3 資金調達の円滑化
(1)現状
前節で見たように、中小企業にとって最も深刻な課題は受注量の減少、低価格競争であり、これらの経営課題は売上高の減少を通じて資金繰りに悪影響を及ぼす(前掲第211-1図、6図)。
売上が減少する状況では、生産設備の増強等を目的とした設備投資意欲は低下するため長期資金への需要は減退するものの、売上の多寡にかかわらず必要となる既往借入金返済を行うための資金需要は大きく減退することはない。このため、収益の減少とあいまって全体のキャッシュフローの減少につながる可能性が高いと思われる。
中小企業の資金繰りを改善するためには売上高の向上が重要であるが、「既往借入金の返済負担」も深刻な課題である(前掲第211-6図)。既往借入金の返済負担の重さを、有利子負債とキャッシュフローの比率(必要返済期間)で見ると、中小企業の場合平成元年以降平成10年までは増加し、必要返済期間は直近で19年と、大企業・中堅企業と比較しても高い水準にある(第212-7図)。また、借入金依存度を見ても、90年代は上昇する傾向にある(前掲第141-3図)。
他方、金融機関の中小企業に対する融資の姿勢に変化が見られる。すなわち、中小企業に対して融資する時に当該企業の安全性を考慮する傾向にある。国民生活金融公庫「中小企業の銀行借り入れに関する実態調査」(平成12年7・8月調査)によれば、借入依存度が高くなるほど、また、自己資本比率が小さくなるほど、貸付金利のばらつきは拡大する傾向にある(第212-8図、9図)。また、金利の乖離幅(借入時の短期プライムレートと借入金利の差)と借入依存度の相関係数、また金利の乖離幅と自己資本比率の相関係数を平成9〜10年と平成11〜12年で比較すると後者の方が大きく、「企業の安全性」を重視する傾向が次第に強まっていることが分かる(第212-10図)。
このように中小企業は既往債務の返済負担を抱え、金融機関からは安全性を求められるようになっており、中小企業の資金調達をめぐる環境は厳しい状況にある。
さらに資産収益率(Return on Asset、ROA)について見ると、平成3年まで6〜7%台で推移していたがその後急速に低下していることから(第212-11図)、90年代前半の積極的な設備投資はキャッシュフローを生むことなく、結果として債務負担だけが増加していることが分かる。
以下では、中小企業の資金調達について、まず間接金融を通じた資金調達円滑化の観点から、自社の財務情報(原価構造)を正確に把握することで仕入れコストの圧縮に成功した事例や財務関連諸表を作成することにより資金繰り改善に努めている事例を紹介する。その後中小企業の資金調達円滑化の観点から、金融機関に期待される役割、さらには最近の政府の対応についても言及する。最後に、資金調達手段の多様化に向けた市場の整備状況等について紹介する。
第212-7図 キャッシュフローで見た有利子債務の必要返済期間
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第212-8図 借入依存度別に見た金利乖離幅(平均)の変化
第212-9図 自己資本比率別の金利乖離幅
第212-10図 自己資本比率、借入依存度と金利乖離幅の相関係数
第212-11図 規模別に見た資産収益率(ROA)
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(2)間接金融を通じた資金調達の円滑化
1)中小企業の取組
ROAが低下している状況で中小企業が新たに設備投資を行う場合、これまでの失敗を繰り返さないためにも、収益とのバランスについて配慮することが重要であり、自社の財務情報の把握に一層努めることも肝要ではないだろうか。さらに、既往借入金の返済負担の重さの解消に資するため、他者から信頼される財務情報を開示することで、資金調達上のメリットを享受できるような取組を行うべきではないだろうか。
<事例19 財務情報を把握することで自社の弱点(原価率の高さ)を把握し、その克服により業績を改善した中華料理店>
中華料理店のA社(東京都、従業員数5人)は、財務情報を把握することで自社の原価率が高いことを発見し、その克服により業績を改善した。
同社が改革の方向性を見いだすため最初に手をつけたのが、自社の財務情報の把握だった。同社社長はパソコンを活用し毎日30分から1時間をデータの入力・分析に費やし、自社の原価構造の把握に努めた。そして、他の優良中華料理店の財務状況と比較したところ、他の店に比べて原価率がかなり高いことが判明した。
そこで、器や盛りつけ等を変えたりするなどの試みを行ったが業績を大きく改善するには至らず、最終的にメニューの見直しに着手した。例えば、以前はカニチャーハンとエビチャーハンが両方メニューにあったが、海鮮チャーハンに一本化し、カニとエビの使用量を減らす代わりに単価が安い白身魚、イカ、ホタテを加えることで利益を生む商品となった。また、ラーメンの焼き豚用の肉は加工したものを仕入れていたが、加工前のものを大量に仕入れるようにすることで、原価率を59%から31%に低下させた。
このほか、季節別、曜日・時間帯別、客層別に商品ごとの売上を把握できるようにし、120種類以上のメニューを半分に絞り顧客の人気の高い商品を揃えた。また、無駄な仕入れを極力減らすように工夫した。コストを見直すだけでなく、良質の食材の購入・サービスの向上にも気を配り顧客の支持拡大に努めた。これらの努力によって、同社は原価率を優良店の平均的な水準にまで引き下げることに成功し、業績を改善している。
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<事例20 決算報告書と経営計画書で「事業の健全性」を金融機関に示し資金調達に成功した中小企業>
飲食店のA社(埼玉県、従業員数5人)は、担保として提供できる物件がなかったが、金融機関に新規出店のための融資を申請して許可を得た。また、食肉プラントを製造するB社(埼玉県、従業員数27人)は、事業に関する損害賠償訴訟中に資金繰りが苦しくなり、金融機関に融資を申請し、つなぎ資金を確保した。
両社が資金調達において成功を収めた秘訣は、決算報告書と経営計画書にある。
両社とも顧問の税理士の勧めで、以前から会計関連法規に基づいた決算報告書と財務体質の改善を示した経営計画書を作成していた。決算報告書は、損益計算書や貸借対照表、キャッシュフロー計算書、営業報告書が盛り込まれており、税理士が毎月両社に出向いて監査を行い、適法性及び正確性を検証した会計帳簿を基に作成している。経営計画書では、経営の基本方針、重点課題、行動計画を説明しているほか、損益目標、資金繰り計画も記載しており、経営体質の改善・強化策としてまとめられている。
両社は、融資を申請する時に金融機関に対して決算報告書と経営計画書を提出した。金融機関は融資先の資金返済能力に関心を持つが、こうした決算報告書や経営計画書は両社の計数管理能力と資金返済能力が十分であることを証明する上で役に立った。
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COLUMN アメリカにおける中小企業による財務情報の把握と融資の関係
「他者から信頼される財務情報を開示することで資金調達上のメリットを享受できるような取組を行うべきではないだろうか。」と指摘したが、金融機関が融資のリスクや収益性に敏感な環境の下では、財務情報を把握・開示している企業とそうでない企業とでは、融資の可否、融資の条件が異なってくるものと思われる。特に、金融機関が審査しにくい企業が融資を受けようとするには、積極的に自社の情報を把握して自ら審査コストを低くする努力をしなければ融資を受けることが困難である。
この点について、Peterson and Rajan(2000)(注1)は、アメリカの中小企業庁(SBA)と連邦準備制度(FRB)で実施したアンケート調査(注2)のサンプルを用いて検証している。
この実証研究で使用したのは金融機関から融資を受けている中小企業に対するアンケート調査の結果で、企業規模や業績の他に、融資に関する情報(本社から金融機関との距離、融資開始年度など)が含まれている(注3)。
一般に、借り手との距離が長くなるほど貸し手の金融機関にとって審査コストが大きくなるため、金融機関から遠く離れた企業は融資を受けにくいと言われている。こうした企業が融資を受けるためには、積極的に情報を把握・開示しているはずである。
この仮説を検証するために、「金融機関と中小企業の距離」と「財務データの有無」の相関関係を調査したところ、統計的に有意な正の相関が確認された。すなわち、金融機関から遠く離れながらも融資を受けている企業は、金融機関に近い企業と比べて積極的に情報を把握・開示していることが分かる。 |
2)金融機関の役割
既に見たように、金融機関は融資に際して借入依存度や自己資本比率など中小企業の安全性に関するデータを重視する傾向にある。しかし、これらのデータは企業のデータの一部に過ぎない。本来、金融機関には事業のリスクや収益性に応じた資金供給が期待されるが、中小企業は大企業と比較してデフォルト(債務不履行)に関するデータ等信用リスクを評価するための情報蓄積がいまだ十分でない。最近、中小企業向け貸出の新商品として、クレジットスコアリングを活用した短期審査・無担保・小口の融資が都市銀行や地方銀行により提供され始めているが、幅広く活用されるには至っていない(注4)。
このため、担保となる資産を十分保有していない中小企業や、信用保証を限度額まで利用している中小企業にとって、急遽資金が必要になった時に円滑に調達することができないという懸念は依然存在している。金融機関としても、自己資本比率、借入依存度のみならず、信用リスク情報や、事業の内容や成長性といった長期的観点からも様々な情報を収集し、総合的に与信判断を行うことが求められる。
3)政府の対応
(ア)信用保証
中小企業は大企業と比較して担保力が不足しがちなため、民間金融機関からの十分な借入ができない場合がある。そのような場合、信用保証協会が中小企業者の債務を保証すること等により、中小企業の円滑な資金調達を促進している(注5)。
平成9年秋に発生した金融システム不安以降中小企業向けの信用が収縮した際には、政府は平成10年8月「中小企業等貸し渋り対策大綱」を閣議決定し、中小企業金融安定化特別信用保証制度(以下、特別信用保証制度という。)を創設するとともに政府系金融機関による融資制度を拡充することで、信用収縮に対応した。
特別信用保証制度は、平成13年2月現在約160万件が承諾され、総枠30兆円のうち約27兆円が利用されている(第212-12図、13図)。
平成13年3月に実施した「特別信用保証制度利用企業に対するアンケート調査」によれば、特別信用保証制度により調達した資金の使途については、「既往借入減少分の再借入資金」が最も多く、「売上減等による赤字補填資金」が続き、資金繰り改善に利用した企業が約4割に上ることが分かる。一方、「既存事業拡大資金(主に設備資金)」「新規事業への投資のための資金」と答えた企業がそれぞれ12%、8%あり、約2割の企業が特別保証を利用して事業の拡大等の「前向き」対応を図ったことが分かる(第212-14図)。
また、最近の業況については、制度導入前に比べ改善(「大いに改善した」及び「若干改善した」)と答えている企業が、悪化(「大いに悪化した」及び「若干悪化した」)と答えている企業を上回っている(第212-15図)。
さらに、「仮に特別信用保証制度が存在しなかった場合、当時の業績にかんがみ、経営上どのような支障が生じていた可能性があったか」という問いに対して、「事業の縮小」と答えた企業が最も多く、「人員の削減」がこれに続いている。「事業からの撤退」「設備投資計画の縮小」を合わせると85%の企業が「経営上の支障が生じていた」としている。これらのことから、特別信用保証制度は未曾有の信用収縮の下、中小企業を巡る金融環境が急激に変化した中で、臨時異例の措置として、中小企業の経営安定に多大な効果があったと考えられるものであり、一部にある「特別信用保証制度は淘汰されるべき企業の延命を図ったにすぎない」といった見方は当たらないと考えられる(第212-16図)。
しかし、この制度は当初から期限を設定して導入された「臨時異例の措置」(「中小企業等貸し渋り対策大綱」)であり、平成13年3月に期限が切れることから、平成12年12月に中小企業信用保険法等が改正された。担保力の脆弱な中小企業者の無担保の資金調達ニーズが近年の地価の下落傾向とあいまって増大していることから、無担保保証の限度額を5,000万円から8,000万円に引き上げる等の措置が講じられた(注6)。
既に、特別信用保証から一般無担保保証への移行が徐々に進みつつある。東京・大阪・愛知・福岡の信用保証協会の調査によれば、平成12年12月の改正法施行後平成13年1月の間に、5,000万円を超える一般無担保保証の利用者及び利用金額は43事業者、約25億円に上る。反対に、特別保証を一般無担保保証と併用してほぼ限度額いっぱいまで利用している事業所数は、利用者全体の1.6%を占め、平成12年3月末から0.2%減少している。このことから、一般保証の拡充が特別保証との併用に向かっているというより、特別保証の返済が進んでおり、代わりに一般保証の拡充分に移行している実態がうかがえる。
第212-12図 特別信用保証の承諾件数の推移
第212-13図 特別信用保証の承諾金額の推移
第212-14図 特別信用保証制度により調達した資金の使途
第212-15図 特別信用保証制度導入前と比べた最近の業況
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第212-16図 特別信用保証制度が存在しなかった場合、どのような支障が生じていた可能性があったか
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(イ)企業の信用リスク評価のためのインフラ整備
「2)金融機関の役割」でも触れたように、中小企業は大企業と比較してデフォルト(債務不履行)に関するデータ等信用リスクを評価するための情報蓄積がいまだ十分でない。
このような状況をかんがみ、政府としても金融機関や投資家が中小企業の信用力について信頼性の高い評価を行い得るように、各金融機関が自社内に蓄積している融資先企業の財務等に関する情報を共有化するためのインフラ整備を進めつつある。例えば、民間金融機関、信用保証協会及び政府系中小企業金融機関の参加を得て、平成13年4月に運用を開始した中小企業信用リスクデータベース(CRD:Credit Risk Database)プロジェクトでは、取引先中小企業の財務・非財務データやデフォルトデータが蓄積され、これらデータを基に統計的分析を行い中小企業の信用リスクの定量的評価が提供されている。
(3)資金調達手段の多様化
有利子負債の返済負担が重い多くの中小企業にとって、資金調達手段の多様化は将来的な課題かもしれない。
しかし、中小企業にとって避けて通れない課題である経営革新にはリスクが伴うため、リスク対応能力を向上させる観点から長期的には自己資本を充実させることが望ましい。資金調達手段の多様化に向けた市場の整備は徐々に進展してきており、今後こうした多様な手段で資金を調達することも検討に値する。
1)売掛債権を活用した資金調達
売掛債権を活用した資金調達手法は、従来からも「手形割引」という形式で活用されてきたが、中小企業が有する資産を有効に活用しつつ、バランスシートの改善に資する手法として、その重要性が高まっている(注7)。また、中小企業が有する資産を有効に活用しつつ、バランスシートの改善に資する手法である。
(ア)売掛債権担保融資
中小企業の売掛債権を担保(債権譲渡担保等)として金融機関が行う融資である。平成12年における融資規模は推計で約3.9兆円である。これまで我が国の融資は、不動産等の物的担保を裏付けとするものが中心であったが、売掛債権担保融資は、物的担保に制約されない中小企業の資金調達の拡大をもたらすものである。
(イ)ファクタリング
手形割引が「商業手形」を買い取ってもらうのに対して、ファクタリングは、企業が保有する売掛債権を買い取ってもらい、期限到来前に売掛債権を資金化する方法である。支払企業からの資金回収を行うファクタリング会社は、我が国には約20社存在している。ファクター協議会によると、市場規模は平成8年度の約1,600億円から平成11年度は約4,500億円と3年間で3倍近く成長している。ファクタリング会社の利用企業には多くの中小企業が含まれている。
(ウ)売掛債権の証券化
企業が保有する売掛債権をSPV(Special Purpose Vehicle:特別目的媒体)に譲渡し、当該SPVがその債権を裏付けに資産担保証券(注8)を発行することにより、資本市場から直接資金を調達する方法である。我が国における売掛債権の証券化の実績は推計で約2.3兆円である。
このような売掛債権を活用した資金調達を促進させるには、債権の譲り受けや譲渡担保の設定について第三者に対する対抗要件を具備したり、二重譲渡リスクを防ぐための債権譲渡登記制度の一層の充実や、売掛債権に対する信用力の補完、売掛債権の管理コストの低減化、債権譲渡禁止特約という商慣行の改善等を進める必要がある。
2)債券発行
(ア)信用保証協会の保証付き私募債の発行
私募債は、企業が少数の投資家向けに発行する社債であるが、一般の投資家はデフォルトリスクを恐れて容易に引き受けず、私募債を引き受けるのは私募債発行企業の取引金融機関が多かったと言われる。このような事情にかんがみ、平成11年12月に中小企業信用保険法が改正され私募債に公的保証を付けることが認められ、以後全国各地で信用保証協会の保証付き私募債の発行が増加している。全国信用保証協会連合会によると、平成12年12月までに全国の信用保証協会が中小企業の私募債に対して保証を承諾したのは2,285件、保証総額は約2,242億円にのぼり、中小企業の資金調達手段として活用されている。
(イ)東京都における債券市場構想
東京都では、豊かな発想力や高い技術力を持った企業ですら十分な資金調達ができていないという現状に問題意識を持ち、元気で優秀な中小企業に直接金融による円滑な資金調達の道を開く取組を行っている。平成12年3月には、国内で初めて信用保証協会の信用保証を活用した新規融資債権の証券化をCLO形式(注9)で行い、約1,700社の中小企業が約700億円の資金調達に成功した(第212-17図)。平成13年3月には第2回の債券発行が行われ、約950社の中小企業が約325億円の資金を調達した(注10)。
3)ベンチャー企業向け株式市場の動向
平成11年11月に新興事業の資金調達、新規産業の育成を目的として東京証券取引所による「マザーズ(Mothers)」市場が開設され、平成12年6月にはナスダック・ジャパン・プランニング株式会社と大阪証券取引所との提携により「ナスダック・ジャパン」市場が開設される等新興企業向け株式市場が整備されつつある。
これらの動きにより、これまで主に店頭市場に限られていたベンチャー企業向け株式市場の選択肢も広がり、平成12年における店頭市場、東証マザーズ、ナスダック・ジャパンそれぞれの新規公開件数は97件、27件、33件となり、合計では過去最高を記録した。
順調な立ち上がりを見せた新興企業向け株式市場であるが、平成12年における各株式市場の売買代金を見ると順調に推移しているとは一概には言えない(第212-18図)。
東証マザーズ、ナスダック・ジャパンは、ベンチャー企業向けに単に上場基準を緩やかに設定しただけでなく、上場会社に対して投資家向け説明会の開催を義務づけるなどディスクロージャー面での配慮をしているが、1)証券会社による公募価格の値付けの正当性、2)証券取引ルールの執行体制の不十分さ等が指摘されており、より多くの投資家を自らの市場に呼び込み株式の流動性を高めるための一層の工夫が求められている。
このように株式や私募債等による資金調達を行う場合、企業の情報開示が進めばそれだけ資金調達の可能性が広がることから、情報開示は重要な意味を持つ。
なお、我が国では、商法上財務情報を年1回開示することがすべての株式会社に求められているが、現在、公告の手段として官報又は日刊新聞への掲載しか認められておらず、中小企業にとってコスト負担となっている。
しかし、現在、法制審議会等ではインターネットによる公告など中小企業にとっても費用対効果の観点から合理的な手法を許容していくことが検討されているところである。こうした制度整備とあいまって、中小企業がより積極的に財務情報を開示し、資金調達に積極的にいかしていくことが期待される(注11)。
第212-17図 東京都が実施したCLO発行スキーム
第212-18図 平成12年における新興企業向け株式市場の売買代金
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■注1 “Does distance still matter? The information revolution in small business lending”(2000)Working Paper 7685, National Bureau of Economic Research
■注2 National Survey of Small Business Finance (NSSBF, 1993)
■注3 このアンケートでは、いつ、どの金融機関に融資を断られたかを中小企業に聞いていないため、情報把握・開示と融資の可否の相関を直接計算することはできない。
■注4 ある金融機関における当該商品の中小企業向け債権に占める割合は、2000年8月時点で0.3%である。
■注5 信用保証協会は全国52か所(概ね各都道府県ごと)に設置されており、担保力などが不足する中小企業が民間金融機関から事業資金を借り入れる際に、その借入債務を保証し、万一債務者である中小企業者が返済不能になった場合、中小企業者に代わって債務を返済する。信用保証協会が代位弁済をするリスクについては、中小企業総合事業団が再保険(信用保険)を行っている。
金融機関の中小企業向け貸出における保証利用実績は、平成12年6月末の段階で約42兆円であり、中小企業向け貸出残高約321兆円の13%を占めている。
■注6 また、同時に、大型倒産、災害、金融機関の破綻等の環境変化に対応した無担保保証の利用限度額を、一般無担保保証との合計で1億円から1億6,000万円に引き上げるとともに、他の事業者による事業活動の制限があった場合に本保証制度を適用する範囲を直接取引関係のない中小企業者にも拡大した。
■注7 売掛債権等債権流動化のためには、平成10年10月から運用されている、「債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」による債権譲渡登記を利用するのが便利である。しかし、債権譲渡登記の申請は全て東京法務局に対して行わなければならず、また、債権が他者に譲渡されていないか等を確認する場合も、同法務局に書面で申請して証明書を入手する等の方法によることとされており、一刻を争う企業金融の要請には十分対応できていないとの指摘があった。
平成12年度から、債権譲渡登記のオンライン申請を可能とするとともに、債権譲渡登記に関する情報をインターネット経由で迅速に入手できるようにするための取組が早急に進められており、中小企業の資金調達手段の多様化に資することが期待される。
■注8 SPVが譲渡された資産を担保に発行するABS(Asset Backed Securities)やABCP(Asset Backed Commercial Paper)等の証券のこと。
■注9 CLO(Collateralized Loan Obligation、ローン担保証券)とは、複数の企業に対する金融機関の貸出債権の価値を一体的に評価し、それを裏付けとして発行された証券のこと。
■注10 第2回の債券発行では、信用保証協会が代位弁済を行わない債券も機関投資家向けに発行されている。
■注11 意欲ある中小企業が自主的に計算書類の公告を行うことができるためには、漸進的で受け入れ可能な仕組みを整備することが重要であり、このような観点から中小企業向けの会計基準等を策定しようとする民間の動きが高まっている。