第3部<テーマ分析[2]>少子高齢化・人口減少社会における中小企業 

第4節 従業員の高齢化と中小企業が受ける影響

 ここまでは、高齢化していく中小企業経営者の事業承継問題について触れてきた。経営者だけでなく、従業員も高齢化は進みつつあり、主力となる若年層と高齢層のアンバランス化が危惧されている。以下では、雇用者の高齢化が中小企業に対してどのような影響を与え、また、中小企業がそれに対してどのような対策を講じているかを考察していく。
 総務省「就業構造基本調査」(2002年)によれば、高齢層19になるほど、従業員規模の小さい企業に勤務している割合が高いことが分かる。54歳までは、同年齢層の全従業員中、従業員数299名以下の企業に従事する割合はおおむね6割程度であるのに対し、55歳以上では72.6%が従業員数299名以下の企業に勤務している(第3-2-33図)20。また、従業員299名以下の中小企業において、年齢層別および業種別に55歳以上の高齢層の雇用割合を確認すると、55〜59歳では製造業における従業員割合が高いことが見受けられる21。近年、製造業は開業率が低くなっており、比較的企業年齢の高い老舗企業が多くなっていることが主な要因であろう。一方、小売業・卸売業といった業種は、近年においても開業率と廃業率の差があまりなく、企業の新陳代謝が行われているため若年層世代の割合が比較的多いことが見てとれる(第3-2-34図)。

19 本調査では、55歳以上を高齢層として定義した。以下、高齢層の定義は同じである。
20 ここでの従業員とは、雇用者である者のうち、常雇(一般常用雇用者)として定義している。
21 なお、60代以上ではサービス業の従業員割合が比較的高いことが確認できる。


 
第3-2-33図 従業員規模別一般常用雇用者割合
〜年齢が高齢層になるほど、従業員規模が小さい企業で従事している割合が高い〜

第3-2-33図 従業員規模別一般常用雇用者割合
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第3-2-34図 産業・年齢別一般常用雇用者割合(従業者数299名以下企業)
〜従業員数299名以下の企業では、製造業に占める高齢層の割合が高い〜

第3-2-34図 産業・年齢別一般常用雇用者割合(従業者数299名以下企業)
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 第3-2-35図は中小企業の定年退職年齢の分布であるが、相当数の企業が60歳付近における定年退職制度を設けている。このことから、中小企業においても、いわゆる団塊世代が2007年前後に一斉に退職時期を迎え、彼らの大量退職が企業に様々な影響を与えること(いわゆる2007年問題)が予測される。

 
第3-2-35図 中小企業の定年退職年齢
〜60歳付近が3分の2〜

第3-2-35図 中小企業の定年退職年齢
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 一般的に、2007年問題が企業に与える影響として、技能承継の問題や退職金負担増により企業財務が圧迫されるなどのマイナス面と、企業の人件費削減や会社内の世代交代の機会となるなどのプラス面が論じられている。その中でも、どちらかといえばマイナス面がクローズアップされることが多いが、実際、中小企業はどう感じているのであろうか。

 「承継アンケート」において、高齢層従業員の退職によって「影響がある」「少し影響がある」とした企業の割合は54.8%あるが、一方で「あまり影響を受けない」「影響がない」とする企業も35.8%あることと比較すると、必ずしも中小企業の大部分が影響を受けるというわけではない(第3-2-36図)。また、第3-2-37図によれば、団塊世代の退職が企業に与える影響はプラスとマイナスの「どちらとも言えない」と回答する企業が業種を問わず大多数を占めているほか、プラスと回答した企業もマイナスと回答した企業と同程度あることが見てとれる。全体的に見て、「2007年問題」は、特に中小企業経営にとってプラスに働くともマイナスに働くとも言えなさそうである。

 
第3-2-36図 高齢層従業員が退職時期を迎えることによる影響(業種別)
〜高齢層の退職により、影響を受ける企業は全体の半数強〜

第3-2-36図 高齢層従業員が退職時期を迎えることによる影響(業種別)
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第3-2-37図 団塊世代の退職がもたらすプラスとマイナスの影響
〜団塊世代の退職が企業に与える影響は、全体的にはプラスマイナスどちらとも言えない〜

第3-2-37図 団塊世代の退職がもたらすプラスとマイナスの影響
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 具体的に、プラス面の影響の内容を「承継アンケート」結果から確認していこう。高齢層の退職によって中小企業が最もメリットがあると考えていることは、「高齢層従業員の高い人件費削減」が40.9%、「若年層の雇用確保による世代交代が可能」が30.5%を占め、「高齢層の経験に頼った仕事をIT等で高度化する機会となる」が8.1%、「プラスの影響はない」が19.4%であった。高齢層従業員の退職については、高齢層の保有する技能が失われるというマイナス面に着目しがちであるが、新規の人員増が一般に困難な中小企業にとっては、就業ポストに空席が生じることにより企業内の新陳代謝が起き、若年層の雇用拡大につながる面もある。つまり、世代交代により、若者向けポストの広がりやIT化など、ある種の業務革新が起こる可能性があることも軽視できない面であろう。(第3-2-38図)

 
第3-2-38図 高齢層従業員退職によるプラスの影響(業種別)
〜高齢層の退職によるプラスの影響は、人件費削減と世代交代が挙げられる〜

第3-2-38図 高齢層従業員退職によるプラスの影響(業種別)
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 逆に、高齢層の退職によるマイナス面としては、「退職者の能力が承継されない」ことを挙げる企業が60.6%を占めた。「退職金等の一時支払いが増え、会社の財務を圧迫する」の17.7%や、「退職する従業員の高度な職業能力が他社に流出する懸念がある」の3.4%を大きく上回っている。また、「マイナスの影響はない」としている企業も15.3%あった。
 高齢層従業員の退職によって、経営面に全体としてプラス面とマイナス面のどちらが大きいということはないが、マイナス面としては、どの業種でも「技能承継」22を挙げる回答が大半を占めている。技能承継問題は、どの業種においても全般的に、経営者が潜在的に抱えている問題点だと言えよう(第3-2-39図)。

22 一般に「技能」とはモノ作りの現場で指摘されている能力であるが、本調査は業種特定を行っていないため、「職業能力」として調査を行った。


 
第3-2-39図 高齢層従業員退職によるマイナスの影響
〜高齢層従業員退職による業種別特性は特段見られないが、どの業種でも能力承継が主に問題視されている点である〜

第3-2-39図 高齢層従業員退職によるマイナスの影響
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 そのことは、職種別に「技能承継の問題が起こる危惧」についての回答を集計した結果からも確認できる。すなわち、「研究職・エンジニア」や「組織管理職」など、一般的に高度なイメージのある職種については承継に対する困難を感じている回答が多く、また、スキルとして属人的な経験やコツ・ノウハウが効いてきそうな職種としても、モノ作り現場を含む「労務・作業職」だけでなく、商業・サービス業等を含む「営業・販売職」においても、一定の企業がうまく承継できていないと感じている。総じて言えば、技能承継問題が起こる危惧について、特に特定の業種や特定の現場で顕著な特徴が表れているわけではないと言えよう23(第3-2-40図)。

23 職種別に技能承継の危惧を調査した類似の調査として、(独)労働政策研究・研修機構「人口減少社会における人事戦略と職業意識に関する調査」(2004年12月)がある。同調査においては、「技能工・生産工程」の職種に技能承継を危惧する回答が多く集まっているように見える。しかしながら、回答者の内訳を業種別に確認してみると、技能承継を危惧する職種として「技能工・生産工程」を選択した者は製造業に偏っており、かつ、製造業の回答のほとんどが、この反応しやすい1つの選択肢に集中したことが分かる。他方、それ以外の選択肢は特定業種に反応度が高いものとなっておらず、実際、どの選択肢も各業種で回答が分散していることが見てとれる(付注3-2-6)。


 
第3-2-40図 技能承継の問題が起こる危惧の有無(職種別)
〜特定の職場で顕著な特徴が表れる訳ではない〜

第3-2-40図 技能承継の問題がおこる危惧の有無(職種別)
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 第4節 従業員の高齢化と中小企業が受ける影響

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