第2節 中小企業をめぐる物流環境の変化

1 物流需要の増大と中小企業への影響

●近時の物流量は経済成長の伸びを超える勢いで増加しており,多頻度小口配送の進展や物流に伴うサービスの高度化等,物流の内容も高度化している。
●物流需要の質・量両面における増大によって,中小企業の物流コストは急激に上昇しており,中小企業の経営の圧迫要因となっている。また,物流需要の増大に対応しきれない中小企業では,配送や取引を縮小・停止する事態が生じており,物流問題が事業活動の阻害要因となっている。
●こうした中小企業の物流対応力の限界は,中小企業において物流効率化への取組みが従来不十分であったことにより,一層影響が深刻なものになった。中小企業においては,物流管理部門設置・物流会計導入等の物流管理合理化が遅れており,資金調達上の制約等によって機械化・情報化投資等物流効率化投資が従来積極的でなかった。また,物流効率化のための人材不足が問題となっている。

(1)物流需要の増大

 近時の物流量は経済成長の伸び率を超える勢いで増加しており,多頻度小口配送や物流に伴うサービスの進展等,物流の内容も高度化している。質・量両面における物流需要の増大は,わが国物流量の約8割を占める(運輸省「全国貨物純流動調査」60年)中小企業の物流においてもみられる傾向であり,このようななかで,中小企業は物流に関して各種の問題に直面している。

@多頻度小口配送の進展

 消費者ニーズの多様化や企業の在庫の軽減傾向等により多頻度小口配送が進展しており,中小企業事業団「企業物流問題実態調査」(3年12月)によれば(注:以下,特記なき限り同調査に依拠),多品目少量配送,多頻度配送への要求が5年前と比べ厳しくなったとする中小企業が多くなっており,ジャストインタイム生産・物流の浸透から時間指定納入やリードタイム短縮要求も強まっている。今後についても,多品目少量配送,多頻度配送,リードタイム短縮等への要求がより厳しくなるとする企業が過半を占め,物流条件が一層厳しくなるものと予想される(第2-2-1図)。

A物流に伴うサービスへの要求の高まり

 多頻度小口配送の進展とともに,物流に伴うサービスへの要求度が高まっている。納品先から要求が強まっているサービスとして,卸売業では大企業・中小企業とも「納品時の店頭での値付け」,「立会い検品」,「店内陳列作業」が多くなっている。小売業の側からみても,要求を強めているサービスとして「店内陳列作業」,「立会い検品」,「納品時店頭における値付け」が多くなっており,このことが裏付けられる(第2-2-2図)。
 こうした作業要請に対して,「現状以上のサービスについては有料化を申請する」とする企業が大企業で19.5%,中小企業で21.5%となっているものの,「他社が行う以上,自社も最大限対応せざるを得ない」とする企業が大企業で51.2%,中小企業で51.7%,また,「他社との差別化や取引先確保にとり有力な手段であるから,無償でサービスしていきたい」とする企業が大企業で4.9%,中小企業で15.1%となっている。

(2)物流需要増大の影響

@物流コストの上昇

 中小企業の物流コストは急激に上昇しており,対前年比で物流コストは中小製造業で14.6%増,中小卸売業で12.0%増となっており(中小企業庁調べ),物流上の問題点として「物流コスト上昇」を指摘する中小企業は5年前の43.4%から58.5%へと大幅に増加している。その理由として,「多品種少量物流の浸透」,「納入頻度の上昇」をあげる企業が多く,次いで,人件費高騰による「一件当たりの運送費の上昇」をあげる企業が多いことから,物流の多頻度少量化等の物流内容の高度化や物流要員の確保難等がコスト上昇の要因となっているものと考えられる(第2-2-3図)。
 また,コスト上昇に関連して,物流に伴うサービスを適正に評価せず無償であるとみなす傾向が問題となっている。物流に関する契約条件およびコストの算定方法は必ずしも明確ではなく,取引先との物流条件の契約状況についてみると,「すべての取引先と契約」している者は中小製造業で7.0%,中小卸売業で3.7%と少なく,「全く契約していない」とする者が5割に上っている(中小企業庁調べ)。物流コストの算定にあたり,「物流作業にかかわる全費用を抽出」して行う中小企業は製造業で7.0%,卸売業で3.7%とわずかであり,納品側において物流サービスにかかわる的確なコスト算定を行っていない上,納品先企業もそのコストを適正に評価し支払うことをしない傾向がある。このため,物流需要の増大に伴うコスト上昇が中小企業経営を一層圧迫することとなっているものと考えられる。

A配送・取引の縮小停止

 物流需要の質・量両面での増大に対応しきれない中小企業では,配送や取引を縮小または停止する事態が生じている。
 中小トラック運送業者においては,運転手の不足や道路混雑等によって荷主の運送要求にこたえるのが困難となっている。従業員30人未満の中小トラック運送業者のうち,48.1%が運送を断らざるを得ない事態があったとしている(中小企業庁調べ)。
 中小製造業や中小卸売業では,自家配送能力の限界から,納品先との取引を停止する場合が生じており,得意先との取引を停止した経験を持つ中小企業は,製造業で14.6%,卸売業で40.0%に達している(中小企業庁調べ)。また,物流条件が厳しくなる中で「Aランクの格付けの得意先には対応する」とする中小卸売業は35.1%に上り,物流問題が取引関係や事業活動に影響を及ぼしていることが分かる。

(3)中小企業の物流の現状

 物流需要の質的,量的増大に伴って顕在化した中小企業の物流対応力の限界は,これまで中小企業において物流効率化への取組みが不十分であったことにより,一層影響が深刻なものとなったものと考えられる。

@物流管理合理化への取組みの遅れ

 中小企業の物流は,これまで製造・販売に付随する行為とみなされがちであったため,物流部門設置や物流会計導入等の企業物流の合理化・効率化への取組みは必ずしも十分ではなかった。
 卸売業では在庫・物流機能が重要なウェイトを占め,物流と取引が密接に関連しているため,納品先との取引関係における融通性を重視するあまり,効率性・合理性を度外視した物流を行ってきた面がある。また,製造業においては,中小部品等製造業者からの納品物流が納品先製造業者の生産工程と一体化し,納品先企業の生産ラインで必要な部品等が必要な時に用意されている必要があるため,中小部品等製造業者と納品先製造業者の物流については,コストや効率性は軽視されがちであった。
 こうした物流合理化への取組みの遅れを反映し,物流コスト管理方法に関して,大企業においては「別会社方式を採用」とする者が卸売業で14.0%,製造業で16.3%,「物流部門があり営業部門と対等の位置づけになっている」とする者が卸売業で28.1%,製造業で30.3%であるのに対し,中小企業においては「物流部門が特に存在しない」とする者が,卸売業で45.9%,製造業で59.0%と物流管理体制の組織上の整備が進んでいない。物流部門を会社内部に設置していても,「営業部門と対等の位置づけとなっている」企業が卸売業で8.2%,製造業で4.3%に過ぎず,「営業部門の一部門となっている」とする者は卸売業で38.8%,製造業で25.6%と,物流部門の独立性が低くなっている(第2-2-4図)。
 また,物流コスト算定方法に関して,中小企業においては「とくに物流コストの把握をしていない」とする者が,卸売業で31.0%,製造業で27.7%となっており,物流コストの把握を行っている場合でも「配送・保管に係わる直接把握できる費用のみ計算している」とする企業が卸売業で49.2%,製造業で44.2%と多く,「損益計算書の営業費の費目について,物流作業に係わる費用をすべて抽出し物流コストを算定」する企業は,卸売業で11.4%,製造業で7.4%と少なくなっている。

A機械化・情報化への取組みの遅れ

 中小企業は,大企業に比べ物流の機械化・情報化が立ち遅れており,物流問題への対処が困難となっている。
 入荷・保管・荷揃え・出荷等に係わる荷役作業の機械化への取組み状況について,大企業においては,「機械化投資を積極的に行っている」とする者が,卸売業で34.5%,トラック運送業で46.8%,製造業で45.4%となっているのに対し,中小企業においては,卸売業で17.9%,トラック運送業で41.5%,製造業で19.1%となっており,機械化の立ち遅れがうかがえる。
 また,コンピュータ導入等の情報化は,発注動向に即した適正な在庫管理,効率的な出入庫ロット・頻度等の分析・策定,配送管理へのコンピュータの適用による効率的な出荷配送を可能とすることから,個別企業の物流能力向上および物流コスト削減にきわめて有効な手段であると考えられる。しかしながら,物流情報化のため情報機器を導入している企業は,大企業では卸売業64.2%,トラック運送業75.3%,製造業79.8%であるのに対し,中小企業では卸売業30.1%,トラック運送業38.4%,製造業30.2%にとどまり,情報化の立ち遅れがうかがえる。

B物流効率化投資の困難性

 中小企業は大企業に比べ資金調達力が劣ること等から,物流対策として「物流効率化投資を行う」とする者は,卸売業で大企業の43.5%に対し中小企業では11.3%となっており,また,製造業において,今後2〜3年の間に物流効率化投資への意欲を持っている企業は,大企業の65.2%に対し中小企業では26.1%に過ぎず,大きな隔たりが見られる(中小企業庁調べ)。
 また,物流効率化投資に当たり,地価高騰がとくに都市部での用地確保を困難にしており,「地価高騰による物流施設建設の困難化」を問題とする中小企業は,卸売業で12.1%,トラック運送業で22.9%,製造業で9.3%となっており,用地取得の困難化も物流効率化の障害となっていることが分かる。

C物流作業要員,物流効率化のための人材の不足

 わが国の労働需給の引締まりを背景とした物流作業要員不足の中で,中小企業は,勤務条件,報酬,企業イメージ等の点で大企業に比べて不利な状況にあり,梱包・仕分等の物流作業に関して人手に頼る傾向が強いことから,労働力不足の影響は大きなものとなっている。
 物流作業関連の労働力確保が「困難になっている」とする中小企業は卸売業で72.3%,トラック運送業で79.3%,製造業で57.9%となっており,「トラック等運転手」を確保困難とする中小企業は卸売業で38.2%,トラック運送業で82.8%,製造業で35.8%,「荷役作業要員」を確保困難とする者は卸売業で32.0%,トラック運送業で14.1%,製造業で29.3%となっている。
 また,労働力不足は量的な面だけでなく,物流効率化のための人材の不足等質的な面においても,中小企業の経営上の問題点となっており,物流効率化のための「情報・ノウハウ等を持つ人材の不足」を問題とする中小企業は卸売業で27.6%,トラック運送業で50.1%,製造業で19.9%となっている。
 以上のような,物流作業要員不足,物流効率化のための人材不足が,物流需要の質・量両面での増大に対応しきれず配送・取引を縮小または停止する中小企業を生む一要因となっているものと考えられる。

2 中小企業の物流問題への取組み

(1)個別金業における取組み

●中小企業においても,物流管理部門設置,物流会計導入等物流管理の合理化に努め,機械化・情報化に努める必要がある。荷役作業等の機械化により物流作業の効率向上及び省力化が達成でき,また,情報機器導入等により適正な在庫管理,効率的な出入庫ロット・頻度の分析・策定,ルート配送等の効率的出荷形態の導入が可能となる。
●また,発注側企業が場当たり的な発注を避け,商品の回転率に即した適切なリードタイム・頻度の発注を行えば,納入側・運送側企業は輸配送の計画化等が可能となり,その上で,納入側企業・貨物運送業者が,@輸送・配送の計画化,Aルート配送等の輸送・配送の巡回化等を行うことで輸送効率が大きく改善されることから,受発注・配送の方法・形態の改善について各企業が取り組む必要がある。
●さらに,物流は製造・販売に不随するもので,物流に伴うサービスは無償であるとする考えがあるが,物流に付帯するサービスについて,契約条件及びコスト算定方法を明確にし,納品先に適正なコスト負担を求めていくことも重要である。

@物流管理への取組み

 前述のとおり,中小企業においては物流管理合理化への取組みは必ずしも十分ではなく,物流部門が欠如していたり営業部門への従属性が高い等物流管理体制の組織上の整備が遅れている上,物流コスト算定方法に関しても,的確な物流コストの把握を行っている企業は決して多くない。しかしながら,近時の物流コスト上昇から「物流管理部門の設置」に物流合理化・効率化策として取り組む中小企業が卸売業で5.3%,製造業で5.5%となっており,今後,中小企業においても,物流部門設置,物流会計導入等物流管理合理化に努めていくことが重要である。

A機械化・情報化への取組み

 中小企業においても,物流効率化に当たり荷役作業の機械化が重要であり,今後,「荷役機械化により倉庫内作業方式の改善」を図るとする中小企業は,卸売業で20.9%,トラック運送業で25.0%,製造業で18.0%となっており,機械化投資に前向きの姿勢がうかがえる。なお,機械化による物流作業効率向上によって貨物の滞留が回避でき,保管施設がより有効に利用できることから,「物流機械(無人フォークリフト等)導入」を図るとする中小企業が,卸売業で6.9%,トラック運送業で6.8%,製造業で5.8%となっている。
 また,個別企業の物流能力を高め物流コストを削減する上で情報化は有効な手段であり,情報機器導入等により,発注動向に対応した適正な在庫管理,効率的な出入庫ロット・頻度等の分析・策定,ルート配送等の効率的な出荷配送形態の導入が可能となり配送費を削減できる。
 資金的・人的制約等から中小企業の情報化は大企業と比べ立ち遅れているものの,情報機器を導入していない中小企業においても,「導入予定」の企業が卸売業で12.4%,トラック運送業で9.5%,製造業で10.9%,また,「検討中」の企業が卸売業で26.9%,トラック運送業で30.1%,製造業で23.7%となっており,中小企業においても物流情報化に前向きの姿勢がうかがえる。
 情報化を図っている分野としては,卸売業・製造業では,「受発注管理」,「在庫管理」,「販売管理」が大企業・中小企業ともに多く,トラック運送業では「受発注管理」,「取引先との決済」,「配車管理」が多くなっている。今後については,製造業・卸売業では「在庫管理」,「効率的な出入庫ロット・頻度など出入庫計画の解析・策定」に情報機器を活用したいとする中小企業が多く,トラック運送業では「配車管理」,「輸送計画の分析・策定」の情報化に取り組みたいとする中小企業が多くなっている(第2-2-5図)。
 情報化のメリットについては,製造業・卸売業では「物流関連事務作業の合理化および省力化」,「在庫量の過不足の排除による在庫費削減」を指摘する企業が大企業・中小企業ともに多く,トラック運送業では「物流関連事務作業の合理化および省力化」,「増加する伝票処理」をあげる企業が多くなっている。また,情報化実施上の問題点として,「情報機器を操作し応用する人材がいない」,「情報機器に関する知識不足等により,自企業に適した情報機器が導入できない」,「情報機器を導入するための資金が不足している」を指摘する中小企業が多く,資金力・人材・情報面での不利が情報化の障害となっていることが分かる(第2-2-6図)。

〈企業物流合理化・効率化事例〉

 A商社(兵庫県,資本金3000万円)では,物流のコスト管理を徹底するために,61年に物流部門を分離し100%子会社を設立し,元年2月に延ベ3000坪に及ぶ新物流センターを完成した。大型コンピュータ導入によって物流加工の処理スピード向上を図るとともに,ピッキング(仕分け作業)に要する時間および労働力の短縮削減に成功した。また,値付け,陳列は小売店の機能であるとして行わず,検品についても原則応じないこととしている。

B受発注・配送の在り方の改善

 輸送効率向上のため,発注側企業と納入側企業・貨物運送業者の両サイドにおいて,受発注・配送の方法・形態の改善に取り組むことが重要である。
 場当たり的な発注がなされた場合,納入側企業・貨物運送業者は,低積載率のトラックによる緊急配送を行わざるを得ず,発注量の変動が大きいと所要のトラックが確保できず輸配送に応じられない事態も生ずる。発注側企業が商品の回転率に即した適切なリードタイム・頻度の発注を行えば,納入事業者・運送業者は配送管理が容易となり,輸配送の計画化・輸配送量の平準化(輸配送量の波動を最大限度抑制すること)が可能となる。したがって,発注側企業においては,@一回毎の発注量の平準化,Aリードタイム(発注から納品までの時間)の適切化,B配送頻度・配送先・納入日等の事前明確化を行うことが望ましい。
 納入側企業・貨物運送業者においては,@輸送・配送の計画化,Aルート配送(効率的な配送ルートに基づいて巡回サービスする配送方式)等の輸送・配送の巡回化,B帰り便の利用による空車の削減等,トラックの積載率向上に積極的に取り組む必要がある。

〈受注・配送方法等改善事例〉

 日用雑貨卸を営むB社(熊本県・資本金200万円)では,輸配送量を標準化するため輸送・配送の計画化を行っており,一週間の各曜日毎に効率的な配送ルートを作成し,傭車による配送を行っている。さらに,取引先に対して「受注日の翌日配送」という原則を契約上明確化することで,不規則な輪配送を回避し,輸送効率の向上を図っている。

 輸送・配送の計画化に関して,「受注を計画化」している中小企業は,卸売業で20.6%,トラック運送業で30.2%,製造業で21.7%となっており,出荷量の大量化・平準化のために「配送ロットの大口化」に取り組むとする企業は,卸売業で14.6%,トラック運送業で22.0%,製造業で16.1%,「納期の標準化」を図るとする企業が卸売業で19.7%,トラック運送業で22.2%,製造業で26.5%となっている。
 輸送・配送の巡回化への中小企業の取組みについては,「ルート配送」に取り組む企業は,卸売業で14.6%・トラック運送業で13.2%,製造業で4.5%となっている。また,トラックの積載率向上のため,中小トラック運送業の15.3%が混載(一両のトラックに複数社の物品を積み合わせること)を実施しており,28.1%が「可能な限り多箇所の積み合わせ」を行っている。
 なお,輸送効率,荷役の省力化等の観点から,一貫パレチゼーション(パレットに荷物を積んでユニット化しパレットごとトラック・貨車に積載・運搬する輸送方式)等のユニットロード化を推進することが有効であり,これは実施者が多いほど,パレット(品物を運搬・貯蔵するための荷台)回収効率,投資効率等において規模のメリットが働くことから,業界全体での取組みが欠かせない。その際,使用されるパレット等流通器具は日本工業規格に適合したもの等に統一を図ることが重要である。また,商品サイズをパレットサイズに合わせて見直すこともユニットロード化の推進に資するものと考えられる。

C取引慣行の改善

 物流は製造・販売に付随するもので,物流に伴うサービスは無償であるという考え方があるが,「納品時店頭における値付け」,「納品単位の再包装(袋詰め等)」,「段ボール毎等の内容照明書の添付」といった物流付帯サービスについて,契約条件及びコスト算定方法を明確にし,納品先に対し適正なコスト負担を要求していくことが重要である。
 物流条件について,「イレギュラーな発注・配送の際の取決め」,「返品の扱い」といった物流条件の明確化を望む企業が多いにも関わらず(第2-2-7図),「納入側との力関係により,納入側の要求に従わざるを得ず,事前に明確な配送条件等を取り決めることができない」とする中小企業は,卸売業で44.6%,トラック運送業で58.2%,製造業で47.0%となっており,中小企業の取引関係における交渉力の弱さが物流条件の明確化の障害となっていることが分かる。また,「商慣行上,仮に明確な配送条件等を契約によって取り決めたにしても遵守されない」とする中小企業が,卸売業で12.5%,トラック運送業で15.9%,製造業で12.3%となっている。
 契約条件の明確化は原則として各事業者の主体性に委ねられるべきものであるが,中小企業は取引関係において交渉力が弱いことから,行政としても,標準的契約方法の提示,納品先事業者に対する物流コストの適正負担の指導を適宜行っていくことが重要である。

(2)中小企業の共同による取組み

●個別の中小企業による物流効率化投資は,経営基盤の脆弱な中小企業にとって負担が大きいことから,複数の中小企業が共同して物流効率化投資を実施することは有効な対応策である。また,物資の集荷や配送を共同で実施することで,輸送ロットの大口化,帰り便の活用,交錯輸送の回避等が可能となり,さらに,共同物流センターを設置することにより,集荷・配送に加えて保管・物流加工・仕分の共同化も可能となり,各企業の物流の一層の効率化と高度な物流サービスへの対応が可能となる。
●その際,共同配送に伴って,受発注データから在庫データまでを統合した共同物流情報ネットワークを構築することで,発注状況を踏まえた適正な在庫管理や,個々の発注に的確に対応した配送や納品を行うことが可能となり,物流共同化の効果を一層高めることができる。さらに,地域流通VANや業界VAN等の生産や受発注にかかわるネットワークと連携することで,共同情報ネットワークはより効果的となる。
●なお,物流は,部品製造業者から組立製造業者,製造業者から卸売業者,卸売業者から小売業者等の様々な段階において発生するものであり,納品先や取引内容等に応じ適切な形態の協同・連携を図ることが重要。

 個別の中小企業による物流効率化投資は,経営基盤の脆弱な中小企業にとって負担が大きいことから,複数の中小企業が共同して物流効率化投資を実施することは有効な対応策である。
 物資の集荷や配送を共同で実施することで,輸送ロットの大口化。帰り便の活用,交錯輸送の回避等が可能になり,トラックの積載率の向上等が図れ,さらに,共同物流センターの設置により,集荷・配送に加えて保管・物流加工・仕分の共同化も可能となり,各企業の物流の一層の効率化と高度な物流サービスへの対応が可能になる。
 また,異なる商品・製品を販売・生産する企業の共同化は,納品先の多様なニーズに対応する有効な手段である。とくに,卸売業においては,多種類の商品を取り扱う総合スーパー,コンビニエンスストア等が増加していることから,多種多様な商品を扱う企業が連携・共同することで,全体の品ぞろえが充実し取引先の多様なニーズに応えることが可能となる。
 その際,共同配送に伴って,受発注データから在庫データまでを統合した共同物流情報ネットワークを構築することで,発注状況を踏まえた適正な在庫管理や,個々の発注に的確に対応した配送や納品を行うことが可能となり,物流共同化の効果を一層高めることができる。さらに,地域流通VANや業界VAN等の生産や受発注にかかわるネットワークと連携することで,共同情報ネットワークはより効果的となる。
 なお,物流は,部品製造業者から組立製造業者,製造業者から卸売業者,卸売業者から小売業者等の様々な段階において発生するものであり,納品先や取引内容等に応じ適切な形態の協同・連携を行うことが重要である。大企業との連携も,そのノウハウや資金調達力を活かせる点で意義を持つと考えられる。

@同業種企業による物流共同化

 同業種の中小企業は,物流の内容や条件(荷物の種類,納品先の事業者の業種,配送頻度,配送時刻,配送距離,物流加工の内容等)が近似しているため,物流共同化が比較的容易である。
 同業種企業による物流共同化を「実施済み」とする中小企業は,トラック運送業を除いて卸売業で4.3%,製造業で4.7%であるものの,未実施だが「検討中」とする者が,卸売業で16.7%,製造業で10.7%,トラック運送業で29.3%となっており,物流共同化に対する前向きの姿勢がうかがえる。
 共同化のメリットとして,「方面別・輸送業者別の仕分作業が不要化し,定時に一度の荷渡しで済むようになった」と出荷業務の効率化を指摘する中小企業が卸売業で37.5%,製造業で47.5%となっており,「荷役・保管のためのスペースの大幅削減による物流施設費削減」を指摘する企業は卸売業で12.5%,製造業で15.0%となっている。また,中小製造業の32.5%は「運賃清算事務および統一送り状採用等発注事務の合理化」をメリットにあげ,中小トラック運送業は24.0%が「物流関係従業員数の削減に役立った」,23.1%が「集荷が一カ所で一括して行えるようになり作業効率が向上した」としている。
 今後検討する共同化については,「一社では大型投資ができないので,共同投資によって物流センターを建設したい」とする中小企業が,卸売業で25.8%,製造業で16.5%となっており,納品先企業の多様なニーズに対応する観点から,「異なる商品・製品を販売・生産している企業と一括納入体制を組みたい」とする中小企業は,卸売業で21.0%,製造業で31.5%となっている。また,配送効率向上等の観点から,中小卸売業の24.2%が「対応が困難な得意先や地域の配送を他の卸売業者に委託したい」としており,中小トラック運送業の33.3%が「特定顧客に対する共同物流」,19.4%が「配送地域の分担」を検討している。

〈卸売業者共同化事例〉

 中小日用雑貨卸売業者12社(石川県)が共同配送センターを設け,参加企業から商品を集荷し,北陸三県の総合スーパーの店舗等小売店に対し一括配送している。各小売店からEOS(オンライン受発注システム)を通じて発注を受けた参加業者が商品を小分けして所定大の段ボールに詰め一定期限までにセンターに届けると,センターでは自動仕分機械によりトラックに積載し配送する。企業は自ら各店舗に配送するのに比べ物流費を節約でき,参加企業全体として総合的な商品構成が図れるようになったことから,同業他社との差別化,製造業・運送業の問屋業務進出への対抗が可能となっている(第2-2-8図)。

〈製造業者共同化事例〉

 自動車部品(ワイパー等小型モーター製品)の一次製造業者に納品する二次製造業者41社が,共同デポ(保管所)に各社の製品を集荷し,ここから一次製造業者の工場へカーゴ車両(コンテナ掲載のトレーラー)により共同輸送する計画を策定中である。これにより,1日に数十台のトラックを必要としていたものが,3〜5台のカーゴ車両で賄える見込みである。

〈トラック運送業者共同化事例〉

 中小トラック運送業者からなるC組合(大阪府,参加企業46社)では,各組合員からの小ロットの貨物を組合の共同物流施設に集荷し,オンラインパソコンネットワーク・自動車電話等を活用して空車・求貨情報等を提供し,組合員のトラックに積み合わせて配送する共同輸送事業を実施する予定である。これにより,組合員のトラックの積載率の向上,輸送能力の余裕不足による荷主からの依頼拒否等の回避が可能となる見込みである。

A異業種企業との物流共同化

 異業種企業との物流共同化について,「実施済み」の中小企業は卸売業で1.8%,製造業で2.5%,トラック運送業で6.4%となっており,「検討中」の者が卸売業で6.0%,製造業で2.9%,トラック運送業で14.6%となっている。

イ.非トラック運送業との共同化

 異業種企業と物流共同化を実施している中小企業のうち,卸売業では,小売業との共同化を行っている者が25.0%,製造業では,卸売業との共同化を行っている者が32.1%と,それぞれ多くなっている。共同化のメリットとして,卸売業では「取引関係が緊密化し販路確保に役立った」,「企業間情報ネットワークの活用によってジャストインタイム物流が可能となった」をあげる企業が多く,また,製造業では,「支払事務の合理化等による物流事務の合理化」を指摘する企業が22.2%,「荷役・保管のためのスペースの大幅削減による物流施設費削減」をあげる企業が16.7%となっている。
 共同化未実施の中小企業においても,「一社では大型投資ができないので,共同投資により物流センターを建設したい」とする企業が卸売業で33.3%,製造業で14.8%となっており,また,「取引関係を緊密化して発注元企業からの受注を確実かつ容易にしたい」とする企業が卸売業で20.8%,製造業で18.5%となる等,物流共同化に前向きな姿勢がうかがえる。

ロ.運輸業者との共同化

 荷主企業にとり,トラック運送業者等の運輸業者と連携することで,その貨物取扱に関する能力を活用し共同配送等を実施することはきわめて有意義であり,運輸業者としても,荷主のニーズに十分応えた保管・配送システムを提供できるだけでなく,荷主との安定的な取引関係を構築できる等のメリットがある。
 異業種企業との物流共同化を実施している中小企業のうち,運輸業と共同化している者は,卸売業で37.5%・製造業で42.9%となっており,そのメリットとして,「業者毎・方面毎に複数回荷渡しをせず,定時に一度の荷渡しで済むようになり,出荷業務が効率化した」をあげる企業は卸売業で25.0%,製造業で13.0%,また,「取引関係の緊密化により,物流需要への一層きめ細かな対応が得られるようになった」とする者は卸売業で25.0%,製造業で4.3%となっている。トラック運送業者側においては,39.4%の企業が「取引関係緊密化により耶引確保に役立った」とし,また,45.5%の企業が「物流需要への一層きめ細かな対応が可能となった」としている。

〈卸売業・運輸業共同化事例〉

 繊維問屋400社(東京都)が共同物流センター及び中継地点に流通センターを設立し,運送業者と共同して,@都内近郊百貨店・量販店への納品業務の運送業者への委託,A同百貨店・量販店を除く都内近郊地区の一般小売店等への共同配達,B地方向け一括集荷引渡し配送等を行っている(第2-2-9図)。
 そのメリットとして,繊維問屋は@物流施設費削減,A方面別・輸送業者別の仕分の不要化および荷渡しの回数削減・定時化等の出荷業務効率化を,また,運送業者は@集配回数削減による集荷作業効率化,A運賃請求・集金事務の簡便化,B取引確保および物流需要へのきめ細かな対応の可能化をそれぞれ指摘している。

B共同化上の問題点

イ.個別事業者の取引と共同事業を分離するオペレーション機能の整備

 物流共同化実施上の問題点として,「同一の得意先,仕入・調達先を持つことが多いため,取引内容(仕入単価・出荷数量・引受単価等)が同業種競合企業に知られてしまう」をあげる中小企業は,卸売業で48.8%,製造業で33.3%,トラック運送業で39.7%となっている。物流は製造・販売・取引と密接に関連しているため,同一の得意先や仕入・調達先を持つことの多い同業種の中小企業の協同による物流対策においては,相互の取引内容が競合企業に知られてしまうのではないかとの懸念が参加者にある。また,「仕入・調達先との帳合(取引口座)について,各事業者が持つ帳合と,共同仕入する共同物流センターが持つ帳合との関係の付け方が煩雑である」とする中小企業は,卸売業で16.7%,製造業で18.5%,トラック運送業で16.7%となっており,各事業者の帳合と共同物流センターの帳合との関係の整理等も問題となっている。これらの点については,電算システムや納品伝票管理の徹底等により,個別事業者の取引内容と共同化する物流との分離を図るなど,とくに慎重な配慮を払うことが大切である。

ロ.標準的な物流コスト算出方法の導入

 物流共同化に関して,「事業者間での費用分担の算出に不可欠である,配送・保管・仕分等に要するコストの標準的算出方法の作成導入が困難」とする中小企業は,卸売業で32.5%,製造業で40.3%となっている。共同化のメリット,デメリットを判断し,共同事業の費用分担を算出するためにも,荷主事業者間で配送・保管,ピッキング等に要するコストの標準的な計算方法を作成し導入することが重要である。

ハ.企業間の物流条件・システムの統一化

 「企業間の物流条件(集荷・配送時間・場所等)が異なり,物流計画・実施の調整が困難」とする中小企業は,卸売業で54.7%,製造業で46.3%,トラック運送業で43.2%となっており,物流条件の統一を図る必要がある。
 また,「企業間で情報システム(情報機器規格・ビジネスプロトコル等)が異なるため,システム間の整合性をとるのが困難」とする中小企業は,卸売業で39.3%,製造業で26.7%,トラック運送業で40.8%となっている。中小企業が物流共同化・物流情報ネットワーク構築を図っていく上で,物流関連機材やビジネスプロトコルを事業者間で統一することが必要であり,取引や流通の広がりを踏まえれば,規格化・標準化された物流関連機材やビジネスプロトコルを採用することが重要である。

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