と販売額の増減
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 より具体的に、人口が中心市街地から郊外に流出している傾向の強い、甲府市周辺と秋田市周辺の2つの地域を取り上げて、「商業統計表」の販売額データを町丁字レベルの地区ごとに「日用品」と「買回り品」に分けて集計してみたところ、以下のようなことが観察された7

7 付注3-4-3「(1)甲府市周辺及び(2)秋田市周辺の町丁字別人口及び小売販売額の推移」参照。


〔1〕日用品(飲食料品)
 郊外の人口が流入した地区で、販売額もそれにつれて増加している様子が見てとれた。全般的に、地区別の人口密度と販売額が比例傾向にあった。
〔2〕買回り品(織物・家具・自動車)
 1997年時点では、郊外の幹線道路沿いに人口比で販売額の高い地区(周辺から集客していた地区)が広がっていたが、2002年時点では、郊外の幹線道路沿いにおいて人口比で販売額の大きな地区は軒並み減少していた。他方、中心市街地を含めて販売額が回復している地区は少なく、幹線道路沿いの店舗が撤退した後、まち全体の販売額が大幅に減少し、他の遠方地域に流出していることが推測された。
 ここから推定できることは、商業店舗の立地を支援するにせよ、規制するにせよ、日用品と買回り品には異なったアプローチが必要ではないかということであろう。日用品店舗は、まちに人口を定着させるために必要な都市機能であり、買回り品店舗は、まちの経済活力を保つために必要な都市機能だと考えられるのである。

 第1節 中小市街地の人口と経済活力をめぐる現状

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