第2部 潜在力の発揮と中小企業の役割 

2 海外展開の動向

 次に、中小企業の海外展開について、輸出及び直接投資の動向を見ていく。

■輸出の動向
 まず、中小製造業において、輸出を行う企業(以下「輸出企業」という)の動向を見ていく。第2-2-5図は、従業者数4人以上の事業所単位の工業統計を、企業単位に再集計して、輸出企業の数と割合の推移を示したものであるが、2009年の輸出企業の割合は2.8%にとどまっている3ものの、2001年から2009年にかけて、企業数と割合のいずれも、増加傾向にあることが分かる。

3 平成20年工業統計表(再編加工)によると、従業者数3人以下の製造事業所数は179,501事業所、輸出を行う製造事業所数は311事業所であり、従業者数0〜3人の全製造事業所数に占める輸出を行う製造事業所数の割合は0.17%となる。
 
第2-2-5図 輸出企業の数と割合の推移(中小製造業)

第2-2-5図 輸出企業の数と割合の推移(中小製造業)
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 また、第2-2-6図は輸出企業の業種構成を示したものであるが、製造業の産業中分類24業種のうち、輸出企業数の多い生産用機械器具製造業、化学工業、電気機械器具製造業、金属製品製造業の上位4業種が、輸出企業全体の42.8%を占めている4

4 産業中分類別及び各都道府県別の中小製造業の輸出企業の数と割合については、付注2-2-1付注2-2-2を参照。
 
第2-2-6図 輸出企業の業種構成(中小製造業)

第2-2-6図 輸出企業の業種構成(中小製造業)
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 従業者規模別の輸出企業の割合を見てみると、従業者数4〜10人の区分においては、輸出企業の割合が0.72%であるのに対し、従業者数201〜300人の区分では22.0%となっており、従業者規模が大きいほど、輸出企業の割合が高くなる傾向を示している(第2-2-7図)。
 
第2-2-7図 従業者規模別の輸出企業の割合(中小製造業)

第2-2-7図 従業者規模別の輸出企業の割合(中小製造業)
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 さらに、中小卸売業についても輸出の動向を見ていきたい。第2-2-8図は、中小卸売業の輸出事業所数を示したものであるが、2002年から2007年にかけて、輸出事業所数が増加している。また、商品別に見ると、中小製造業と同様に機械器具や化学製品の輸出事業所が多い。
 
第2-2-8図 商品別の輸出事業所の数(中小卸売業)

第2-2-8図 商品別の輸出事業所の数(中小卸売業)
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 商品別の輸出事業所の割合について見ると、機械器具や自動車の輸出事業所の割合は、5%超と比較的高い水準であるものの、農畜産物・水産物・食料・飲料の輸出事業所は、0.9%と低水準にとどまっており、今後の伸長が期待される(第2-2-9図)。
 
第2-2-9図 商品別の輸出事業所の割合(中小卸売業)

第2-2-9図 商品別の輸出事業所の割合(中小卸売業)
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事例2-2-1 青紫蘇を活用して多彩な商品を開発・販売。海外では高級化戦略が功を奏し、ブランド価値を高めることに成功した企業

 熊本県合志市の青紫蘇農場株式会社(従業員30名、資本金2,600万円)は、青紫蘇の加工・販売を行う企業である。生産情報公表JAS規格5の認定を受けた青紫蘇を自社で栽培・販売するとともに、ドリンク類・調味料・麺類等、紫蘇の機能性を活かした様々な加工品を開発・販売している。

5 事業者が自主的に食品の生産情報(生産者、生産地、農薬及び肥料の使用情報等)を消費者に正確に伝えていることを第三者機関である登録認定機関が認定するもの。

 少子高齢化の進展に伴う国内消費の先細りに不安を抱いていた同社の吉川幸人社長は、中国や韓国等からの輸入農産物について、自ら調査した経験をもとに、1991年頃から国産農産物の輸出の可能性に着目した。2001年頃には、アジア新興国等の成長を現地で目の当たりにし、一刻も早く海外に進出すべきと考えるようになった。
 こうした状況のもと、2004年度に、くまもと県農林水産物等輸出促進研究会を熊本県で設立し、吉川社長が会長に就任した。研究会活動の一環として、米国、香港、シンガポール等での市場調査や現地での商談会開催、海外バイヤーへの農産加工品の販路拡大等を行った同社は、2006年度に香港への青紫蘇の輸出を開始した。2011年度現在、香港、台湾、シンガポール、英国、フランス、ドバイ、米国等世界9か国・地域に輸出しており、輸出額は、前年比3倍程度の大幅増が見込まれている。商社に頼らず、現地に直送することで流通を簡素化していることも、海外販路拡大に寄与しているという。
 同社の輸出戦略は、レストランやスーパー等の各業態において、トップクラスの相手と取引することである。海外販路開拓に当たって、吉川社長は「相手国の食文化等を調査し、自社商品がどのような業種・場所で売れるのかを見極めることが重要。そのためには、まず現地に行って、高級店や一流店を自分の目で確かめる必要がある。」と指摘する。
 
青紫蘇農場の作業風景
 
事例2-2-2 シャンパンの伝統的な製法を応用し、発泡性日本酒の商品化に成功。世界ブランドを目指して国内外での販路拡大に取り組む企業

 群馬県川場村の永井酒造株式会社(従業員25名、資本金4,000万円)は、125年以上にわたって日本酒造りを営む老舗酒蔵である。同社の酒造りにおけるこだわりは、尾瀬連峰・武尊山で育まれた柔らかでほのかに甘い伏流水と、厳選した酒造好適米を使用し、蔵人の伝統的な技によって、これらの素材が有する自然の恵みを素直に表現することである。
 食文化や酒類の多様化、若者の日本酒離れ等を背景として、日本酒の国内消費量が減少の一途をたどる中、同社は、将来的に成長が期待される海外市場を開拓すべく、主軸ブランドである「水芭蕉」の輸出を1997年に開始した。さらに、国内外で愛されるブランドづくりを目指して、発泡性日本酒「MIZUBASHO PURE(水芭蕉ピュア)」の開発に成功し、2008年から発売している。
 この開発のきっかけは、1998年に始まったフランスのワイン醸造家との交流である。この交流を通じて、酒造りに対する熱い情熱や使命感をワイン醸造家と共有するようになり、同社を経営する永井彰一氏・則吉氏の兄弟は、世界に通用する最高品質の発泡性日本酒を造ろうと決心した。2003年の本格的な開発着手から5年間、700回以上に及ぶ試行錯誤を経て、シャンパーニュ地方で受け継がれる瓶内二次発酵製法を応用した発泡性日本酒の商品化にこぎ着けた。
 現在、同社の輸出先は、香港、米国、シンガポール等14か国・地域に広がり、国内外の消費者から高い評価を得ている。今後は、これまで日本酒に馴染めなかった人やシャンパンを好む人を中心に国内外で販路を拡大し、5年後には総売上に占める輸出シェアを現在の約5%から20%程度まで高めることを目指している。
 
発泡性日本酒「MIZUBASHO PURE」

■直接投資の動向
 次に、中小企業において、直接投資を行う企業(以下「直接投資企業」という)の動向を見ていく。第2-2-10図は、規模別・業種別の直接投資企業の数を示したものであるが、2009年における、海外子会社を持つ全企業7,977社のうち、7割の5,630社が中小企業となっている。
 
第2-2-10図 規模別・業種別の直接投資企業の数

第2-2-10図 規模別・業種別の直接投資企業の数
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 第2-2-11図は、業種別の直接投資企業の割合を示したものであり、縦軸が直接投資企業の割合を表し、横軸が各業種の中小企業数を表している。直接投資企業の割合は、全業種平均で0.32%にとどまっている。業種別に見ると、製造業や卸売業、情報通信業は、直接投資企業の割合が比較的高いが、小売業や建設業は、企業数こそ多いものの、直接投資企業の割合は、低くなっている6

6 業種別及び各都道府県別の直接投資企業の数と割合については、付注2-2-3付注2-2-4を参照。
 
第2-2-11図 業種別の直接投資企業の割合(中小企業)

第2-2-11図 業種別の直接投資企業の割合(中小企業)
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 さらに、第2-2-12図は、従業者規模別の直接投資企業の割合を示したものであるが、従業者規模が大きいほど、直接投資企業の割合は高くなる傾向にある。特に、中小製造業では、その傾向が顕著である。
 
第2-2-12図 従業者規模別の直接投資企業の割合(中小企業)

第2-2-12図 従業者規模別の直接投資企業の割合(中小企業)
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 続いて、海外子会社保有数別の直接投資企業の数を見てみると、海外子会社保有数が1社又は2社の直接投資企業が、全5,630社中4,672社で、全体の8割以上となっている(第2-2-13図)。直接投資企業1社当たりの平均海外子会社保有数は、大企業12.1社、中小企業1.5社で、大企業が中小企業の約8倍となっており、大企業が世界各地に拠点を設けているのに対し、中小企業では特定の地域で直接投資を行っていることがうかがえる。
 
第2-2-13図 海外子会社保有数別の直接投資企業の数(中小企業)

第2-2-13図 海外子会社保有数別の直接投資企業の数(中小企業)
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 後掲第2-2-36図で分析するように、海外での生産活動にはリスクが伴う。海外拠点が分散されていない中小企業においては、国内事業を維持しつつ海外展開を行うことで、リスクに対応することが求められる。
 
コラム2-2-1 タイの洪水被害への対応

 2011年7月頃より、タイの北部から中部にかけて、多量の降雨による洪水が発生し、深刻な被害7をもたらした。洪水が発生した7工業団地においては、日系企業約449社が、工場の操業停止等の影響を受けた。

7 詳細は(独)日本貿易振興機構「緊急特集:タイ洪水に関する情報」を参照。http://www.jetro.go.jp/world/asia/th/flood/#situation

 このような状況のもと、同年10月以降、関係省庁が連携し、タイの洪水被害に関する我が国政府としての対応策を、相次いで打ち出している。以下は、我が国政府としての対応策のうち、経済産業省が中心となって検討と取りまとめを行ったもの8である。

8 詳細は経済産業省「タイの洪水被害への対応について」を参照。http://www.meti.go.jp/topic/data/111028aj.html#s04

 まず、国内及び現地に、被害への対応・支援策等に関する相談窓口を設置したほか、企業の要望を踏まえ、タイ政府と密接な連携・協議を行ってきた。また、政府系金融機関等を通じた資金供給の実施・拡充や、タイ人従業員の就労・人材育成等に関する支援等の措置により、日系企業のタイにおける事業再建を後押ししている。
 
タイの洪水被害に関する我が国の対応策

タイの洪水被害に関する我が国の対応策
 
事例2-2-3 タイ洪水被害に対し、国内外における生産補完体制を構築し、復旧を遂げる企業

 愛知県豊田市の光生アルミニューム工業株式会社(従業員374名、資本金1億9,950万円)は、アルミホイール等の自動車関連部品の製造・販売を行う企業である。アルミ鋳造等の高度なものづくり技術を強みとして、自動車メーカー等から厚い信頼を得ている。
 2011年10月に、タイのアユタヤ県のロジャナ工業団地に位置する同社の生産拠点が、洪水による浸水被害を受けた。その後、11月末にようやく排水が完了し、12月から工場に立ち入ることが可能となった。洪水被害を受けた直後から、自動車メーカー等の顧客への供給責任を果たすため、国内の福井製作所、北海道子会社でフル生産体制に入るとともに、自動車メーカーの支援を受け、中国の仕入先の認証を受け、国内外での生産体制を整えてきた。
 同社は、2007年7月の新潟県中越沖地震に伴う供給途絶の影響を受けた自動車メーカーからの要請もあり、BCPの一環として、同年に北海道工場(光生アルミ北海道株式会社)を立ち上げた。さらに、2011年3月の大震災を受け、BCP・リスク分散が更に重要になると考えていた矢先に、タイの洪水に見舞われた。しかし、タイと日本で同じアルミホイールを製造していたことに加え、国内でも拠点分散化を進めていた結果、サプライチェーンの途絶を最低限にとどめることができた。また、2012年2月からは、タイの熟練した技術者10名ほどが、国内拠点の生産支援に入り、生産補完体制を一層強化している。
 同社のタイ拠点は、2012年2月に一部生産を開始するなど着実に復旧が進んでおり、同年8月の全面復旧を目指している。今後も、インド拠点での生産開始により、リスク分散を更に意識していくという。
 
同社の製造するアルミホイール
 
コラム2-2-2 企業活動基本調査に見る直接投資企業の現地法人の動向

 経済産業省「企業活動基本調査9」により、中小企業の海外子会社の地域構成を見ると、中国が42.8%、中国を含むアジア全体で78.3%を占める(コラム2-2-2図〔1〕)。大企業の海外子会社の地域構成と比べると、大企業は、アジア地域だけでなく、北米、ヨーロッパへの直接投資も比較的多く見られるのに対し、中小企業の海外子会社の地域構成は、アジア地域の割合が高くなっている。

9 従業者数50人以上かつ資本金3,000万円以上の企業を調査対象としているため、調査結果には小規模企業及び個人企業が含まれていないことに注意を要する。

 
コラム2-2-2図〔1〕 中小企業の海外子会社の地域構成(大企業との比較)

コラム2-2-2図〔1〕 中小企業の海外子会社の地域構成(大企業との比較)
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 次に、地域別の海外子会社の業種構成を見てみたい。コラム2-2-2図〔2〕は、中小企業の海外子会社の業種構成であるが、直接投資先がアジアの場合、海外子会社の業種は製造業である割合が高い。
 
コラム2-2-2図〔2〕 地域別の中小企業の海外子会社の業種構成

コラム2-2-2図〔2〕 地域別の中小企業の海外子会社の業種構成
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