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相談事例その15:賃貸店舗の退去時における原状回復について

相談内容

 あるビルの一画を賃借し営業をしていたが、この度、撤退することになり、予想より高額な修繕費を請求されました。入居の時の契約では、細かなことを取り決めていなかったのでどのように考えたら良いか教えてください。

問題点と対応

処理概要

 民間の賃貸契約の場合は、契約自由の原則により、行政が規制することは適当ではありませんが、退去時の原状回復、費用負担をめぐるトラブルはよく発生していることもあり、近時の裁判事例や取引の実務を考慮して、トラブルの未然防止という観点から、あくまでも現時点として妥当と思われるガイドライン「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」(以下、「ガイドライン」という。)を平成23年8月に国土交通省がとりまとめ示しています。
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000020.html
 ガイドラインですから、法的な強制力はなく、民間の賃貸住宅のトラブル防止用ですが、店舗等の原状回復における考え方、費用負担の対応の参考になるので、それを参考に示すことで対応しました。

1.賃貸借契約の解除についての基本的な考え方は民法に規定されています。
  • 民法第545条(解除の効果)
    第1項 当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。
  • 民法第606条(賃貸物の修繕等)
    第1項 賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。
    第2項 賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。
2. ガイドラインにおいては、原状回復については以下のとおり定義しております。
「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反(注)、その他通常の使用を超えるような使用による損耗、毀損を復旧すること」
 この考え方は、賃借人が借りた当時のままに戻すことを意味するものではなく、自然損耗や通常の使用による損耗等の修繕費用は賃貸人負担とするとの考え方です。
(注)民法第400条(特定物の引渡しの場合の注意義務)
 債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。
3.そこで通常の使用とそうでない使用の考え方の区分が必要となりますが、一般定義を定めるのは困難であり、賃貸人(A)と賃借人(B)の負担の考え方は、ガイドラインを参考に示すことにしました。
(A)クロスの日照による変色、壁のポスターの掲示等による跡の変色の違い(通常の生活で避けられないもの)
(B)引っ越し作業で生じた引っ掻きキズ(善管注意義務違反または過失に該当する場合が多いことから)
(A)+(B)結露を放置したことにより、拡大したカビ、シミ(基本的には賃貸人であるが、その後の賃借人の手入れ等の管理が悪く、損耗等を拡大したと考えられるもの)
4. 経過年数の考慮ですが、(B)や(A)+(B)の場合であっても、自然消耗や通常損耗が含まれており、賃借人はその分を賃料として支払っており、賃借人が修繕費用の全てを負担すると契約当事者間の公平を欠くなどの問題があるため、建物や設備の経過年数を考慮し、年数が多いほど賃借人の負担を減少させるのが適当なのです。
   
5. 施工単位についてですが、原状回復は毀損部分の復旧であることから、可能な限り毀損部分に限定し、毀損部分の修繕は出来るだけ最低限度の施工単位を基本とするが、毀損部分と補修を要求する部分とのギャップ(色合わせ、模様あわせなどが必要なとき)がある場合の取扱いについて、ガイドラインは一定の判断を例示しています。

 本件については、これらの情報、具体的な契約関係書類をもとに、建物の所有者、管理会社、不動産業者ともよく話し合うようにアドバイスしました。

資料の入手先及びお問い合わせ先

  • ガイドラインの入手先
    国土交通省住宅局住宅総合整備課
    電話:03-5253-8111(代表)

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