第3部 中小企業・小規模事業者が担う我が国の未来 

5. クラウドソーシングの課題

ここまで、クラウドソーシングの活用により、中小企業・小規模事業者が不足する経営資源の補完ができるのではないかという可能性や、個人の新しい働き方を提案し得るという可能性を見てきた。前掲第3-5-2図のとおり、今後、国内クラウドソーシング市場は急拡大すると予想されている。また、ワーカーの今後の受注希望を見ても、受注規模拡大を希望する受注者が6割以上占めている(第3-5-24図)。

第3-5-24図 クラウドソーシングによる今後の受注希望
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今後、クラウドソーシングを有効に活用していくためにも、クラウドソーシングが抱える課題についても正しく認識する必要がある。最後に、クラウドソーシングが抱える課題について整理し、この節の結びとしたい。

●仕事の発注者側から見た課題

第3-5-25図は、クラウドソーシングを利用する発注者側から見た課題を示したものである。これを見ると、「仕事の質が不安定」、「受注者との意思疎通が難しい」とした発注者が多いということが分かる。

第3-5-25図 発注者がクラウドソーシングを利用する上での課題(複数回答)
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仕事の質を安定させるためには、以前発注したことのあるワーカーに対して、再度発注するということが考えられる。過去に成果物を受け取っているという点で、仕事の質については一定の予測がつく。また、受注者との意思疎通については、メールなどオンラインの意思疎通だけで済ますのではなく、時には直接会って意思疎通を図るなど、意思疎通の方法に工夫を加えることも有効といえよう。

●仕事の受注者側から見た課題

第3-5-26図は、クラウドソーシングを利用する受注者から見た課題を示したものである。これを見ると、実に7割以上のワーカーが「仕事単価の低さ」を課題として挙げている。

第3-5-26図 受注者がクラウドソーシングを利用する上での課題(複数回答)
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第3-5-27図は、クラウドソーシング業務における月間の平均受注額について見たものである。非事業者においては、月額平均5,000円未満のワーカーが6割を占めている。これは、非事業者が単価の低い「ライティング関連」や「作業関連」の受注が多いことによると推察される。仕事単価は仕事の需給状況によって決まるため、ワーカーが収入を上げるためには、受注する仕事量を増やすか、何らかのスキルを身に付けた上で、単価の高い仕事に応募するということが考えられる。

第3-5-27図 クラウドソーシング業務における受注額(月平均)
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また、「受注が不安定」であるということを課題に挙げた利用者も多い。受注を安定させるためには、継続的に発注がある発注者を見付け、その発注者に継続的に仕事をリピート発注してもらうことが考えられる。

●海外との関係

クラウドソーシングはインターネットを利用したサービスであり、誰でも参加できるという反面、世界中にライバルが存在する。海外のワーカーが本格的に日本市場に流入すれば、日本国内において現在よりも仕事を受注することが難しくなる可能性がある。また、日本国内の企業が、海外に仕事を発注することにより、日本国内の仕事量全体が減少する可能性も否定できない。ここからは、クラウドソーシングサイトで仕事の発注または受注の経験がある利用者の海外への仕事の発注状況と海外からの仕事の受注状況について見てみたい。

第3-5-28図は、海外へ仕事を発注したことがある利用者の割合を示したものである。これを見ると、現在約1割の発注経験者が海外へ仕事を発注しており、現在は海外へ仕事を発注していなくても、今後、海外への仕事の発注を検討するとしている利用者も5割以上存在していることが分かる。今後、海外へ仕事を発注するとした理由については、「発注の選択肢を増やせると感じるため」や「発注単価が低いと感じるため」と回答した利用者が約5割おり、今後、国内企業の海外への仕事の発注によって、日本国内のクラウドソーシングを利用した仕事の発注が減少したり、発注単価がより安価になる可能性もある(第3-5-29図)。

第3-5-28図 海外への発注状況
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第3-5-29図 海外取引(発注)を検討する理由(複数回答)
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一方で、第3-5-30図は、海外から仕事の受注したことがある利用者の割合を示したものである。これを見ると、現在、海外から仕事を受注している利用者は1割にも満たないが、今後、必要があれば海外から仕事を受注することを検討するとした利用者は、事業者で約6割、非事業者で4割超いることが分かる。

第3-5-30図 海外からの受注状況
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今後、必要があれば海外からの仕事の受注を検討するとした理由については、「受注の選択肢を増やせると感じるため」とした利用者が6割超存在しており、海外からの仕事の受注に対して前向きな考え方である利用者が多いということが分かる(第3-5-31図)。一方で、今後、海外からの仕事の受注を検討しないとした利用者の理由については、約7割の利用者が「言語の違いがあるため」と回答しており、言語の壁が障害となって、海外からの仕事の受注は、それほど拡大しないという意見もある(第3-5-32図)。

第3-5-31図 海外取引(受注)を検討する理由(複数回答)
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第3-5-32図 海外取引(受注)をしない理由(複数回答)
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●クラウドソーシングサイト側の課題

第3-5-33図は、クラウドソーシングサイトに登録しながらも、仕事の受注ができない要因について見たものである。これを見ると、非事業者においては、自身のスキルが不足していると考えている者が多いということが分かる。ワーカーのスキル不足を補うために、ワーカーのスキルアップのための教育を行うクラウドソーシングサイト運営事業者も出てきており、今後このような動きが拡大していくことが、クラウドソーシングサイト側の課題の一つともいえる。

第3-5-33図 クラウドソーシングで仕事の受注ができない要因(複数回答)
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また、事業者においては、「応募したが採用されなかったため」とする利用者が多い一方で、「単価の低い仕事が多いため」受注することができないとする利用者も多い。一定の市場価格が確保されなければ、事業者が受注者としてクラウドソーシングを積極的には利用しなくなる可能性もある。

クラウドソーシングサイトを利用する者に、クラウドソーシングサイト運営者に対する要望について見たものが第3-5-34図である。これを見ると、発注経験者は「質の高い受注者の確保」を求めており、受注経験者は「継続的に発注がある発注者の確保」を求めていることが分かる。また、「利用手数料の低下」については発注経験者、受注経験者共に望んでいることが分かる。

第3-5-34図 クラウドソーシングサイト運営事業者への要望事項(複数回答)
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ここまで見てきたように、クラウドソーシングを利用するそれぞれの立場で、様々な可能性を秘めている一方で、解決すべき課題も多い。クラウドソーシングの利用者が、クラウドソーシングの特徴を十分に踏まえた上で活用するとともに、クラウドソーシングサイト運営事業者も、より良い環境を整備していくことで、今後クラウドソーシングが、中小企業・小規模事業者の経営課題解決の一つのツールとして定着していくことが期待される。

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