第2部 自己変革を遂げて躍動する中小企業・小規模事業者 

第3節 事業承継の準備

前節で、経営者引退後の事業継続を希望している企業が多く存在することに触れたが、後継者に事業を引き継ぐまでに行うべきことは多岐にわたり、経営者自身も、事業承継に関して相応の知識を有することが求められる。

本節では、経営者が50歳以上の企業について、事業承継の準備の状況や円滑に事業を引き継ぐための取組等を見ていく。

1 後継者の養成

まず、第2-3-15図は、事業承継に関して、経営者が特に関心のある知識を示したものであるが、後継者の養成について、関心を寄せる企業が多い。規模別に見ると、中規模企業の方が、全般的に回答割合が高く、小規模事業者よりも、事業承継をどのように進めるかについて、具体的な関心を持っていると考えられる18

18 純資産規模別の特に関心のある事業承継の知識については、付注2-3-8を参照。純資産規模別に見ても、後継者の養成が、最も関心の高い項目であり、また、純資産規模が大きくなるほど、相続税等や自社株式等についての関心が高まっている。
第2-3-15図 規模別の特に関心のある事業承継の知識(複数回答)
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また、事業承継の準備として、具体的にどのようなことに取り組んでいるのかを見てみると、「後継者の資質・能力の向上」を挙げる企業が最も多い19(第2-3-16図)。規模別に見ると、小規模事業者は、中規模企業と比べて、準備が遅れていることが分かる。

19 純資産規模別の事業承継の準備として取り組んでいることについては、付注2-3-9を参照。
第2-3-16図 規模別の事業承継の準備として取り組んでいること(複数回答)
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それでは、向上させる必要がある後継者の資質、能力とは、どのようなものであろうか。第2-3-17図で、後継者の決定に際して重視することを規模別に見ると、小規模事業者は、「親族であること」、「自社の事業・業界に精通していること」を、中規模企業は、「リーダーシップが優れていること」、「経営に対する意欲が高いこと」を挙げる割合が高く、小規模事業者と中規模企業で、傾向に違いがあることが分かる。

第2-3-17図 規模別の後継者を決定する際に重視すること(複数回答)
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一方、後継者に不足している能力等を見ると、「財務・会計の知識」、「自社の事業・業界への精通」の回答割合が高い(第2-3-18図)。規模別に見て、違いが大きな項目は、「リーダーシップ」と「営業力・交渉力」である。前掲第2-3-17図と併せて見ると、小規模事業者では、経営者自身の実務能力が期待されているのに対し、中規模企業では、役員・従業員を統率して経営を方向付ける能力が、より重視されていることが分かる。

第2-3-18図 規模別の後継者に不足している能力等
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こうした、経営者に必要な能力等を向上させるために、多くの企業では、自社内で経験を積ませること等によって、後継者を養成することが効果的と考えている(第2-3-19図)。

第2-3-19図 後継者に不足している能力等を伸ばすための効果的な取組
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しかし、第2-3-20図の、後継者の養成における障害で示すように、「業務が忙しくて時間が足りない」という企業も見られる。

第2-3-20図 規模別の後継者の養成における障害
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以下では、後継者をOJTで養成するなど、長期にわたる事業承継の準備に取り組んでいる企業を、事例として取り上げている20

20 後継者の養成に関しては、前掲事例2-3-1のように、社内の様々な部門で、後継者に経験を積ませる企業や、後掲事例2-3-11のように、後継者が外部の後継者育成研修を受講する企業もある。

事例2-3-10:株式会社清原

周到な準備の後に、創業者から現社長が40歳で事業を承継し、地域の活性化にも取り組む企業

滋賀県守山市の株式会社清原(従業員26名、資本金1,250万円)は、和雑貨の製造等を行う企業である。ふくさ等を京都の問屋に卸しているが、近年は、自社ブランド品の開発、小売への展開等に取り組み、売上、従業員数を増やしている。守山市の地域資源である布帛(ふはく)21・縫製品等を活用することで、地域にも貢献している。

同社の清原健社長は、1987年に、40歳で、創業者から事業を承継した。創業者は、事業承継を早くから念頭に置き、長期の経営計画に取り込んで、計画的に実施してきた。

会社の財務については、自己資本比率を高め、経営の個人保証が過度に必要とならない状況にした。一方で、それが自社株式の評価額を高めることになったが、長期的な計画のもと、先代社長から清原社長に、さらに現社長の長男である清原大晶専務への事業承継も視野に、自社株式の移転を10年以上掛けて段階的に行った。

2013年には、現社長から現専務への事業承継が控えている。現在36歳の清原専務は、早いうちから従業員等に後継者として周知され、また、経営者としての能力を身に付けるために、入社以来OJTで厳しく鍛えられ、円滑な事業承継に向けた準備が整えられている。

清原社長は、「経営者が高齢化すると事業に支障が出る。時代に合わせてビジネスを変革していくこと、若い人の感性を経営に積極的に取り入れていくことが必要。一方で、創業の苦労、企業の核となる理念を忘れないように、語り継いでいくことも大切である。」と語る。現在は、地域のまちづくり会社の社長も兼任し、中小企業の後継者となる息子・娘たちが、地域に戻ってくるような魅力的なまちづくりにも取り組んでいる。

滋賀県の地域資源「濱ちりめん」を用いた自社ブランド「和奏」のカードケース

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21 綿、麻、絹を原糸とした布、織物等の総称。
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