第3部 中小企業の技術・経営を支える取組 

第1節 経営課題への対応

■中小企業の経営課題
 第3-2-1図は、中小企業の経営課題を示したものである。「営業力・販売力の強化」と回答している割合が7割を超えて最も高く、次に回答割合の高いものが「人材の確保・育成」で、中小企業の経営課題の中でも、特に重要なのが販路開拓となっている。
 
第3-2-1図 2012年に経営基盤の強化に向けて注力する分野(複数回答)

第3-2-1図 2012年に経営基盤の強化に向けて注力する分野(複数回答)
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 一方で、「経営環境実態調査1」により、中小企業が今まで効果があったと考える中小企業支援施策を見ると、当面の資金繰りや雇用維持、人材確保に関する支援が上位にあり、販路開拓に関する支援の位置付けは低位にある(第3-2-2図)。

1 中小企業庁が2010年11月に企業30,675社を対象に実施したアンケート調査。回収率20.2%。
 
第3-2-2図 今までに効果があった中小企業支援施策

第3-2-2図 今までに効果があった中小企業支援施策
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■中小企業の経営相談
 多様な経営課題の解決には、まず、現状を把握することから始まり、そこから明らかになった自社の経営課題を社内外の関係者等に相談して、対策を立てることが重要である。「中小企業の経営者の事業判断に関する実態調査2」により、中小企業の経営相談の状況について見ると、中小企業経営者の3割強が、定期的な経営相談をしていると回答している。具体的な相談相手は、約7割が「顧問税理士・会計士」、約3割が「経営陣」、3割弱が「家族・親族(利害関係者)」、2割弱が「メインバンク」となっており、日頃から接点の多い、社内外の関係者等が相談相手として選ばれる傾向にある(第3-2-3図)。

2 中小企業庁の委託により、(株)野村総合研究所が2011年12月に、中小企業19,437社を対象に実施したアンケート調査。回収率43.1%。ただし、青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県の大震災により甚大な被害(津波被害、地震被害等)を受けた地域に本社が所在する中小企業は対象外とした。
 
第3-2-3図 中小企業経営者の経営相談の状況

第3-2-3図 中小企業経営者の経営相談の状況
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 第3-2-4図は、定期的な経営相談を行っている企業割合を、従業員規模別に示したものである。従業員規模の大きい中小企業ほど、定期的な経営相談を行っている割合が高い傾向にある。
 
第3-2-4図 従業員規模別の定期的な経営相談実施企業の割合

第3-2-4図 従業員規模別の定期的な経営相談実施企業の割合
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 また、第3-2-5図は、定期的に経営相談をしている企業が、相談によって受ける助言の有効性を示したものである。従業員規模の大きい企業ほど、経営相談により受ける助言が役に立っていると回答する割合が、高い傾向にある。特に、従業員が0〜4人の零細企業では、経営相談をしている企業でも、4割強が有効性を見いだせていない状況である。
 
第3-2-5図 従業員規模別の経営相談により受ける助言の有効性

第3-2-5図 従業員規模別の経営相談により受ける助言の有効性
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 経営相談をすることによる効果を見てみると、定期的な経営相談をしている中小企業は、経営相談をしていない中小企業より、増益傾向と回答する割合が高く、減益傾向と回答する割合が低い(第3-2-6図)。社内外の関係者等から定期的に助言を受けることが、安定した事業の継続に効果的であると考えられる。
 
第3-2-6図 経営相談有無別の直近5年間の利益の傾向

第3-2-6図 経営相談有無別の直近5年間の利益の傾向
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 中小企業は、販路開拓等多くの経営課題を抱えており、それらを解決すべく、一層の中小企業支援が期待される。また、定期的な経営相談をしている中小企業は限られており、従業員規模の小さい企業は、今後の安定した事業継続のためにも、社内外の関係者等との定期的な経営相談により、的確な助言を受けることが望ましいと考えられる。
 
コラム3-2-1 (独)中小企業基盤整備機構による販路開拓支援

 (独)中小企業基盤整備機構は、中小企業の販路開拓支援を積極的に行っている。同機構により2011年11月に開催された「中小企業総合展JISMEE2011」では、500社を超える中小企業が出展した。来場者数は3日間で31,228名に上り、約15,000件の新しいパートナーとの出会いがあった。
 また同機構は新商品の市場開拓に向けた「販路開拓コーディネート事業」も実施しており、優れた新商品を持つ中小企業のマーケティング企画の策定と、首都圏・近畿圏におけるマーケティング活動の支援を行っている。
 同機構の支援により、多くの中小企業が販路開拓に成功している。
 
コラム3-2-2 “日本の未来”応援会議〜小さな企業が日本を変える〜

 我が国企業の約9割を占め、経済を支える中小・小規模企業が、厳しい環境の中でいかに底力を発揮し、もう一度元気になることができるかは国民的課題である。このため政府は2012年2月に、“日本の未来”応援会議〜小さな企業が日本を変える〜(略称:“ちいさな企業”未来会議)の開催を決定した。
 同会議は、青年層や女性層の中小・小規模企業経営者を中心に、中小企業団体、税理士等の士業、商店街関係者、生業、地域金融機関等、幅広い主体で構成され、小規模企業の経営実態や課題、重要性を踏まえ、これまでの中小企業政策を真摯に見直し、中小・小規模企業の経営力、活力の向上に向けた課題と今後の施策の在り方を討議し、実行していくものである。
 以下、我が国の小規模企業の現状を見てみる。
 コラム3-2-2図〔1〕は、国内の企業数と従業者数を示したものである。小規模企業は、企業数で87.0%、従業者数で21.2%を占めており、我が国経済を支える存在である。
 
コラム3-2-2図〔1〕 中小企業の企業数、従業者数

コラム3-2-2図〔1〕 中小企業の企業数、従業者数
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 また、従業者について業種別に見てみると、宿泊業,飲食サービス業、建設業、不動産業,物品賃貸業で、小規模企業の割合が高いことが分かる(コラム3-2-2図〔2〕)。
 
コラム3-2-2図〔2〕 規模別・業種別の従業者数構成割合

コラム3-2-2図〔2〕 規模別・業種別の従業者数構成割合
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 各都道府県において、県庁所在市とその他の市町村を比べると、その他の市町村の企業数に占める小規模企業の割合は、県庁所在市内の小規模企業の割合よりも高く、地域経済における小規模企業の重要性が認められる(コラム3-2-2図〔3〕)。
 
コラム3-2-2図〔3〕 都道府県庁所在市とその他の市町村の小規模企業比率

コラム3-2-2図〔3〕 都道府県庁所在市とその他の市町村の小規模企業比率


 コラム3-2-2図〔4〕は、企業規模別の売上高経常利益率を示したものである。平均的には、小規模企業の売上高経常利益率は、大企業より低いが、上位1割をそれぞれ見ると、小規模企業は大企業を上回っている。
 
コラム3-2-2図〔4〕 企業規模別の売上高経常利益率の分布(2010年度)

コラム3-2-2図〔4〕 企業規模別の売上高経常利益率の分布(2010年度)


 以上のように、小規模企業は、我が国経済を下支えしており、その強みが最大限に発揮できるよう、政府もきめ細やかな施策を講じていく。
 
コラム3-2-3 中小企業の世代交代時の取組

 近年、中小企業の経営者の平均年齢は上昇傾向にある(コラム3-2-3図〔1〕)。コラム3-2-3図〔2〕は経営者の経験年数別の利益の傾向を示しているが、経営者の経験年数が上がるにつれて、減益傾向となっており、中小企業が成長を持続していくためには、事業承継による企業の若返りが重要である。その際、事業承継を円滑に推進する事業環境の整備をより一層推進することが重要である。
 
コラム3-2-3図〔1〕 資本金規模別の会社代表者平均年齢の推移

コラム3-2-3図〔1〕 資本金規模別の会社代表者平均年齢の推移
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コラム3-2-3図〔2〕 経営者の経験年数別の利益の傾向

コラム3-2-3図〔2〕 経営者の経験年数別の利益の傾向
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 コラム3-2-3図〔3〕は事業承継を契機とした、経営革新の取組を示したものである。事業の継承者が何代目であるかを問わず「新たな顧客層の開拓」と回答する割合が最も高く、経営者が、事業承継を契機として、販路開拓に注力していることが分かる。ただし、販路開拓に次ぐ取組としては、2代目が「店舗・工場・事務所などの増設、拡張」や「新たな事業分野への進出」等の増収効果のある取組を重視しているのに対し、3代目以降は「新商品・新サービスの開発、販売」に加え、「社内の情報化の促進」を始めとしたコストダウン効果のある取組も重視する傾向にある。
 
コラム3-2-3図〔3〕 事業承継を契機とした経営革新の取組(複数回答)

コラム3-2-3図〔3〕 事業承継を契機とした経営革新の取組(複数回答)
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