2000年(平成12年)版中小企業白書のポイント 戻る

2000年(平成12年)版白書は、平成11年に行われた中小企業基本法の改正後に作成される最初の白書であり、以下の基本理念を踏まえて作成されている。

新しい中小企業政策の基本理念
  • 新たな中小企業の位置づけ
    「我が国経済の活力の源泉0 」

  • 新たな政策理念
    「中小企業の多様で活力ある成長発展」

<経済社会の構造変化と中小企業の対応>(第1部第1章)

  • 平成10年秋を最悪期とする信用収縮の影響は改善したものの、平成11年度も、中小企業を取り巻く経営環境は厳しく、景況の回復の足取りは大企業と比較して重かった。 厳しい環境に加えて、中小企業の景況の回復が遅れている理由として考えられるのが、情報技術革新、資金調達環境の変化など経済社会の構造変化への対応の遅れである。

  • そこで、第1部第1章では、小規模企業をはじめとする中小企業が、経済社会の構造変化に対応し、以下の諸課題を克服しようとする姿を描く。
    • 業種横断的課題
      −情報技術革新への対応(第1節)
      −金融システム改革等への対応(第2節)
      −大企業の雇用慣行の変化・アウトソーシングの進展への対応(第3節)

    • 業種ごとの課題
      −製造業における製品差別化競争への対応(研究活動、ISO等に対する取組、第4節)
      −流通業における消費者ニーズへの的確な対応(第5節)
      −少子・高齢化に関連した家事支援サービス業の実態分析(第5節)
【情報技術革新】
  • 中小企業における情報機器の導入状況は次のとおり。

    −パソコン(6割)大企業95%(主な用途は、経理、給与管理、在庫管理)
    −電子メール(6割)大企業8割
    −ホームページ(4割)大企業7割
    −インターネットによる企業間ネットワーク(2割)大企業2割
    −CAD/CAM(コンピュータによる設計)(製造業の1割)大企業6割

  • これまで情報システム関連投資を行った中小企業の85%が、何らかの問題があると認識しており、具体的には、社員の活用能力向上、多面的な情報の収集などが課題になっている。
第1図 情報システム関連投資有無別、情報化を進めるに当たっての課題

<事例1 小売業の発注、検品、配送などの情報処理を共同化>

S社(北海道、従業者数1人)は、4社の小売業の発注の共同情報処理、共同発注、検品など共同流通加工、共同配送を行うために作られた小売主導の共同情報物流処理事業会社である。いわゆる共同仕入ではなく、仕入先・価格は個々の小売業ごとに異なっているが、S社のコンピュータで一括して情報処理し、S社の倉庫でバーコード(JANコード)を利用したハンディスキャナによる検品を行って、共同配送している。
 これにより、数量の検品だけではなく、値札が売値と合っているかなど、細かな検品も行うことができるようになったため、個々の店舗に納品する際の検品は廃止しており、人員削減、従業者1人当たり売上高の増加を実現することができ、参加小売業は、店単位で赤字であったものが、売上高経常利益率が10%以上となった店舗も出てきた。


【金融システム改革・規制改革などの構造変化】
金融システム改革は、信用収縮などとともに中小企業の資金調達環境に多大な影響を及ぼしている。
中小企業は、最多借入先の変更や事業計画の策定等、資金調達のあり方を再検討する必要に迫られている。
第2図 最多借入先変更の有無(規模別、平成8年度以降)
第3図 最多借入先変更の理由
第4図 事業計画の有無(規模別)
第5図 事業計画を策定するようになったきっかけ

 

【拓銀をメインバンクとしていた中小企業の得た教訓】
  • 「金融機関は破綻しない」といった借り手側の金融機関に対するイメージはここ数年で大きく変化した。
  • 主な対応策は、
    −政府系金融機関、信用保証制度の活用  
    −借入先の分散  
    −キャッシュフローを重視した事業計画の見直

 

【雇用慣行の変化、アウトソーシング】
  • 終身雇用制度等の日本型雇用慣行に変化の兆しが見られ、企業規模間で雇用慣行の違いが小さくなる方向にある。中小企業にとっては人材確保のチャンスである。
  • 事業再構築等のためにアウトソーシングを行う企業が増え、これを受託する中小企業も増加している。
第6図 若年正社員の確保状況
第7図 大卒新規学卒者の就職動向
第8図 大企業がアウトソーシングを行っている分野
第9図 事業所向けアウトソーシング関連ビジネスの事業者数と従業者数の推移

【中小製造業】
  • グローバルな製品差別化競争の進展、顧客ニーズの多様化により、製造業では商品差別化等のため研究開発、ISO取得等の経営革新が重要となっている。
  • 中小企業は研究に関する経営資源を自前で確保することが困難ではあるが、研究開発を行っている中小企業の75%は、外部組織と連携して技術相談、共同研究などに取り組んでいる。
第10図 外部組織と提携している企業割合(製造業)
第11図 他機関との連携の効果(中小製造業)

 

【中小流通業】
  • ショッピングセンターや商店街など商業集積間の競争が激化しているが、商店街や中小小売店に対する消費者の評価は厳しい。
  • 顧客満足度を向上させるため、商店街としては「商店街マネージメント」、「タウンマネージメント(TMO)」の導入等が、個別の店舗ではPOSデータの活用等の経営革新が不可欠である。
第12図 消費者の商店街及び大規模小売店舗に対する不満

<事例2 土地区画整理事業によりワンストップショッピングが可能となった商店街>

 H商店街(宮崎県)は、以前は旧国道沿いに立地していたが、バイパスが建設されてから活力が低下したため、バイパス沿いに土地区画整理事業が行われ、新たに誕生した商店街である。旧商店街には食料品等の業種が不足していたが、新しい商店街は、既に存在していた大型店に隣接することにより、不足業種の解消に取り組んだ。この取組により、商店街でワンストップショッピングが可能となり、ビジネスホテル等の新業種も立地し、消費者の利便性が向上した。商店街の活性化により宅地開発も活発に行われ、街全体が活性化し、商店街の売上げの向上に貢献している。

【家事支援サービス】
  • 世界に先駆けて少子高齢化が進展している我が国では家事支援サービスに対する需要の増加が見込まれる。
  • 中小企業が経営する保育園は、サービスが多様でコストも低く、増加する需要への対応が期待される。 注:料金は補助金がなかったため高かった。厚生省は、平成12年3月中小企業等も認可保育所の設置主体となりうるという規制緩和を実施。
  • 介護保険制度のスタートにより、在宅介護サービスの 「民間企業」部分の成長も期待さ
第13図 保育園の運営主体別のコスト格差(全国平均、児童1人あたり月額)
第14図 介護サービスの実施主体

 

<創業・経営革新>(第1部第2章)

●我が国の創業・経営革新の事業環境が整備されている状況を分析する。

<米国の事業環境>

  • 中堅・中小企業向けの直接金融市場(ナスダック)が活発。
  • ベンチャー企業に投資するベンチャーファンド(基金)が発達。
  • 大学からの技術移転が活発
      など 

<我が国の事業環境整備>

  • 金融システム改革法(平成10年12月)により直接金融市場が活性化。
  • 中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律(平成10年10月)により、ベンチャーファンド(基金)の設立を容易に。
  • 大学等技術移転促進法(平成10年8月)により、技術移転機関 (TLO)の設置を促進。既に10機関が設立済。
  • ベンチャー支援策を充実(平成12年度において講じようとする中小企業施策の中で、以下を実施)

 −中小企業・ベンチャー総合支援センターの整備 
 −都道府県等中小企業支援センターの整備 
 −地域プラットフォ−ムの整備 
 −エンジェル税制の拡充 
 −創業・ベンチャー国民フォーラム 
 −創業セミナー・創業塾の開催 
 −ベンチャープラザ・ベンチャーフェア事業 
 −ベンチャー・ワン・ストップ・サービス提供事業
    など  

(参考):中小企業経営革新支援法(平成11年7月)に基づく「経営革新計画」承認企業数推移

 

<中小企業の動向>(第2部)

  • 平成10年秋を最悪期とする金融システム不安・信用収縮が中小企業に与えた影響と、中小企業の対応、政府の対策等について分析した。
  • 中小企業の景況は、緩やかに改善を続けているが、大企業と比較して回復の足取りは重い。
  • 信用収縮については平成10年秋頃と比較して、企業の貸出態度に対する懸念が薄らいでおり、中小企業についても、資金繰りに対する懸念の改善が見られる。
第15図 規模別業況判断DIの推移
第16図 中小企業における資金繰りDIの推移


  • 平成10年秋に特別信用保証制度を実施してから、倒産件数は急速に低下した。
  • 特別信用保証制度を利用する企業の生産性は、利用していない企業よりも低いものの一般の信用保証を利用している企業よりも高い。これは、生産性の低い中小企業を温存し、産業界における新陳代謝を阻害したという批判は当たらないことを意味する。 
第17図 政策が実施されなかった場合の推定倒産件数
第18図 従業者一人あたり売上高(信用保証利用状況別)

<中小企業政策の転換>(第3部)

中小企業基本法改正(平成11年12月)の考え方の要点を整理するとともに、新しい中小企業の定義に基づき、企業数、従業者数等のデータを再整理した。

 

  これまでの中小企業政策 新しい中小企業政策
中小企業のイメージ 二重構造の底辺・弱者 我が国経済のダイナミズムの根源
政策理念 大企業との格差是正 独立した中小企業の多様で活力ある成長発展
政策の柱 中小企業構造の高度化
事業活動の不利の補正
経営革新・創業促進、経営基盤強化
セイフティネット整備


変更後の中小企業の範囲
  製造業その他 卸売業 小売業 サービス業
旧基本法
の定義
1億円以下
300人以下
3千万円以下
100人以下
1千万円以下
50人以下
新基本法
の定義
3億円以下
300人以下
1億円以下
100人以下
5千万円以下
50人以下
5千万円以下
100人以下
※中小企業金融公庫法等においては、政令により旅館業は資本金5千万円以下または従業員200人以下、ソフトウェア業・情報処理サービス業は、資本金3億円以下または従業員300人以下を中小企業としている。   第19図 新しい中小企業の定義

資料:総務庁「事業所・企業統計(平成8年)」再編加工

※小規模企業を始めとする中小企業の参考に資するため、白書全体では、36の創業関係の事例を始めとして、様々な経営上の課題に係る165の事例を紹介している。

 

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