第3部<テーマ分析[2]>少子高齢化・人口減少社会における中小企業 

第2節 若年者雇用の不安定化の概況

 従来、若年者は新規学卒者を大企業が中心となって採用し、従業員の入社後のキャリア形成は終身雇用・年功序列といった日本的雇用慣行をベースに行われてきた。しかしながら、近年、学卒後すぐに職に就かない者や就職してもすぐに離職してしまう者の増加により、若年者失業率の上昇、フリーター・ニートの増加といった、若年層の雇用問題が深刻化しており、フリーターを含めた若年者の活用について真剣に考える必要がある。本節では、若年者雇用の不安定化の概況について詳述する。

1.若年者の失業・雇用の状況
 まず、若年者の失業の現状から見ていこう。総務省「労働力調査」より若年者の完全失業率10の推移をみると、20代・30代前半とも1990年代から徐々に上昇しており、2004年では20代で7.5%、30〜34歳で5.0%となっている(第3-3-2図)。近年は若干の改善傾向が見られるものの、若年者にとっては依然として厳しい雇用情勢が続いている。

10 労働力人口に占める完全失業者の割合をいう。


 
第3-3-2図 若年者完全失業率の推移
〜若年者の完全失業率は依然として高い水準にある〜

第3-3-2図 若年者完全失業率の推移
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 次にフリーター11数の推移を見てみよう。1996年に約100万人であったフリーターは2004年では約214万人となり、倍以上となっている。また、フリーターの年齢については、20代のみならず、30〜34歳の層も年々増加してきており、2003年には初めて30万人を突破した(第3-3-4図)。厚生労働省「雇用管理調査」(2004年)によれば、フリーターを正社員として採用する場合の年齢の上限について、約半数の企業が29歳以下と回答しており、雇用の安定化という観点からみれば、フリーター数の増加のみならずその高年齢化も深刻な問題として捉えなければならない。

11 フリーターの定義には様々なものがあるが、ここでは「15〜34歳、卒業者に限定した者」を母集団とし、〔1〕現在就業している者は勤め先における呼称が「パート」または「アルバイト」である者、〔2〕現在求職中の者(完全失業者)については、「アルバイト・パート」の仕事を希望する者、〔3〕求職中でもなく、家事も通学もしていない者については、就業を希望し、「パート・アルバイト」の仕事を志望する者とした。また、女性については〔1〕〜〔3〕の条件に加えて「未婚の者」に限定した(第3-3-3図参照)。


 
第3-3-3図 若年者の概念図

第3-3-3図 若年者の概念図

 
第3-3-4図 年齢別フリーター数の推移
〜10代・20代だけでなく、30代のフリーターも増加している〜

第3-3-4図 年齢別フリーター数の推移
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 また、最近では若年無業者(ニート・NEET)と呼ばれる者が増加している。これは英国における造語であり「Not in Education, Employment or Training」の頭文字をとったものである。定義により多少の違いはあるが、おおむね求職活動を行っておらず職業訓練も受けていない若者を指し、厚生労働省の定義によれば、ニート数は2004年で約64万人となっている12

12 2005年版労働経済白書では、いわゆるニートに近い概念として、「若年無業者」を15〜34歳に限定し、非労働力人口のうち家事も通学もしていない者として、2003年64万人、2004年も同じ64万人と発表した。「若年無業者」は、4つの「非」で定義されている。すなわち、非就業、非求職、非通学、非家事の者である(最初の2つで非労働力人口となる)。「若年無業者」は、就職意思などの点で厳密にフリーターと相互補完的な定義ではないと考えられるが、ほぼニートに該当すると捉えられている(第3-3-3図参照)。


2 若年者雇用の不安定化が社会構造に与えるインパクト
(1)一層の少子化の進展
 雇用・収入が不安定な若年者の中には、親に経済面・生活面で依存している者も多く存在している。このような若年者の既婚率は低く、子どもを育てる経済的余力も少ない。内閣府の調査13では、若年者の未婚の原因として挙げられている事項のうち、「金銭的に余裕がないから」と回答した者の割合は正社員よりもパート・アルバイトの方が高くなっている(第3-3-5図)。

13 国民生活白書(2003年版)


 
第3-3-5図 金銭面を理由として結婚しない人の割合
〜パート・アルバイトの方が金銭面を理由として結婚しない人の割合が高い〜

第3-3-5図 金銭面を理由として結婚しない人の割合
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 経済力に不安を抱える若年者が増加することにより、若年者に占める未婚者の割合が増えて少子化を加速させることとなるであろう14

14 樋口・酒井(2005)は「日本労働研究雑誌(通巻535号)」の中で、「若年時の就業経験は単にその後の就業状態や所得に大きなインパクトを与えているだけではなく、結婚や出産行動にも影響を与えている。しかもその影響の程度は、以前にも増して90年代以降拡大している。」と述べている。


(2)雇用形態の違いによる所得の差の拡大
 雇用形態が安定している者とそうでない者の間には、所得に明確な差が出ている。第3-3-6図は両者の20代の年収を比較したものである。20〜24歳の層では、年収199万円以下の者が正社員では25.0%であるのに対して、非正社員では85.3%と圧倒的な割合となっている。年齢を重ねて25〜29歳のカテゴリーに入ると、正社員は57.2%と過半数が年収300万円以上となるが、非正社員は年収300万円以上の者は5.0%しかおらず、77.3%は依然として年収が199万円以下のままである。以上のことから、雇用形態の違いによる所得の差は年齢が高くなるほど開いていくと言える。

 
第3-3-6図 非正社員と正社員の年収比較
〜非正社員と正社員では年収に大きな格差が生じている〜

第3-3-6図 非正社員と正社員の年収比較
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 年収と有配偶者率の間には密接な関係があり、年収が低くなるほど配偶者のいる割合が低くなっている(第3-3-7図〔1〕)15。したがって、低所得であるフリーターが増加することにより、未婚率の上昇や出生率の低下に拍車をかけることとなろう。

15 国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集」(2005年)によると、我が国の婚姻外で産まれる子ども(婚外子)の出生総数に占める割合は1.9%(2003年時点)と非常に低い水準にあり、配偶者のいる割合と子どものいる割合についても密接な関係があるものと考えられる。年収別の「配偶者及び子ども」がいる割合(第3-3-7図〔2〕)は、この事実を踏まえて集計したものである。


 
第3-3-7図 年収・年齢別の配偶者・子どもがいる者の割合
〜年収が低い者ほど、配偶者・子どものいる割合が低い〜

第3-3-7図 年収・年齢別の配偶者・子どもがいる者の割合
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3.若年者雇用の不安定化の背景
(1)新規学卒者の就労意識の変化
 若年者雇用の不安定化の背景として、まず就職に向けた行動をとっていない若年者(ニート・NEET)の増加が挙げられる。
 いわゆるニートの中には、そもそも求職の意思を有していない者と、求職の意思はありながら具体的な行動を取っていない者(すなわち失業者・フリーターには入らないが、それに近いグループ)が混在しており、一律に論じられないとの指摘もあるが、少なくとも求職の意思のない者については、採用する立場の中小企業側から問題を解決することには限界もあろう。
 それに対して、求職の意思を持っているグループに対しては、フリーターとほぼ同様な対応が可能であると思われる。

(2)非正社員から正社員への転換の困難性
 次に、雇用形態が不安定な者の増加が挙げられる。パート・アルバイトを中心とするフリーターがその代表例だが、現在フリーターである者の意識について見ると、「定職につきたい」と回答した者の割合は、20〜24歳で84.1%、25〜29歳で81.0.%、30〜34歳で70.6%となっている。また、男性のみでは「定職につきたい」とする者の割合は90.9%、「フリーターを続けたい」者はわずか8.0%しかいないという結果となっている(第3-3-8図)。さらに、定職につくスタイルについては、73.6%の若者が「会社などで正社員として働く」ことを望んでおり(第3-3-9図)、現在のフリーターはずっとフリーターのままでいるのではなく正社員として働きたいと考えている。

 
第3-3-8図 フリーターの職業観
〜フリーターの大多数は定職につくことを希望している〜

第3-3-8図 フリーターの職業観
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第3-3-9図 定職につくスタイル
〜フリーターは正社員として働くことを希望している〜

第3-3-9図 定職につくスタイル
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 しかし、学卒後すぐの就業形態がフリーターであった者の半数以上が現在もフリーターであり、フリーターから正社員への障壁が存在していると考えられる(第3-3-10図)。

 
第3-3-10図 新卒時にフリーターだった人の現在の就業形態
〜新卒時にフリーターだった人の半数以上がその後もフリーター〜

第3-3-10図 新卒時にフリーターだった人の現在の就業形態
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(3)正社員から非正社員への転換の増加
 雇用形態が不安定なフリーター、特に年齢の高いフリーター増加の背景には、学校卒業後にそのままフリーターとなった者のみならず、正社員等を経験しているフリーターの増加がある。フリーターになる前の経験について見ると、いったん正社員等として就職してからフリーターになった者が3分の1を超えている(第3-3-11図)。

 
第3-3-11図 フリーターになる前の経験
〜いったん正社員として就職した後にフリーターになる者が3分の1を超えている〜

第3-3-11図 フリーターになる前の経験
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 若年期にフリーターとして働くことは必ずしも悪いことではないが、自ら望んでフリーターとなっている若年者が少数であることを考えると、現在正社員として勤務している若年者や新規学卒者が意に反してフリーターとなることを防止するとともに、たとえフリーターとなっても、その状況が将来にわたって固定化しないようにする取組も肝要であると言える。
 フリーターは現在200万人を超えており、10年前と比較して約2倍となっている。フリーターの増加による若年者の雇用・収入の不安定化は、社会的にみても、若年者自身にとってもマイナスの側面が大きい。したがって、これを抑えることが急務となっている。本節では、フリーターの就業に対する意識・企業のフリーターに対する意識からフリーターの増加要因を検証し、フリーター減少のための解決策を探っていく。

 第2節 若年者雇用の不安定化の概況

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