2.アセットベーストレンディング
第2-2-24図は売掛債権を担保とした融資の実行件数も表したものである。これを見ると、地価の下落に伴い、土地以外の資産を担保とした融資実行数が増えていることが分かる。
また、実際の金融機関の業態別にそれらの売掛債権担保融資や在庫担保融資といった土地以外の資産に着目した融資は、金融機関の業態が大きくなるほど取り組んでいる、あるいは取り組む予定がある割合が高くなっており、金融機関の関心が高いことが分かる(第2-2-30図、第2-2-31図)。
第2-2-30図 売掛債権担保融資への取組状況(金融機関の業態別)
〜規模が大きい金融機関ほど売掛債権担保融資に取り組もうとしている〜
第2-2-31図 在庫担保融資への取組状況(金融機関の業態別)
〜在庫担保融資を取り組んでいる金融機関は少ないものの、検討している割合は高い〜
これらの動産を担保とした融資、いわゆるアセットベーストレンディングは、一般的な借入れにおける不動産担保融資とは異なる。
アセットベーストレンディングは、融資審査の可否を、借り手自体の経営状況等ではなく、借り手ほど情報の非対称性の深刻でない売掛金、在庫等といった資産の価値に基づいて判断する貸付けであり、これにより情報の非対称性のために将来的返済財源であるキャッシュフローが分からない中小企業向け融資のリスクを軽減している25。
つまり、一般的な不動産担保融資はあくまで返済財源は借り手である企業のキャッシュフローであり、担保は万が一回収できなかった場合の2次的な返済財源であるのに対し、アセットベーストレンディングは、借り手である企業のキャッシュフローよりも売掛金や在庫等といった担保の価値が優先的な返済財源となるという意味において、担保の価値に応じた貸付けであり26、融資の実態においても、例えば売掛金の回収を待って返済するなど不動産担保融資と異なる点がある27。
この手法は、キャッシュフローの創出力はやや劣るが良質な売掛債権や在庫等を所有する企業に対して有効であると考えられるが、第2-2-32図より実際に売掛債権担保融資、在庫担保融資を使用している企業の割合を見てみると、売掛債権担保融資は5.8%、在庫担融資は1.7%と、まだ利用している企業の割合は低い状況である。
アメリカでは、原材料や商品等の在庫、商品の売却代金である売掛金等を一括担保設定することにより、効果的にアセットベーストレンディングを行っている。このようにアメリカにおいてアセットベーストレンディングが多く利用されているのは、統一商事法典第9編28において包括的な動産担保制度が整備されていることに加え、動産や債権の評価について専門性を持つ外部評価会社や、動産等の売買市場(セカンダリーマーケット)が存在するからと言われている。
第2-2-32図 資産担保融資を現在使用している企業の割合
〜売掛債権担保融資の方が使っている企業の割合が高いものの、在庫担保融資、売掛債権担保融資ともに使用している企業の割合が低い〜
我が国においても動産担保融資の活性化を促す観点から、2004年11月に債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律が一部改正され(公布日2004年12月1日)、動産公示制度が創設された。今後は、資産評価・処分サービス業者や売買市場の育成など、動産担保融資を支えるための環境を整備することが望まれる。
この手法は商取引に着目した貸付けであるがため、銀行が中小企業とのリレーションシップの強化にもつながることも考えられ、さらなる普及が期待される29。
この手法は商取引に着目した貸付けであるがため、銀行が中小企業とのリレーションシップの強化にもつながることも考えられ、さらなる普及が望まれる。
事例2-2-2 不動産以外の資産を活用して資金調達を行っている企業
C社(岡山県、従業員11名)は1997年設立の音楽・映像記録物賃貸業者。流動集合動産譲渡担保を活用して円滑に資金調達を行っている。
【流動集合動産譲渡担保を利用するに至った経緯】
売上の変化により、2003年にC社は新たな資金ニーズが発生した。しかしながら、既に所有不動産はすべて担保提供しており、不動産担保がなくても借入れができる方法を探していたところ、所属組合から紹介されたD行から、商品を担保にする方法があるとの提案があり、利用することに至る。その結果、2004年度に2回、合計100百万円の資金調達が可能となった。
【流動集合動産譲渡担保とは】
流動集合動産譲渡担保とは工場内の機械・器具、什器、倉庫や店舗内の商品等、一定の枠組みでとらえることのできる動産の一群に対して譲渡担保を設定するこという。大きく分けて以下の3つに区分される。〔1〕確定集合動産譲渡担保(機械設備、什器備品、営業設備等目的物が変動しない集合動産の譲渡担保。例えば、ホテルの什器、設備等)、〔2〕流動集合動産譲渡担保(店頭の商品、倉庫内の商品等、搬入・搬出により目的物が変動を繰り返す集合動産の譲渡担保。集合動産譲渡担保の中では最もよく用いられる。)、〔3〕変質集合動産譲渡担保(工場に搬入された原材料のように、その後の加工により半製品、製品へと目的物が変質する動産を、その変質の過程を通じて一貫して譲渡担保の目的とするもの)。
【商品等を利用した融資の評価】
C社は「土地等といった不動産ではなく、日々入れ替わっていく商品でも、全体として価値を評価され、担保に供することで有効に利用できるのは有難い」と流動集合譲渡担保を評価している。
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