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  創業前後の資金調達
目次
はじめに
創業における経営課題と支援施策
支援人材の基本姿勢
ビジネスプランの作成
創業前後の資金調達
創業後の継続的な支援
マーケティングの支援
コーディネートによる支援
国際化対応への支援
創業前後の資金調達
 中小企業支援センターや商工会・商工会議所の相談実績をみると、金融に関する問題が相談件数の多くを占めています。資金調達はこれから創業しようとする際、また、スタートアップ企業が事業を展開し、より成長しようとする際の大きなボトルネックであるためです。ここでは、国民生活金融公庫総合研究所の高橋徳行主席研究員に、金融機関の側から創業時・創業後の資金調達支援において、どのような視点が重要になるかを論じていただきます。
金融のメカニズムを理解した上での対応
   多くの創業者は自己資金だけでなく、他人から資金を調達して事業を始めざるを得ません。しかし、創業者は自分の思いが先走り、金融機関等から資金調達できないと、「金融機関は自分のビジネスをわかってくれない」と感情的になりがちです。
 中小企業金融は大企業向けと比較して融資や投資の金額が小さいため、投融資の審査、投融資後のモニタリングにスケールメリットが働きません。このため、金融機関は中小企業の情報収集、審査の手間を省きがちになります。その結果、金融機関は、中小企業についての情報(経営能力は高いのか低いのか、本気で返済する気があるのか、資金使途の信憑性はどのくらいなのか等)を十分に収集し、分析することが出来ず、なかなか投融資には踏み切れないのです。これが、金融機関と中小企業との間の情報の非対称性の問題です。情報の非対称性は、実績の乏しいスタートアップ企業ではより深刻な問題で、先に述べた「金融機関は自分のビジネスをわかってくれない」と感じる最大の要因となっています。支援人材としては、このような情報の非対称性の問題を理解した上で、創業者やスタートアップ企業の資金調達をサポートすることが必要です。

◆外部資金のコストとフレキシビリティ
外部資金のコストとフレキシビリティ

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プレゼンテーションスキル向上の支援を
   支援人材は、思ったように資金調達が出来ず、金融機関に対して感情的になっている創業者に対して、資金調達できなかった理由を考えさせることが必要です。資金調達が出来なかった理由としては、「事業計画に無理があり、大成功したときにしかキャッシュフローがプラスにならない」、「創業者が十分な経験もないのに『何か出来そう』と漠然と考えている」等、創業者の考え方やその事業計画自体に問題がある場合があるでしょう。一方で、「競争の中で生き残ることが出来ることを説明できない」、「営業パンフレットのような説明しかできていない」など、事業内容や能力を十分に説明できない場合もあります。
 金融機関に事業内容や自身の能力を十分に説明できなかった場合は、資金調達に再挑戦するために、短時間に自社の事業を明確に説明し、成功確率の高さを示し、資金提供者に理解してもらえるビジネスプランづくりやプレゼンテーションスキルを向上させることが必要となります。支援人材が、表現方法がわからない創業者から、事業内容を聞き出して、表現させるよう支援することも時として必要となります。
 また、企業の強みを活かした戦略や事業分野を見つけることを支援することにより、より魅力的な事業計画にすることも求められます。ただし、中身のない相談者には中身の充実を求めるしかなく、ただ単に「分かりやすくする」、「魅力的に見せる」という見せ掛けだけのアドバイスはしてはなりません。
融資後の継続的な情報開示
   金融機関や株主との付き合いは、資金調達時だけではありません。投融資を受けた後の継続的な情報開示を、支援企業にアドバイスすることも必要です。追加資金が必要となったとき、不測の事態により資金がショートしかかったときなどに、円滑に資金調達するためには、融資を受けた金融機関や出資を受けたベンチャーキャピタルなどに、経営状態、事業の進捗状況などについて、融資後も継続的、定期的に(少なくとも3ヶ月に1回は)報告することが必要です。これにより、資金供給者は低コストで投融資先企業の情報を収集することが出来、次の資金調達時の速やかな審査が可能となります。また、ネガティブ情報も含めてディスクローズすることが、金融機関等から信頼を勝ち得ることにつながります。
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金融機関や担当者の特性への配慮
   一口に金融機関、公的機関といっても、銀行や機関、あるいは、担当者によって、性格、興味のある事業分野などはさまざまです。投融資や公的支援の決定に当たっては、創業者と金融機関担当者との性格的な相性などの俗人的なファクターによって、資金調達が決定されることも少なくありません。
 このため、支援人材は、地域の金融機関、公的機関、ベンチャーキャピタル等の特性や担当者の性格、興味のある事業分野について熟知し、支援する創業者と相性の良い機関や担当者に引き合わせることが必要です。また、各機関や担当者により相性や興味のある事業分野に違いがあることは、ある機関でノーといわれても、他の機関ではイエスと言ってもらえる可能性があります。一つの機関で融資が断られても諦めず、豊富なネットワークを利用して多くの金融機関へのプレゼンテーションすることが重要です。
事業特性に合った資金調達 手段選択
   創業時・創業後の資金調達では、事業特性や成長段階にあわせた資金調達手段を活用することが必要です。創業時や創業後において、資金調達手段を選ぶ余裕などないと思われる方もいらっしゃるでしょう。しかし、集められるところから集めるのでは、支援人材としての本来の役割を果たしていません。最適な資金調達構成を支援することが、支援人材の本来のあり方です。
 例えば、研究開発型のベンチャーだが技術の成熟度、市場の大きさが不明確な場合は、返済可能性が不確実なため、十分な担保力がない限り、融資での調達は不適当です。しかも、この段階ではベンチャーキャピタルからの出資は難しく、自己資金、親戚や友人からの出資や公的な補助金が中心となります。一方で、小さな居酒屋のような事業であれば、損益分岐点に到達するまでの時間は短く、経営者が頑張れば実現可能性が高いため、銀行借入れが一般的です。
資金調達の基本は売上と倹約
   事業における資金調達の基本は売上を上げることであり、倹約の精神がなければせっかく集めたお金もざるに水となります。支援人材は、安易に公的融資や出資などに頼ることなく、一方で、調達した資金を大切に事業に活用するよう、アドバイスすることが、金融機関等からの資金調達支援以上に重要であると考えます。

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CHECK POINT
  最適な資金調達がなされているか?
1 ビジネスプランは、金融機関等が短時間に事業内容を理解できるものになっているか?
2 資金提供者から信頼されるような創業者のキャリア、人物像を伝えられているか?
3 投融資後も資金供給者に、定期的に事業進捗等を報告しているか?
4 各金融機関や担当者の性格、興味のある事業分野を理解し、相性の良い担当者に引き合わせているか?
5 事業特性や成長パターンに合った資金調達手段を選択し、調達支援が出来ているか?
6 公的資金、融資などに頼りすぎないよう支援しているか?

事例  
 京都市では、「京都市ベンチャー企業目利き委員会」を設置し、起業家やベンチャー企業、中小企業者の第二創業に係る事業プランを評価しています。目利き委員会でAランクの認定を受けると、京都市による支援が受けられるだけではなく、ベンチャーキャピタルや金融機関からの注目が高まり、資金調達や商談にプラスの効果が現れています。
 このような効果を生じる要因としては、委員自らが起業家であり、自分たちに続く、次の時代の京都経済をリードするベンチャー企業を発掘、育成するというマインドが強く、真剣かつ厳しく審査、助言していることがあげられます。
 また、委員会では事業プランの技術や市場性だけではなく、経営者としての資質についての評価にも重きをおいています。他方で、「大学のまち京都」の地域資産を生かし、学識経験者等の研究者や各分野の専門家から申請された事業プランの内容に応じて、適任な調査専門委員を選定し、事業性、保有技術、アイデアに関する調査を行い、審査の緻密さ、正確さを確保しています。
 ただし、委員会では、行政は事務局として運営をサポートしており、審査には参加しておりません。
 ただし、Aランク認定企業へのサポートは、行政が中心となって行っております。市の支援施策の利用はもちろんのこと、例えば、民間の資金調達機能とのマッチングや、Aランク認定の効果をより高めるために、市の支援制度の利用だけでなく、国や府の支援制度の利用についても連携を図りながら進めています。
京都市ベンチャー企業目利き委員会

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筆者紹介 高橋徳行(たかはしのりゆき)
【国民生活金融公庫総合研究所/主席研究員】
筆者、高橋徳行
1956年生まれ。80年慶応義塾大学経済学部卒業、国民金融公庫入庫、2002年から国民生活金融公庫総合研究所主席研究員。96年に米国ボストンに留学、98年バブソンカレッジ経営学修士課程修了(MBA取得)。平成12年2月、通商産業調査会より「起業学入門」を出版。立教大学(経営学)、および同大学院(コーポレート・ストラテジー)などで非常勤講師。

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