第1部 2005年度における中小企業の動向 

第2章 中小企業の開廃業・倒産・事業再生の動向

第1節 開廃業の動向

1.事業所・企業の開廃業
(1)2001年から2004年にかけての概況
 総務省「事業所・企業統計調査」をもとに、最近の我が国事業所・企業の開廃業の動向を見てみよう。
 我が国の開業率は、1970年代から1990年代半ばまで長期にわたり低下傾向にあったが、近年は事業所数ベースで見ても、企業数ベースで見ても、開業率は下げ止まりから上昇に転じつつあることが分かる(第1-2-2図〔1〕〔2〕)。

 
第1-2-2図 開廃業率の推移(非一次産業、年平均)
〜開業率は上昇する傾向を見せつつあるが、廃業率も上昇傾向にある〜

第1-2-2図 開廃業率の推移(非一次産業、年平均)
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 1990年代の半ばまで開業率が長期的に低下した原因は、個人企業の開業率低下によるところが大きかった。また、その要因として、若年者・中年者の「リスク回避志向」が影響していることが分析されている1。こうした中で、今回公表された最新のデータによれば、開業率はわずかであるが上昇に転じており、明るい動きが見えてきたと言えよう。
 次に廃業率の推移を見てみたい。我が国の廃業率は、近年は上昇傾向にあり、中でも2001年から2004年の期間においては企業数ベースで年平均6.1%と過去最高の水準となっている。この結果、開業率がわずかに上向いていることを差し引いても、廃業率が開業率を大きく上回り、その差は事業所数ベースで2.2%、企業数ベースでは2.6%と更に拡大し、この統計が取り始められた1947年以降いずれも最大となっている。

1 中小企業白書(2005年版)240ページ


 こうした開廃業の動向を実際の企業数ベースでも見てみよう。開業企業数は1994年から1996年に年平均14.3万社まで減少した後増加に転じ、2001年から2004年には年平均16.8万社となっている。一方、廃業企業数は同じ期間で年平均17.2万社から29.0万社に増加しており、2001年から2004年をとるとその差は実に12.2万社にのぼっている(第1-2-1図)。この結果、1986年のピーク時には535.1万社を数えた我が国企業数(全企業数ベース)も、2004年では433.8万社にまで減少している。同じく1986年から2004年の間に、中小企業数も532.7万社から432.6万社まで減少した。

 
第1-2-1図 企業数(実数)による開廃業の推移(非一次産業)
〜年平均開廃業企業数の差は、2001〜2004年にかけて12.2万社にまで拡大。1986年のピーク時には532.7万社を数えた中小企業数も、2004年では432.6万社にまで減少している〜

第1-2-1図 企業数(実数)による開廃業の推移(非一次産業)
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 廃業企業の内訳を経営組織別に見ると、個人企業が69.4%と大部分を占めており2、個人企業における廃業の増加が大きく影響していることが分かる(第1-2-2図〔3〕〔4〕)。これは、例えば従業員を雇っている事業所(有雇用事業所)のみを集計している厚生労働省「雇用保険事業年報」(第1-2-3図)や3、会社の設立登記・開廃業のみを集計している法務省「民事・訟務・人権統計年報」・国税庁「国税庁統計年報書」(第1-2-4図)で廃業率の推移を見ると、個人企業と会社企業を両方把握している総務省「事業所・企業統計調査」ほど廃業率の上昇は見られないことからも裏付けられる。

2 データについては付属統計資料の11表を参照。
3 個人事業所の半数は常用雇用の従業者を雇っていないため、有雇用事業所のみを集計している厚生労働省「雇用保険事業年報」では把握されない。


 
第1-2-3図 有雇用事業所数による開廃業率の推移
〜廃業率は依然として上昇傾向にあり開業率を上回っているが、足元での格差は縮小した〜

第1-2-3図 有雇用事業所数による開廃業率の推移
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第1-2-4図 会社の設立登記数及び会社開廃業率の推移
〜バブル崩壊以降、低下する開業率と上昇する廃業率〜

第1-2-4図 会社の設立登記数及び会社開廃業率の推移
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 また、廃業者の内訳を年代別に確認するために総務省「就業構造基本調査」4を見てみると、1979年以降50歳以上の廃業者が増え続けた結果、2002年においては、廃業者の43.0%が60歳以上となっていることが分かる(第1-2-5図)。このように、近年の廃業率の上昇は、個人企業における事業主(自営業主)の高齢化に伴う引退が大きな原因となっているものと考えられる5
 開業率と廃業率の関係は、1990年代後半以降、廃業率が開業率を大きく上回る関係にあり、かつ、最近ではその差も拡大している。後述のとおり、世代交代に伴う事業承継を円滑に進めることにより、廃業率を低下させる努力を続けることは重要な課題である。だが一方で、各種支援策が手厚く展開される下にようやく開業率が上向いてきたことを積極的に評価し、こうした息吹を絶やさぬよう努めていくことも極めて重要であろう。

4 総務省「事業所・企業統計調査」は個人事業主の年齢を調査していないため、ここでは総務省「就業構造基本調査」を用いた。同統計は世帯を対象に個人の就業状況を把握しており、自営業主の年齢に着目した就業移動の実態を観察することが可能である。
5 もちろん、高齢を理由に個人事業主が廃業をした場合でも、その事業を家族や従業員が承継するケースは多いと考えられ、ここで捕捉した廃業がすべて実体経済上の経済単位の消滅を意味するわけではない。しかしながら、個人事業主の高齢化とともに事業主数が減少するという事実は、円滑な事業承継を考える上で見過ごせないことであろう。この事業承継の問題は、第3部第2章で取り扱う。


 
第1-2-5図 年齢別 廃業者の推移(非一次産業)
〜増加傾向にある高齢廃業者〜

第1-2-5図 年齢別 廃業者の推移(非一次産業)
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(2)2001年から2004年にかけての創業者の姿
 これまでは開廃業をめぐる全体的な動向を時系列で見てきたが、次に、2001年から2004年にかけて開業した企業像を、具体的に見てみよう。

〔1〕業種別に見た開業企業像
 業種別に開業率を見てみると(第1-2-6図)、「情報通信業」が9.9%と最も高く、「医療・福祉」が6.4%、「飲食店・宿泊業」、「教育・学習支援業」がともに6.0%と続く一方で、「鉱業」は1.7%、「製造業」は2.2%と、業種により「ばらつき」があったことが分かる。

 
第1-2-6図 業種別開業率(大分類、事業所ベース、年平均、2001年〜2004年)
〜開業活動は業種によりばらつきが見られる〜

第1-2-6図 業種別開業率(大分類、事業所ベース、年平均、2001年〜2004年)
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 より詳細に、業種を小分類で見ると(第1-2-7図)、「インターネット附随サービス業」が51.7%と高く、次いで「その他の社会保険等事業」が30.7%、「その他情報等制作に附帯するサービス業」が29.5%と高い。これら上位業種には、情報化や人口の高齢化、就業形態の多様化に対応した業種が多く、時代の要請に対応した創業活動が活発に行われている様子がうかがえる。

 
第1-2-7図 開業率が高い上位10業種(小分類、事業所ベース、年平均、2001年〜2004年)
〜時代の要請にかなった分野で活発な開業活動〜

第1-2-7図 開業率が高い上位10業種(小分類、事業所ベース、年平均、2001年〜2004年)
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〔2〕地域別に見た開業企業像
 次に、地域別に開業率を見てみよう6。第1-2-8図は都道府県別に開廃業率を見たものである。開業率は、東京都、愛知県、大阪府など大都市圏で相対的に高くなっている様子が分かる。この傾向は今回に限ったものではなく、1999年から2001年にかけての開業企業にも共通して見られた特徴であった。また、併せて廃業率を見ると、全般的に開業率の高い地域で廃業率も高くなっており、開廃業が経済の新陳代謝として機能している(新陳代謝の活発な地域は開業率も廃業率も高い)様子がうかがえる。

6 総務省「事業所・企業統計調査」を用いて開廃業率の地域別の分析を行うに当たっては、事業所の調査区(全国を約25万に分割して調査区を設定している)を越えた移動をすべて開廃業と捉えてしまう(つまり、調査区Aから調査区Bに移転した企業は、調査区Aで廃業、調査区Bで開業にカウントされてしまう)ことに留意が必要である。特に、地域を細分化すればするほど、この影響は大きくなると考えられるため、ここでは算出した開業率の数字そのものや都道府県ごとの順位に絶対的な意味を見出すよりも、大まかな傾向を掴むものと理解することが適切であろう。


 
第1-2-8図 都道府県別開廃業率(非一次産業、年平均、2001年〜2004年)
〜大都市圏で高い開廃業率〜

第1-2-8図 都道府県別開廃業率(非一次産業、年平均、2001年〜2004年)
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〔3〕常用雇用者規模・経営組織別に見た開業企業像
 開業企業を常用雇用者の人数に着目して見てみると、常用雇用者を持たない開業が多く、非一次産業全体の34.7%を占め、常用雇用者5名以下では非一次産業全体の81.1%にもなり、小規模な開業が多いことが分かる(第1-2-9図)。

 
第1-2-9図 常用雇用者規模別に見た開業企業像
〜常用雇用者5人以下が大多数を占める〜

第1-2-9図 常用雇用者規模別に見た開業企業像
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 次に、経営組織別に見てみると、個人事業所、株式会社、有限会社等の比率は業種により様々であり、小売業、飲食店・宿泊業、医療,福祉、教育、学習支援業、複合サービス業などで個人形態の開業が多くなっている(第1-2-10図)。

 
第1-2-10図 経営組織別に見た新規開業企業像
〜小売業、飲食店・宿泊業、医療、福祉、教育、学習支援業、複合サービス業などで個人形態の開業が多い〜

第1-2-10図 経営組織別に見た新規開業企業像
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 このうち会社企業について、資本金規模別に見てみると(第1-2-11図)、情報通信業、運輸業、複合サービス業では比較的資本金規模が大きくなるものの、非一次産業全体の過半数(55.5%)が資本金1,000万円未満の小規模な企業であることが分かる。

 
第1-2-11図 資本金額別に見た開業企業像(会社企業のみ)
〜情報通信業、運輸業、卸売業、複合サービス業では比較的資本金規模が大きい〜

第1-2-11図 資本金額別に見た開業企業像(会社企業のみ)
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 この資本金1,000万円未満の会社企業の中には、有限会社(資本金300万円以上1,000万円未満)だけではなく、新事業創出促進法による最低資本金規制特例制度7を利用したと考えられる企業が0.9%(870社)含まれている。ここでは2001年10月1日から2004年6月1日までに開業した企業までしか集計対象としていないことや、看板を出さずにマンションの一室等で小規模に行う開業行動は統計上把握できないという事情があるため、2003年2月1日に施行された同特例制度の利用による開業率押し上げの効果は、「事業所・企業統計調査」に十分現れているとは言い難い。しかし、第1-2-4図で見た会社の設立登記数による開業率が2003年以降上昇基調であることや、同制度の施行以来、2006年1月31日までに同制度を利用した企業数は累計で33,543社(うち資本金1円のいわゆる1円会社は1,538社)に上り、このうち資本金の額を最低資本金以上に増資した「卒業企業」も2,576社に上っていることから、同制度の果たした役割は大きいと考えられる。

7 事業を営んでいない個人が新たに会社を設立するときに、経済産業大臣からその旨の確認を受ければ、会社設立から5年間、商法・有限会社法の最低資本金規制の適用を受けない、という制度。資本金1円でも会社設立が可能となることから、「1円起業制度」などとも呼ばれた。


 なお、2006年5月から「会社法」が施行され、最低資本金制度は撤廃されることとなっている。

2.女性・高齢者による創業
 これまで事業所や企業に着目した開廃業の動向を見てきたが、次は開業者の属性に着目し、女性・高齢者による創業に目を向けてみたい。
 ここでは、総務省「就業構造基本調査」を用いて、事業主の性別や年齢に着目をした分析を行ってみることとしたい8

8 本白書では、創業者を「過去一年間に職を変えた、あるいは職に就いた者で、現在は非一次産業の自営業主(内職者を除く)となった者」と定義している。過去の中小企業白書においては農林漁業や内職者を含めた集計を用いている分析もあり、単純に比較できない場合もある。


 女性の「創業希望者」数の推移を見ると、バブル崩壊後の1992年には約41万人であったが、その後は継続して増加基調をたどっている。さらに、女性の「創業準備者」が、最近ではバブル期を越える水準にまで増加している点が注目される(第1-2-12図)。

 
第1-2-12図 女性による創業の動向
〜バブル崩壊後に減少した創業希望者・準備者は増加傾向に転じている〜

第1-2-12図 女性による創業の動向
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 「創業希望者」に占める女性の比率は31.6%と低いが、実際の「創業者」に占める女性の比率は37.2%となっている。女性の創業希望者は男性の創業希望者に比べて創業の実現率が高いことが分かる(第1-2-13図)。

 
第1-2-13図 創業者・創業希望者の比較(性別)
〜創業希望者に占めるよりも、実際の創業者での女性の比率が高い〜

第1-2-13図 創業者・創業希望者の比較(性別)
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 業種別に女性が創業した分野を見ると、サービス業に過半数が集中する一方で、建設業、運輸業での創業が少なく、男性に比べると特定の分野に集中している傾向がある(第1-2-14図)。

 
第1-2-14図 女性の創業分野
〜男性に比較し、卸売・小売業、教育・学習支援業等に集中する傾向が見られる〜

第1-2-14図 女性の創業分野
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 次に、女性創業者の年齢構成を見ると(第1-2-15図)、40歳未満の者が過半数(52.2%)となっており、比較的若い創業者が多い。

 
第1-2-15図 女性の創業者の年齢構成
〜男性に比べ若い創業者が多い〜

第1-2-15図 女性の創業者の年齢構成
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 人口減少社会においては、我が国の経済成長率を維持する上で、女性の就業参加がこれまで以上に重要な意味を持つこととなるため、仕事と育児の両立が問題となるが、創業活動と子育ての両立は図れるものであろうか。
 第1-2-16図では、創業者の59.5%は配偶者を持つ者であるが、そのうち37.9%は0〜5歳の幼児を有しながら創業をしていることが分かる。子どもがいない場合であっても自ら事業を起こすことは容易なことではないが、「職」と「住」の距離や、就労条件を比較的自分でコントロールできることが、こうした子育てを行う女性の創業活動を支えているのではないだろうか。そうだとすれば、現状としては、子どもを出産した女性の就業の場として創業活動を選択する女性は多いとは言えないが、今後は育児と両立可能な就業機会の1つとして、子育てをしている女性の創業も広く検討される余地があるのではないだろうか。

 
第1-2-16図 女性の創業活動と子育て
〜有配偶者の37.9%は0〜5歳の幼児を有しながら創業活動を行っている〜

第1-2-16図 女性の創業活動と子育て
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 次に、高齢者による創業活動の動向を見てみたい。
 高齢者で実際に創業した「創業者」は、実数・創業者全体に占める割合ともに一貫して増加していることが分かる(第1-2-17図)。また最近の特徴として、高齢者の「創業希望者」が急増していることが挙げられる。このことは今後の高齢者の更なる創業につながるものと期待できよう(第1-2-18図)。
 直近の2002年のデータを用いて、高齢者の「創業希望者」と「創業者」の年齢構成を比較すると、ほぼ拮抗をしているが、「創業希望者」に比べ、実際の「創業者」は39歳以下や60歳以上の割合がやや高くなっている(第1-2-19図)。

 
第1-2-17図 創業者の年齢別推移
〜高齢創業者は実数・割合ともに増加傾向にある〜

第1-2-17図 創業者の年齢別推移
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第1-2-18図 高齢者による創業の動向
〜増加する高齢創業希望者・準備者〜

第1-2-18図 高齢者による創業の動向
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第1-2-19図 創業者・創業希望者の比較(年齢別)
〜創業希望者に比べて、創業者は39歳以下や60歳以上の年齢層の割合がやや高い〜

第1-2-19図 創業者・創業希望者の比較(年齢別)
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 高齢者はどのような分野で創業しているかを見ると、サービス業分野での創業者が多く、高齢創業者全体の3分の2程度がサービス業で創業していることが分かる(第1-2-20図)。もっとも、サービス業は製造業などに比べ初期投資やノウハウが要求されず、参入が比較的容易であるため、サービス業の創業が多いのは高齢者に限った話ではないと言える。
 産業別に見ると、不動産業の創業者においては65.2%が60歳以上であり、他の産業に比べ高齢層の比率が高いことが分かる(同、第1-2-20図)。高齢者の方が資産の蓄積があるため、所有する土地・建物を賃貸に出し、家主等として創業しているということだろう。

 
第1-2-20図 高齢創業者の創業分野
〜高齢創業者の中ではサービス業分野での創業者が多く、産業別の創業者の中では不動産業での高齢創業者が多い〜

第1-2-20図 高齢創業者の創業分野
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 今後、企業に雇用者として勤めていた団塊の世代が退職年齢に差しかかるが、人口減少社会において我が国経済の成長力の維持を図る上では、そうした高齢者の就業参加も一層大きな意味を持つ。第3部第2章で述べるように、定年を迎えた高齢者に対し再雇用等の形態で就業参加を図っていくことも必要であるが、今後の高齢社会における社会の活力・新陳代謝という観点からは、高齢者の活発な創業活動により、社会に新たなビジネスが生まれていくことが望まれよう。

 第1節 開廃業の動向

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