(2)現在の就業状況
次に、廃業した元経営者の現在の就業状況はどのようになっているのであろうか。廃業した回答者の現在の就業状況を見たのが第2-3-73図である。「収入を得る仕事をしていない」とする回答が過半数を占めているが、就業状況は年齢により大きく異なる。そこで、年齢層別に現在の就業状況を見たのが第2-3-74図である。これによれば、年齢の低い層では「収入を得る仕事を主にしている」とする回答が多くなっており、年齢の高い層では「収入を得る仕事はしていない」とする回答が多くなっている。もっとも、これは「就業構造基本調査」でこの1年間の離職者を見た場合でも見られる傾向であり、廃業企業の経営者に限った傾向ではない。
第2-3-73図 廃業経営者の現在の就業状況
〜「収入を得る仕事はしていない」とする回答者が過半数を占めた〜
第2-3-74図 現在の年齢別就業状況
〜廃業者においても年齢の高い層ほど就業している割合が低くなる〜
では、年齢以外の要素と廃業した事業との関係、特にやめた事業の財務状況と現在の就業状況との関係はどのようであろうか。単純に考えれば、廃業時に債務超過であれば、債務を返済するために何らかの形で収入を得なければならないことから、就業している割合が高いと考えられるが、どうであろうか。
先述したように現在の就業状況は年齢階層によって大きく異なることから、特定の年齢層を取り出すことによって年齢差による影響を排除した上で、より詳細に分析していくこととする。
年齢層については、特に60歳代を取り上げよう。というのは、60歳代は廃業者の個人の事情により就業状態に大きな差が出やすい年齢であると考えられるためである。すなわち、多くの人はまだ体力的に就業が可能である年代である一方で、定年制を持つ企業の多くが60歳を定年としていること等に見られるように、引退を意識する年代であること、また年金受給開始年齢に達して就業しなくても生活の糧を得られるようになることから、経済状態が就業状態に他の年代と比較して影響を与えやすい年代であると考えられるためである。なお、本調査において最も回答者が多かったのも60歳代である。
まず、60歳代の就業状況を、廃業を決めた時の利益状態で見たのが第2-3-75図である。これを見ると、最も利益状態が良かった直前期経常黒字であったグループと、最も利益状態が悪かった2期連続経常赤字のグループで「収入を得る仕事を主にしている」と「仕事以外のことが主で収入を得る仕事もしている」をあわせた割合がそれぞれ39.1%と同じ割合になったことから、利益状態と現在の就業状況には明確な関係はないと考えられる。
第2-3-75図 現在の就業状況と利益状況(60歳代)
〜廃業前の利益状況と現在の就業状況には明確な関係はない〜
一方、廃業を決断した時の資産状態と現在の就業状況の関係を見たのが第2-3-76図である。これを見ると、資産状態が悪化するに従って、収入を得る仕事をしている割合が徐々にではあるが、増加している。このことから、廃業前の資産状態と就業状況には関係があることがうかがわれるが、これは事業が債務超過状態であった場合には、事業上の資産を売却するだけでは債務を整理できずに、返済を続けるために収入を得る必要があるためではないかと考えられる。
第2-3-76図 現在の就業状況と資産状況(60歳代)
〜廃業前の資産状況と現在の就業状況には関係があることが予想される〜
そこで、60歳代の回答者について就業状況を債務整理状況別に見たのが、第2-3-77図である。これを見ると、債務の整理が終わっていない廃業者16の方が、就業している割合が明らかに高くなっている。債務の整理が終わっていない廃業者も終わっている廃業者も一旦事業をやめた廃業者という点では同じであり、両者の間で経済的理由以外に就業意欲に大きな影響を与えるものはないと考えられることから、債務を返済するために高齢になっても就業を継続しなければならない元経営者が存在する実態が推察される。2000年に当時の労働省が行った「平成12年高年齢者就業実態調査」の結果によれば、調査対象年齢の中で最も年齢層の高い65歳〜69歳のグループで「自分と家族の生活を維持するため」に就業していると回答した割合が約半数(男55.9%、女45.5%)に達していることからも、経済的理由は高齢者の就業継続の大きな理由であることは間違いないであろう。
第2-3-77図 債務の整理と現在の就業状況(60歳代)
〜債務の整理状況と現在の就業状況には密接な関係がある〜