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第4回 中小企業の会計に関する研究会 議事要旨

日時:平成22年5月18日(火)10:00〜12:00
場所:経済産業省別館5F 526共用会議室


議事概要

木村委員(配付資料3)、桑原委員(配布資料4)がプレゼンテーションを行い、事務局から資料5「論点整理」に基づいて説明を行った。

・中小企業の会計のあり方に関する意見(木村委員)
・中小企業会計の実態に基づくあり方への意見(桑原委員)
・論点整理

また、プレゼンテーション及び論点整理(配付資料5)に関して自由討議が行われた。自由討議の概要は以下のとおり。


  • 日本商工会議所、日本税理士会連合会、日本公認会計士協会、日本経済団体連合会と企業会計基準委員会が共同事務局をしている、非上場会社の会計基準に関する懇談会でも、中小企業の会計に関する指針(以下、「中小指針」という)の位置付けと新たな基準作成が重要な論点となっている。プレゼンテーション資料の中で法人税法をベースにするとか、税法基準を重視するとあるが、税法に100%準拠するということか、それとも、経営者が自社の実態を把握するために一定の修正をする意味かを確認したい。
  • 実務上、会計の考え方に従って会計処理をすると、結果として、税務申告で認められず修正を行う場合がある。弱体な経理体制では当該修正は負担となるため、税法重視の税会一致が望ましい。税法がむしろ会計に歩み寄ってほしいと考える。
  • 中小企業の実態は多様化していることを勘案すると、中小企業の会計を税法に100%一致させることの様々な影響を考慮し、100%とはいわないが、ある程度税法 に準拠したものとして頂きたい。
  • 金融庁が「IFRSに関する誤解」を公表している。非上場会社に対し、IFRSの適用をする必要がない旨が記載されている。またIFRS適用上場会社の連結子会社等は親会社に対しIFRSに必要な情報を提供する必要はあっても、IFRSの適用を強制することはないと示している。これを受けて、報告書等にはIFRSの影響の遮断や最小化について、IFRSの強制適用はないと記載すべき。
  • 「遮断」や「最小化」は誤解を招くので、「IFRSを適用しない」とはっきり書くべき。また、税務が会計に歩み寄らないという点であるが、会計がおかしいのではなく、税務が歩み寄るべきではないか。税会一致という議論をするのならば、退職給付引当金や固定資産の減損を損金とすべき。リース債務の残債や退職債務の残債を認識しないと、企業買収の時に問題となり、企業の実態が分からない。使いやすい会計=自分に都合の良い会計ではなく、正しいものは正しいことを理解いただきたい。
  • 中小企業においては、税理士が関与している企業がほとんどであり、ある程度の会計基準を受け入れる土壌は我が国にある。会計参与がいるところでもいないところでも会社計算規則は守るべきであり、会計参与の有無で区別するのはおかしい。トップダウンアプローチ又はボトムアップアプローチと分けたがる傾向があるが、ハイブリッド型がいいと考える。
  • 中小企業団体として、論点整理にある「中小企業の身の丈に合ったもの、実態を踏まえて」は非常に共感。中小企業憲章(案)に「中小企業の声を幅広く聞いて」というくだりがある。会計基準については中小企業の生の声を重視して今後の作業を進めていただければと思う。
  • 会社法の規定にある「一般に公正妥当と認められる企業会計慣行」は、様々な関係者があり、中小企業も多種多様であるため納得できる。一方、中小指針は、入り口で「企業の規模に関係なく、取引の経営実態が同じであれば、会計処理は同じである」という記載は考え直すべき。中小企業の会計基準が複数であると煩雑になるというのは誤解。事実関係に着目して、少し手を伸ばせば届くくらいの会計ルールにすれば、企業側にも馴染みやすい。
  • ドイツの商法、税法は日本に似ているが、ドイツは会計現代化法の改正に伴って、IFRSに対応。しかし、その後のドイツの中小企業は依然として税務を基軸としたものが中心となっている。税法を基軸とした会計基準とすることで日本の先進性を示してはどうか。
  • 日本の会計は資産負債の評価、認識という決算書作成にとらわれるが、日本の中小企業の会計における概念は簿記会計が重要であり、簿記会計基準を設けることが中小企業にとっては馴染みやすいのではないか。会計先進国である日本は、IFRSをそのまま受け入れず、業種・業態・企業規模別に多種多様な会計基準が存在しても良いのではないか。
  • 会計参与として、中小企業の会計の実態に触れているが、税務ベースのもの、経営者の役に立つもの等、様々な会計のベースとなる発想がある。ただ、税務会計を適用した場合、引当金等の債務を網羅的に計上しないことになってしまうが、会社法上問題ないのか。資産評価について、過大評価となる場合には、会社法上問題となるため、その手当てをしていただかないと、会計の分野だけでは解決できない。
  • 経営者に役立つ会計という点からすれば、管理会計についても論点整理に含めていただけないか。論点整理では、経営者の役に立つ会計がうたわれているが、これに大いに共感。間接金融、直接金融、内部留保の3つが広義の資金調達である。内部留保も資金調達の一つであると位置づけることで、経営者も利益をきちんと把握する動機づけができるのではないか。
  • 会計が税法にすり寄るという単純な問題ではなく、税法には租税政策的にさまざまな問題があり、平成10年の税制改正により税と会計が乖離。税法が会計にすり寄るべきであるが、すり寄るべき会計がどうなっているのかが問題。中小指針がユーザーに受け入れられていれば、そのまま継続すれば良いが、ユーザーはそうではない。中小指針の作成者は中小企業でも対応可能であると言っているが、ユーザー側は納得していない。
  • 非上場懇談会とこの研究会とでは雰囲気がずいぶん違う。あくまで個人的な印象になるが、非上場懇談会は中小企業に対して高圧的に思える。それに比べ、この研究会は中小企業がホームグランドとしてのびのびしている。非上場懇談会は模範となる会計基準を示し、この研究会では中小企業の実態から会計基準を考えるべき。平成14年の中小企業庁の研究会報告書が原点となるのではないか。「IFRSの誤解について」が金融庁から出されたが、平成21年6月の企業会計審議会の中間報告において、上場企業の個別財務諸表や非上場企業についてもIFRSを参考にすることが望まれると言われており、中小企業が危機感を持つことは当然。原点を明確にした上で、ボトムから作ることを検討すべき。
  • 平成10年度法人税制の抜本的改革は、法人税が確定決算基準を基盤にしていたが、現実には税法規定の決算すなわち決算書の作成が逆基準性となり、会計が法人税から存在意義を見つけ出していた問題がある。そして法人税率(37.5%→30.5%)の引き下げ要望に対応するためその財源を所得税・消費税等に求めないで法人税固有の課税ベースの拡充を行い、6つの引当金のうち5つの規定を削除し、建物減価償却に定額法を導入したいきさつがある。一方、平成15年から、みなし損金経理の規定など(法令61の4、66の2)税制を改正し、会計に歩み寄りをしている。また最近の会計基準の変更に対応して棚卸資産、リース会計、工事進行基準等の日常の経理処理の中で頻繁に出てくる項目には税が一歩譲って同調した改正をしている。こうした実状からみて中小企業において法人税に依拠した会計ができる状況が存在している。
  • 中小指針が難しいところは、それを利用するにあたって24項目の参考資料(注1)を使わないと作成できない。中小指針の13ページの2行目(平成22年度版)に市場価格のあるその他有価証券の評価差額の処理について、全部純資産直入法又は部分純資産直入法により処理すると書いてあるが、全部純資産直入方は正式な会計用語ではなく、「金融商品会計基準に関する実務指針」をみても明らかでないが「金融商品会計に関する実務指針(注2)に説明されている。税理士や会計参与等が使いこなしているかというと疑問がある。
  • 中小指針は毎年改正されているが、これは公開企業の会計基準がコンバージェンスによって変わるからである。中小企業はIFRSが適用されることを危惧しているのではなく、中小企業の会計処理の中に入ってくることを危惧している。中小指針は立派であるが、中小企業すべてに適用できる指針であるのか。中小企業にも適用できる基準が必要ではないか。または中小指針は適用できる企業に限定してはどうか。
  • トップダウンアプローチ、ボトムアップアプローチの本旨は会社の属性に着目したもの。属性に着目したアプローチをボトムアップアプローチと言っており、中小企業の属性に着目した会計基準が必要ではないか。
  • 中小企業の経営者に役立つものとは、ただ単に中小指針を分かりやすくすればよいものではない。アプローチの問題について、中小企業における会計は公正さ、適正さ、真実を歪めないことが重要であるが、今の中小指針は有用性という概念から、情報の利用者に役立つことを前面に押し出し、アウトプットから考えている。一方、我が国の企業会計原則はインプットから考えている。記帳は当然のことであるが、中小企業にとっては記帳が非常に重要な意味を持っている。公開企業の考え方をそのまま中小企業の基本的な考え方に置き換えるのはいかがなものか。
  • 論点整理について賛成。中小企業の最大の課題は経済環境の変化に対してどう対応していくかに尽きる。EUの中小企業憲章では中小企業を第一に考えるとある。また政策を決定するプロセスにおいて中小企業は経済の直接的な打撃を受けやすいが、それを最小限にして中小企業が活躍できるように社会が支援するべきであるという精神がある。事実として、中小企業が会計にかける時間とコストは大企業に比べると10倍以上かかる。中小企業は社会の影響を受けやすく、会計の問題も直接影響を受ける。そのため国を挙げてそうならないよう配慮すべき。中小企業憲章の中に「中小企業の実態に則した会計」と書いてある。中小企業の実態を把握し、中小企業庁や関係者がゼロベースで会計基準を考えていくべきである。
  • 会社法は会計に関して最低限の規定しか置いていないが、これは、会社の実態が様々である中で共通のルールを定めようとすると、概括的なものにならざるを得ないからであろう。会社法は裁判規範であって、公正な会計慣行であるかどうかを最終的に判断するのは裁判所であることにも留意する必要がある。
  • 会社計算規則は最低限のものを示している。その上にどの程度規定していくのかということを考えるべき。中小企業においては外部の会計専門家に委託して会計処理ができたとしても、経営者が理解できていない。経営者が直感的に理解できるような会計が基本にあるべき。
  • 会社法は会社債権者との利害調整という目的がある。実際に交渉力のない債権者を保護するためにどこまで情報公開するのか、また、コストとのバランスをどこでとるのかという問題がある。IFRSはコストを無視している会計基準である。それを単純に中小企業には適用できないからこそ中小指針があるが、中小指針はわかりにくさとコストがかかりすぎるという問題がある。
  • 非上場会社の会計基準に関する懇談会でも、中小企業関係者から話を伺いながら検討を進めている。懇談会では、中小指針について分かりづらい、中小企業の関係者が結集してつくったものではないといった意見がある一方、中小企業関係者の意見を取り入れて中小指針を大幅に見直すこととし、改正も毎年ではなく、数年に一度とした安定的なものにすべきとの意見もある。中小企業関係者の多くに参加していただき、改正も2、3年に一度とすることなどにより、中小指針を見直すことでも対応できるのではないか。
  • 私どもの会員の85%は従業員が5人以下であり、社長自らが経営者としてだけでなく、総務、経理、業務担当を兼ねているのが実態。経営者が進んで自ら取り組める簡便な会計を中小企業庁に責任をもって作成して頂きたい。
  • ユーザーの立場からすると、中小指針は非常にハードルが高く、分かりづらい。経営者にとって理解できず、税理士に依頼しないとできないのが実態。一方で中小指針を活用している会社もある。平成14年中小企業庁の研究会報告の考え方を基本にいろんな議論を進めていくということが必要。一方で時間的にも早く中小企業の実態にあった基準を提供する体制を整えていくことが必要。
  • ユーザーの立場から、使い勝手の良いものであり、身の丈に合ったものということが重要。中小企業庁を中心に私どものメンバーでも理解ができて、かつ自分のお店の状況が把握できる会計基準の作成を要望。
(注1) 中小企業会計指針の適確な適用に必要な参考資料を網羅すると以下のよう膨大な文献が必要である。
1会社法<抄>、2会社法施行規則<抄> 、3会社計算規則<抄>、4会計参与の行動指針<抄>、5金融商品取引法<抄>、6企業会計原則、7金融商品に関する会計基準<抄>、8金融商品会計に関する実務指針<抄>、9棚卸資産の評価に関する会計基準<抄>、10固定資産の減損に係る会計基準<抄>、11繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い<抄>、12自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準<抄>、13役員賞与に関する会計基準<抄> 、14工事契約に関する会計基準<抄>、15退職給付に係る会計基準<抄>、16諸税金に関する会計処理及び表示に係る監査上の取扱い、17研究開発費等に係る会計基準<抄>、18税効果会計に係る会計基準<抄>、19繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い、20リース取引に関する会計基準<抄>、21法人税法<抄>、22法人税法施行令<抄>、23法人税基本通達<抄>、24税理士法<抄>
(注2) 日本公認会計士協会会計制度委員会報告第14号の73項(その他有価証券の会計処理<評価差額の処理>)

以上