(2) 民事再生法の利用状況  平成12年4月に従来の和議法の制度的欠陥(注1)を是正した新しい再建型の倒産処理手続(再生手続)を創設するため、民事再生法が施行された。民事再生法に基づく再生手続の大きな特徴としては、1)法人企業だけでなく個人企業であっても利用が可能である、2)支払不能や債務超過といった経営破綻状態に至る前に申立てを行うことができる、3)債務者が事業経営権を保持できるため、現在の経営者の経営能力や信用を企業再建のために活用できる、等であり、迅速かつ簡素な手続により事業再建を目指す中小企業にとって利用しやすい制度となっている。平成13年2月までの申立て件数は682件であり、前年同期の和議開始の申立て件数154件の4倍強に達している。また、申立て企業を資本金規模別に見ると、1,000万円以上5,000万円未満の企業の占める割合が約6割と最も多く、中小企業の利用が多いことが分かる(第111-19図)。  このように民事再生法に基づく再生手続は経営再建を目指す中小企業にとって非常に使いやすい手続であることは事実であるが、再生手続開始の申立てを行った企業のすべてが容易に再建を遂げられるわけではない。民間調査機関の調査によれば、申立てを行い、実際に裁判所の認可決定を受けたのは平成13年2月までで122件(注2)となっている。また、再生計画の認可に至らなかった事例が同時点で31件判明している。結局のところ、再生計画案について債権者の同意を得ることができなかったために再生手続廃止の決定がなされ、破産宣告される企業も少なからず存在するのが実情と言える。  中小企業が民事再生法に基づく再生手続を利用して経営再建を目指すためには、実質的な経営破綻に陥る以前の段階での早期再建を目指すとともに、綿密な再生計画案の策定や債権者に対する経営者の誠実な対応が必要不可欠であろう。 <事例1 スポンサーの協力を得て民事再生手続により経営再建を目指す>  A社(神奈川県、従業員数113人(再生手続開始の申立て時点))の民事再生手続において認可された再生計画は、既存事業の大幅な再構築や経営責任問題等の痛みを伴うものであったが、それらの苦境を乗り越え、現在では債権者の理解やスポンサーの協力を得て事業の建て直しや信用回復に向けて注力している。  貨物運送・倉庫業を手掛ける同社は平成4年に複合物流センターを建設したが、建設資金(約50億円)の大半を金融機関からの借入れによって賄ったため、その後の景況悪化による受注低迷の影響を受けて、元利金の支払負担が収益を大きく圧迫することになった。このような状況を金融機関に対する返済条件の見直しと事業の再構築によって克服することを計画したが、事業の再建計画が数字的裏付けに乏しく、かつ不徹底なものであったことから、主要金融機関からの了解を得ることができず、平成12年5月に民事再生法に基づく再生手続開始の申立てを行い、経営再建を目指すことになった。同社は申立て後直ちに、主要取引金融機関の指導を受けながら、今後10年間の事業収支計画を数回に渡って練り直し、過去の実績を踏まえた事業収支計画書を策定するとともに、不採算部門からの撤退及び従業員の解雇・自主退職等を実施する等、これまで不徹底であった事業の再構築を本格的に推進することを表明した。また、債権者から再生計画案に対する同意を得るために、1)減資を実行すること、2)スポンサーからの支援(増資)を受けること、3)現経営者は辞任し、スポンサーに経営権を移行すること、4)同社の現相談役(前経営者)と現経営者は自宅を売却処分し、経営責任を取ること等の条件を再生計画案に盛り込んだ。このような具体的かつ綿密な再建案を策定したことで、再生手続開始の申立てから7か月という期間で同年12月に再生計画の認可決定を受けることができた。現在、同社は早期の経営再建を果たすべく、より一層の経営努力を行っている。 第111-19図 民事再生手続の申立て件数(資本金規模別) ------------------------------------------------------------------------------ ■注1 従来の和議法の問題点としては、1)破産原因(支払不能や債務超過)が生じていることが手続開始の要件とされていた、2)申立てと同時に弁済計画案を提出する必要があった、3)担保権の行使が制限されないため、事業継続に必要な財産が担保権実行により失われる恐れがあった、等が挙げられる。 ■注2 和議等、他の法的手続からの移行による認可件数を除いた件数であるが、銀行取引停止処分からの移行による認可件数が若干含まれている可能性がある。