第3部 中小企業・小規模事業者が担う我が国の未来 

3. 国際比較

●開廃業率

市場経済において、企業は絶えず生成と消滅を繰り返し、生成と消滅の頻度が高ければ高いほど産業の新陳代謝が促される。その動態を把握するために、「開業率・廃業率」という指標が用いられる。各国の政府統計を利用して開業率・廃業率を算出し比較することで、我が国の開廃業の実態を概観する。

第3-2-7図により、欧米諸国と我が国の開業率・廃業率を比較する。統計の性質が異なるため、単純には比較できないものの、我が国の開業率・廃業率は、欧米の半分又はそれ以下となっており、産業の新陳代謝が進んでいないことが推察される。

第3-2-7図 各国の開廃業率
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2013年6月に閣議決定された「日本再興戦略―JAPAN is BACK―」の「中小企業・小規模事業者の革新」において、「開業率・廃業率10%台(現状4.5%(2004年から2009年までの平均値))を目指す4」という成果目標を掲げている。これは、現在の年間の起業数(雇用保険関係が新たに成立した有雇用の事業所数)を現状から倍増させていくことを意味している。ただし、このとき留意すべきは、当該開業率・廃業率は雇用保険を締結している有雇用の事業所数をもとに集計されており、従業員のいない事業所は含まれていない。しかしながら、我が国を真の「起業大国」にしていくためには、雇用の維持拡大につながる有雇用の事業所数を増やしていくことのみならず、従業員のいない事業所を増やしていくことも併せて必要である。なぜならば、雇用の維持拡大については、従業員のいない個人事業者、会社であっても、当該経営者については自らを雇用しているといえるし、また、こうした従業員のいない個人事業者、会社が成長していく過程で、従業員を雇い有雇用になっていく可能性も十分にあり、その「種」をしっかりと育てていくことが、我が国を「起業大国」に導くと考えるからである。

次に、我が国の開業率が低い要因として、国際比較を用いて起業家精神と起業環境の二面から見ていこう。

まず、OECDが行なった起業家精神に関する調査(「もし、自営業者と被雇用者を自由に選択できると仮定した場合、自営業者を選択すると回答した者」の割合)によると、我が国は、欧米諸国に比べて、自営業を選好する割合が低いことが分かる(第3-2-8図)。この背景として、GEM(Global Entrepreneurship Monitor)が行なった国際的な起業に関する意識調査の結果を見ると、我が国は、欧米諸国に比べて、周囲の起業家との接点が少なく、事業機会や知識・能力・経験も乏しい。さらに、起業家の地位や職業選択に対する評価も低いことが分かった(第3-2-9図)。このように、自営業者を選好する者の割合や起業家精神が低いことが、我が国の開業率が欧米諸国の半分又はそれ以下であることの一因であると推察される。

4 「日本再興戦略―JAPAN is BACK―」は、(1)日本産業再興プラン、(2)戦略市場創造プラン、(3)国際展開戦略の3本の柱からなり、そのうち、(1)日本産業再興プランの中の「6.中小企業・小規模事業者の革新 〔2〕中小企業・小規模事業者の新陳代謝の促進」において記載されている。

第3-2-8図 自営業の選好度
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第3-2-9図 起業活動に対する態度と意識
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次に、世界銀行が行なった起業環境に関する国際比較によれば、開業に要する手続き、時間、コストを総合的に評価した場合、日本の起業環境は総合順位で120位である(第3-2-10図)。「ASEAN+35」の中では7位、OECD34か国中では31位と極めて低位に位置している。この順位は、起業環境といっても、会社設立に必要な手続きや開業コストを比較しているため、個人事業者の起業に対しては必ずしも当てはまらないものの、「起業大国」を目指す我が国にとって看過しがたい結果といえよう。

5 「ASEAN+3」とは、ブルネイ、インドネシア、カンボジア、ラオス、ミャンマー、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムに、中国、韓国、日本を加えた13ヶ国をいう。

第3-2-10図 起業環境の国際比較
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このように、諸外国と比較したところ、我が国は起業家精神及び起業環境の両面において、様々な課題が存在することが分かった。我が国の開業率を欧米と遜色ないレベルに引き上げるためには、こうした課題を一つ一つ改善していく必要がある。とりわけ、起業環境が世界120位という不名誉な結果をどう挽回していくかについて、政府を挙げて知恵を絞り、果敢に実行していくことが求められている。

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