第3部<テーマ分析[2]>少子高齢化・人口減少社会における中小企業 

第1節 中小企業の後継者不在が経済に与える影響

 第1章の第3-1-12図で見てきたように、中小企業における代表者の平均年齢は年々高まる傾向にある。三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)が行った「「事業承継」「職業能力承継」アンケート調査 」1(以下「承継アンケート」という)によれば、経営者が引退したいとする年齢は、平均64.5歳である。55歳以上の経営者では65.1歳、55歳未満の経営者では61.9歳とそれほど大きな差は見られず、概ね60歳代が中小企業経営者の考える引退年齢であることが確認できる。一方で、第1章で述べたとおり、2004年の法人企業代表者の平均年齢は約58歳6ヶ月となっており、経営者が引退したい平均年齢(64.5歳)との差は数年ほどしかない。高度成長期に20歳代から30歳代で大量に創業した経営者世代が、現在一斉に引退時期へさしかかっていることが推定される。

1 2005年12月、業歴が10年以上、従業員数10名以上の法人を中心とした非上場企業15,000社を対象に実施したアンケート調査。回収率13.2%。


 一方で、事業からの引退を決断することは決して容易なことではなく、うまく承継できず、廃業に追い込まれる事例も見受けられる。
 「承継アンケート」によれば、経営者が55歳以上の中小企業の中で、回答者全体を100%としたとき、「適当な後継者がいない」ために「自分の代で廃業したい」と回答した企業のうち財務的には経営継続可能(債務超過以外)なものが約0.6%あった(第3-2-1図2)。また、現時点で後継者が決まっていない企業のうち、最終的に後継者が決まらなかったら、(事業売却等をせず)「廃業する」と回答した企業の中で財務的には経営継続可能(債務超過以外)なものも約3.8%あった。

2 本章の分析のうち、第3-2-1図のみは全体の概観を示すために無回答者を含んでいるが、同図以外は無回答者を含まない。


 
第3-2-1図 55歳以上経営者の事業承継に対する検討内容

第3-2-1図 55歳以上経営者の事業承継に対する検討内容

 すなわち、現時点で経営者が55歳以上となっている中小企業全体のうち、0.6%〜4.4%3の企業は、財務的には経営継続可能であるにもかかわらず、最終的に後継者がいないために廃業する可能性があることが示唆されるのである。

3 「現時点で後継者が決まっていない」企業で債務超過以外のもののうち、すべての企業が最終的に後継者を決められなかった場合を悲観ケース、逆にすべての企業が後継者を決められた場合を楽観ケースとしてその幅を取っている。


 第1部2章で述べたとおり、総務省「事業所・企業統計調査」(2004年)によれば、中小企業の年間平均創業数は167,681社である一方、年間平均廃業数は289,731社に上る。すなわち、年間122,050社(年率約2.8%4)ずつ企業数は減少していることになる。

4 年間減少企業数122,050社/中小企業数4,326,342社(総務省「事業所・企業統計調査」(2004年):付属統計資料1表参照)


 年間約29万社の廃業企業のうち、どのくらいの割合が後継者不足による廃業であるかを推計したい。
 「承継アンケート」によれば、現時点で「自分の代で廃業したい」と回答した企業のうち、24.4%は「適切な候補者が見当たらない」ことが第一の理由であると回答している(第3-2-2図5)。この数値を前提とすれば、年間廃業社数約29万社のうち、約7万社6は「後継者がいない」ことを理由とする廃業であると推定され、これだけの雇用が完全に喪失された場合を仮定すると、失われる従業員の雇用は毎年約20万人〜35万人に上ると推定される7。

5 従業員規模別のグラフについては付注3-2-1を参照。
6 年間平均廃業企業数289,731社×後継者がいないために廃業を検討する企業割合24.4%=70,694社。
7 算出方法については、付注3-2-1を参照。


 
第3-2-2図 自分の代で廃業を検討する理由
〜自分の代で廃業を検討している企業のうち、24.4%は後継者不在を第一の理由としている〜

第3-2-2図 自分の代で廃業を検討する理由
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 以下、中小企業経営者の高齢化が進む中、中小企業経営者が事業承継についてどのように考えているかを詳しく検証していく。特に事業承継の方法として、子息・子女等の親族への承継のほか、M&A等による「経営資源の次世代への承継」という観点からも分析を深めていきたい。

 第1節 中小企業の後継者不在が経済に与える影響

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